~吾妻病(あずまびょう)―幻想病―~

天川裕司

第1話 ~吾妻病(あずまびょう)―幻想病―~

~吾妻病(あずまびょう)―幻想病―~

 固陋に居座る〝思い〟を革命如きに肢体と講じて煩わされず、如何(どう)にも行かない魅惑の救いにこの〝美〟は絆され、〝それでも如何(どう)にか成る〟など無教(むきょう)に訓(おそ)わる四肢(てあし)を携え、何時(いつ)か見知った自分が行くべき・越えるべき峠を見据えて個人(ひと)の心身(からだ)は独歩(ある)いて行った。闇を知らずに空虚を保(も)ち得ず、牢の内(なか)では誰とも何とも言えない立派な像にこの身を採られて新生(あらた)を悟り、そうした新生(いのち)が仄かに佇む自分の現行(いのち)に漸く芽吹いた気質を観たのは人群(ひと)を離れて暫く後(ご)である。この〝新生(いのち)〟の事を他(ひと)は邪教と呼びつつ邪推を睨(ね)めて、〝悪い試算〟と交互に語らい、人の夢想(ゆめ)には暗く映った。この男も例外には無く、自己を満たせる数多の出来事(じへん)へ向けては心身(おのれ)の全力(ちから)を悠々掲げて自信を持ち寄り、終着(ゴール)へ目掛けて大喝し得るが、三十歳(よわい)を過ぎ越し自身(おのれ)の体躯(からだ)が如何(いか)な自然に充分敗け果て、朽ち堕ち、唇さえ意を発せぬ内にて従順(すなお)に敗け堕ち、共々無い程、悠々自適に苦しみ始めた夜目の姿勢(すがた)は誰から見得ても何時(いつ)に見得ても何処(どこ)から見得ても一向不変の改革(どうさ)の内にて飽く事知らず、個人(ひと)の生気がそれでも成長して行き見る見る開花して行き、明日(あす)の華には〝自分〟が居座る優雅を知るのだ。それ故体が疼いて仕様が無い間(ま)に又新生(あらた)に芽吹いた場面を知得れば、何処(どこ)へ行くにも何をすれども一点集中、一つの事変に纏わる自分の労(ろう)しか見えなく成り果て、宇宙が奏でる超自然(しぜん)等には見向きも出来ない。〝恋に革命〟、〝愛に革命〟、〝動作に革命〟、〝路頭に革命〟、〝魅惑に革命〟、〝恋慕に革命〟、〝道徳(みち)に革命〟、〝普遍に革命〟、〝素朴に革命〟、〝自由に革命〟、〝イズムに革命〟、〝明日(あす)に革命〟、〝自然に革命〟、〝超自然(しんぴ)に革命〟、〝徒労に革命〟、〝浮気に革命〟、〝未熟に革命〟、〝昨日に革命〟、〝現行(きょう)に革命〟、〝無実に革命〟、〝人に革命〟、〝神に革命〟、〝悪魔に革命〟、〝天使に革命〟、〝国家(かたち)に革命〟、〝淡さに革命〟、〝確執(じょうぶ)に革命〟、〝損気に革命〟、〝短気に革命〟、〝遊びに革命〟、〝仕事に革命〟、〝努力に革命〟、〝能力(ちから)に革命〟、〝疎んじられた全ての退屈(ひま)にも斬新さえ成る無教の革命〟、〝獄中(うち)での革命〟、〝外界(そと)での革命〟、〝美談の革命〟、〝美男の革命〟、〝美人の革命〟、〝寸出(すんで)の革命〟、〝不確(ふかく)に革命〟、〝優雅に革命〟、〝寝室(ねむろ)に革命〟、〝狂いに革命〟、〝狭筵(むしろ)に革命〟、〝時間に革命〟、〝古典に革命〟、〝性質(かたち)に革命〟、〝輪舞曲(ロンド)に革命〟、〝現行(じじつ)に革命〟、〝盲目(やみ)に革命〟、〝希望(あかり)に革命〟、〝正義に革命〟、〝悪義に革命〟、〝正理(せいり)に革命〟、〝不義に革命〟、〝有利に革命〟、〝孤踏(ことう)に革命〟、〝孤島(しま)に革命〟、〝ローブに革命〟、〝樞(ひみつ)に革命〟、〝打出(ほうふ)に革命〟、〝不覚に革命〟、〝発想(イデア)に革命〟、〝単色(モノクロ)に革命〟、〝複雑に革命〟、〝狼煙に革命〟、〝ベルに革命〟、〝硝子に革命〟、〝無色に革命〟、〝無職に革命〟、〝生気に革命〟、〝精に革命〟、〝固陋(まよい)に革命〟、〝植物(はな)に革命〟、〝動物(うごき)に革命〟、〝仲間に革命〟、〝孤独に革命〟、〝群れを成し得る個人(こどく)に革命〟、〝美辞に革命〟、〝オンスに革命〟、〝単位に革命〟、〝空気に革命〟、〝頭上に革命〟、〝地中に革命〟、〝足下(ふもと)に革命〟、〝舌に革命〟、〝言葉に革命〟、〝理学に革命〟、〝文学(もじ)に革命〟、〝白紙に革命〟、〝無地に革命〟、〝格差に革命〟、〝吐息に革命〟、〝成熟に革命〟、〝超越に革命〟、〝夕日に革命〟、〝孤島に居座る朝・昼・晩(じかん)に革命〟、〝病(やまい)に革命〟、〝元気に革命〟、〝不毛に革命〟、〝著名に革命〟、〝怠惰に革命〟、〝呑気に革命〟、〝過失に革命〟、〝流行(ながれ)に革命〟、〝無駄に革命〟、〝有役(ほそく)に革命〟、〝実行(ちから)に革命〟、〝最中(さなか)に革命〟、〝真中(まなか)に革命〟、〝真逆(まさか)に革命〟、〝描写に革命〟、〝そうぞう(おもい)に革命〟、〝beyondに革命〟、〝望みに革命〟、〝臨みに革命〟、〝律儀に革命〟、〝夢想(ゆめ)に革命〟、〝呑み込みに革命〟、〝食事に革命〟、〝排泄に革命〟、〝順序に革命〟、〝原始に革命〟、〝進歩に革命〟、〝電子に革命〟、〝傍観に革命〟、〝砦に革命〟、〝煙に革命〟、〝酒に革命〟、〝陶酔に革命〟、〝統制に革命〟、〝男女に革命〟、〝男性(おとこ)に革命〟、〝女性(おんな)に革命〟、〝正当に革命〟、〝不当に革命〟、〝交際に革命〟、〝手順に革命〟、〝空虚に革命〟、〝宗教(まよい)に革命〟、〝人生(まよい)に革命〟、〝決意(まよい)に革命〟、〝改革(まよい)に革命〟、〝性差(けつぎ)に革命〟、〝議決(けつぎ)に革命〟、〝四旬(けつぎ)に革命〟、〝思春(まよい)に革命〟、〝旅(まよい)に革命〟、〝徘徊(まよい)に革命〟、〝矛盾(けつぎ)に革命〟、〝潔白(けつぎ)に革命〟、〝貪欲(けつぎ)に革命〟、〝個室(けつぎ)に革命〟、〝迷路(けつぎ)に革命〟、…、忽ち四肢の指数(かず)には収まり切らない無業の純心達が肢体(からだ)を携え俺の身元(ふもと)へ廻り還って、未熟を呈して大きく居座り、暖炉の微熱が事毎淡く失(き)え遣る一部の体温(ねつ)にも如何(どう)とも言えない冷気が宿り、個室の内には白く柔いだ晴れ間が在った。独創(こごと)を三つに裂き行き、自体(おのれ)の脚力(あし)など仔細に見遣れば、何処(どこ)へ向くのか微動だにせぬ不問の主催(あるじ)が自体(からだ)を興して自然と繋がり、これから始まる革命(どうさ)の晴嵐(うごき)に集中したまま魚籠ともしない姿勢(たちば)を講じた。喧騒を拳闘としない疑惑の遊女達は源泉から出て献身(み)の丈振るい、明日(あす)を望んだ男性(おとこ)に臨む。有限実行立ち向かない内、男性(おとこ)の火の粉は見る見る自然が吹き付け遣った涼風(かぜ)と言えぬ寒風に身の程報され打ち解け果てつつ、凍て付く真(ま)の夜、小言も言えずに朽ち果てて居た。忍従に似た自然の活路を人生(みち)へと化(か)えつつ、快変(オルガ)の内にて泳いで行くのは〝個性(ひと)に生れた至難であろう〟と何処(どこ)かで直って意味を身に巻き、鼓舞に臨んだ遊男の体(てい)には余裕(あそび)を知らない熱気が燃え行き足踏みしたまま徒労に居座る未熟を呈して、淡く重ねた嗣業の司祭(あるじ)が独創(こごと)を生み付け遊男(おとこ)を呼び寄せ、自棄へ独走(はし)らす矢鱈な活力(ちから)が活き活きして来た。誰も見知らぬ個室の内にて遊男(おとこ)の未熟(あるじ)は明々(あかあか)燃え出し、見る見る内にも遊女(おんな)を呼び付け自分の満ち行く天変(ものがたり)など仔細に改め校執(こうしつ)した儘、現行(じかん)に居座る原稿(かたち)の行方は游男(おとこ)も知り得ぬ未開の域へと奮起を呈して真っ直ぐ延びた。遊女(おんな)は男性(おとこ)の苦労も向うへ押し遣り、何処(どこ)とも定まり知り得ぬ注視の眼(め)を保(も)ち男性(おとこ)の周囲(まわり)を快気(かいき)の召すまま奇麗に片付け游男(おとこ)が目にした〝怪奇の館〟を土台(うち)から壊して熱闘したまま男性(おとこ)の脚力(ちから)を徐(おもむろ)睨(ね)め付け打ち崩し行き、男性(おとこ)の勇気は女性(おんな)の快気(かいき)の下(もと)にて微動(うごき)を仕留めた。如何(どう)する間も無く游男(おとこ)の嘆きは個室(へや)の内でも個室(へや)から外界(そと)でも自質を捉えず寝耳に水の憤悶足るまま無駄に笑ってほくほくして行き、湯立つ労苦は辛酸舐め行き己の未熟(あるじ)を小馬鹿にして行き外界(そと)を愛して、女将(にょしょう)を知り得ぬ未熟な試算(かご)には司祭(あるじ)を失くした勝手な自然が業を煮やして労苦に解け活き、明日(あす)を知るのも現行(きょう)を知るのも、無駄に纏わる心算(しんさん)等には露とも知られぬ孤踏(ことう)を成し得た。原始の日々より打ち出た個人(ひと)の諸業(しょぎょう)は確(かく)を失くして不義を重んじ、議決を退け国家(かたち)と成り得た無教の殻から何とか正義を絞って得られぬものか、と、白紙に座った半個人(にんげんもどき)を空へ返して嗚咽し得たが、如何(どう)にも向かない自前(じぜん)に置かれた自然の人生(みち)とは自己の目的(ねらい)と当てが外れて何処(どこ)かを彷徨う寝室(ねむろ)を取り出し自体を舐めて、男性(おとこ)の意のまま気儘に生気(せい)を悦ぶ精進等には到底向かない意味付け等を自信の内にて組み立て行って、可惜(あたら)女性(おんな)が欲しがる快活(オルガ)等には游男(おとこ)の知らない毒牙(きば)が生え出し無駄を報せず、無知な男性(おとこ)は自分の自由に勇気が芽生えた証拠なのだと散々喚いた思地(しち)の真中(まなか)で自分の縋った立場(とりで)を観て居た。そうして生れた自分を取り巻く新生(あらた)の世界に陶酔(まいぼつ)したまま浮き世に上(のぼ)った暁等には退屈(ひま)を見て取り、遊女(おんな)の不敵に幼稚を見抜いて自然に解け入り自滅して行く一連(ながれ)を観てると、傍観して居た游男(おとこ)の姿勢(すがた)は忽ち身元(ふもと)を射抜く完成(せいぎ)を受け取り男性(おとこ)へ化(か)わり、何かに執着したまま論理を覆(かえ)した胡散霧散(よりどりみどり)が自意識(じぶん)を取り巻く寝室(ねむろ)表れ自然を統(す)べて、遊女(おんな)を射殺す試算(ちょうせん)等には滅法気取って力余って、自制を促す余裕(ゆとり)の境地へ自信を誘(いざな)う教師を観て居た。〝教師〟とされ得た男性(おとこ)の分身(かわり)は始終に蠢く発狂達を掌(こころ)に預けて未知を踏ませて己の息吹に遊女(おんな)を寄せ行き仕留め殺して、男性(おれ)の身元を隈なく見据えて洗浄(あら)い始めた。そうして誕生し得た俺の思惑(こころ)は四肢(からだ)を外に着、太陽目指して幻惑し始め、徒労に堕ち得る俺の肢体(からだ)を如何(どう)にか保(も)たせて思地(しち)へ遣ろうと矛盾に講じた独歩(あるき)をして居た。男性(おとこ)の微動(うごき)を予調(よちょう)に合せて算段したのは男性(おとこ)の知り得ぬ自然(あるじ)であって、自然を操る無色の〝思体(したい)〟は透明色さえ億尾に嫌って四肢を付けると司祭と成り着き、司祭の表情(かお)には世に弾かれ無職に咲き得た単色主義(モノクロイズム)に邁進して行く俺の固陋が、未だ地中に根差した古い規則に従い続けて周辺(あたり)を統べ行く歪(まが)った自信の強靭(つよさ)が供(とも)した。又、そうした〝思地(しち)〟には思春に煩う幼体(こども)が居着いて離れて行かずに、退屈(ひま)を余した無職の男性(おとこ)は通り縋りの自然に感けて相対して行き、一々頗る上気を愛して奮闘する為、何に対する動作の果てには不変に居座る〝経過〟が寄り着き男性(おとこ)の試算(こころ)を虚しくさせて、他人が講ずる数多の癖にも華(はな)の咲かない変遷(うつろい)等が充満し始め、特別遊女(おんな)が発した女性(おんな)の悪には〝不正〟〝不当〟が不変に居座る強靭(つよさ)を観たから逃げる等せず真向きに対して、対した〝女〟の電子の灯(あか)りにほとほと疲れる挑戦(せいぎ)を知り得た。〝知り得た男〟は果(さ)きを急いでとぼとぼ暮らし、終りが来るまで蝮と居座る環境(あたり)を睨(ね)め付け女性(おんな)を遠ざけ、珈琲など呑み、自作を貯め行く進歩の労苦に忽ちその独身(み)を上手に絆して旋風を採り、執着して居た愛への微温(ぬくみ)を静かに棄てた。

 いんちきを正当化する女の手順に何ともし難い空虚を呼び寄せ男性(おとこ)の自体(からだ)は自然の順序を大きく越え行き無感を発し、〝遊び〟に見遣った〝始終の分業(ノルマ)〟を静かに睨(ね)め付け辛酸纏わる〝超越〟等には〝快気(かいき)〟を衒った女性(おんな)が塞がり偉業を阻み、珈琲呑んでも何を食べても未熟が成らない不毛の書斎は瞬く間のうち呆気に取られて改悛して行き独歩を奪われ、白地に阿る気楽の連動(ドラマ)は何にも依らずに自身を組み立て、女性(おんな)に対する悪魔を講じる。空気に解け入る美辞の手数(かず)には電子を訝る嘲笑(わらい)が仰け反り悪義を採り寄せ地味を衒って、地道に生き行く(活き行く)牛歩の女将(にょしょう)を如何(どう)にも止めずに思地へ招いた。〝思地〟とは〝死地〟と成り行き男性(おとこ)にとっては寝室(ねむろ)を預けぬ不自然の活き抜く産地と成り得て怠惰を窺う悪魔の姿が女将(にょしょう)に寄り着き空を隠し、男性(おとこ)の塒は恰も悲惨な斬新にも似た天女の姿勢(すがた)を旅の代わりに盗ませ見せて、柔い女性(からだ)が流行(ながれ)に飛び乗る浮女(おんな)の描写は書斎に尋ねる勇気の華(はな)さえ枯らせて行って、取り留めないほど罪に活き行く活路を創る。無産が講じた数多の人欲(よく)には何にも耐えない身軽が在って、集中知らずの個人(ひと)の体(てい)には浮かぬ表情(かお)した未熟が居座り快気(オルガ)を貪り、渡航を重ねた七つの分身(からだ)は何にも知らずに自然に満ち行く死地を愛する。毛色(けいろ)を化(か)えても個人(ひと)の化身(からだ)は何も愛する間も無く独りで居座り旅路を終え行き、孤踏(ことう)を愛した単色等には充分輝くイズムが仰け反り障害(じゃま)を排して、個人の意欲は寝室(ねむろ)が在るうち故習を受け継ぎ、単体(からだ)を嘆く勇気を知るのだ。〝beyond〟、〝beyond〟、〝beyond〟、三回呟き塒へ換えた男性(おれ)の寝室(いえ)では今日も変らぬ家族が居座り生活(おと)を立てつつ俺の邪魔して、想像出来ない正理(せいり)を成し行き動作を繰り越す。無駄に冴えない空虚が居着いて俺の個室(へや)では嫌に気高い諦観(おもい)が生じ何かの決意(まよい)に邁進して行く自活の行方は精気の知り得ぬ流行(ながれ)に有り付き孤独を見せて、浮(ふ)わ浮(ふ)わ浮んだ孤独のイズムは俺に跳び付き身内(うち)へ這入って丈夫と成りつつ浸透して行き、言動(うごき)を統べ行く頭脳(あたま)と成るのに時間を取らせぬ身軽を呈した。光景(それ)を観て居た俺の記憶は蜘蛛の糸ほど身近に在りつつ軟(よわ)い棘(いばら)の芽をした思春の体(てい)など具に見て取り弱く成り果て、無重に配した寝室(ねむろ)の息吹は芽吹いて実(み)を付け俺の身元(ふもと)へ順々投げ遣る自然の流行(ながれ)を手に取る間も無く、見知らぬ他人(あるじ)が最中(さなか)に立ち行き、代わる代(が)わるに後退して行く幸福(かいかん)等を白地に写して進々(しんしん)して来(き)、葛藤さえ無い一画(いちえ)の末期は幸先報せぬ単なる予感に男性(おれ)の楽観(あそび)を放(ほ)かして行った。

 歩き廻った俺の分身(はへん)はこの一室の所々へ小さく畳んだ思想の泡(あぶく)を吐き捨て未業(みぎょう)を切り取り、〝全ては現行(ここ)にて事が成熟(かんせい)しており後(あと)に在るのは思想の糞(ふん)だ〟と宣い吐き捨て、未来(あす)に向かった自身(おのれ)の独歩をついとも止めずに義を見た決意を以て、俺の傍(そば)から離れて行った。〝宗教改革〟成る言葉が俺の個室(へや)では根深く埋れて思想を牛耳り、周辺(あたり)を見廻す寂寥等には〝過去に活き行く自我の内には寸分足りも命を留(とど)めず、現行(いま)に居座る自我の内こそ、栄冠取れ得る意識が在る〟等、頻りに冗(じょう)じて未熟(こども)を仕留め、己が開(あ)け得た死地の闇へと屠って仕舞い、過去を過去とし、現行(いま)を現行(いま)とし、経過(じかん)の所在(ありか)を身軽に採れ得る自体の真価(ちから)を俺に見せ突け以前(むかし)を捨て行く忘却(ものわすれ)には、俺に対する愛情にも似た一縷の軌跡が今か今かと機会を窺う。しかし〝機会〟を疑い、自滅に咲き得る独歩の糧には未熟を嫌った道標(しるべ)が目立って教師(あるじ)を求め、他人を排する俺の欲(ちから)は周辺(あたり)を無にして他人を消し行く作業に入る。作業さながら無業の地位には俗世に息(いき)する無駄とも知れ得る呑気な輩が一杯集まり、精一杯に集団(とぐろ)を巻いて自賛するのを俺の尻目はきちんと見せられ八倒させられ、遮二無二愛した潔白の姿を何処(どこ)へ辿れば獲得出来て、永久(とわ)に居座る主(あるじ)を観るのか、放蕩したまま俺の体(からだ)は無教に徹して無業を煩い、到底知り得ぬ姿勢(すがた)にも一度愛する自分を見て取り、他(ほか)を排して、良俗美欲(りょうぞくびよく)に仰け反り始めた意識の晴嵐(あらし)を懐(ねぶか)に収め、とぼとぼてくてく、女神を離れて一人と成った。

 俺の何時(いつ)か愛した友の内に、三条冬実(さんじょうふゆみ)という女か男か知り得ぬ性の格差を上手に紡いだ個人が在って俺の孤独は彼に寄り着き、明日をも知れない我が根城の全てを、彼に預けて勉学する間(ま)に真向きに捉えた男女の黒壁(かべ)など上手に組み立て、自然が呈する運動場へと俺の心身(からだ)は独歩(ある)いて行って、無色(がらす)が散らばる雲海夢海(うんかいむかい)にその総身を奪(と)られ始めて欲の身元は俺に還らぬ一人歩きを余儀なくされ得た。白地に並べた不問の従順(すなお)は疑問を見るままノスタルジーへと跡を残さず飛んで行き着き、人の居ぬ間(ま)に如何(どう)して改革など起せようか、と逡巡するうち別の空虚が息継ぎ泳いで雲海(うみ)を渡って、冷たい真冬を越えて見たのは過失に置かれた律儀な自然の嗣業であった。充分退屈して居た俺の欲情(からだ)は夢に向かうも海(みず)が邪魔して充分泳げず、息継ぎしてから休憩最中(さなか)に零落したのは俺が掲げた理性であって、滑稽なる哉、思い通りに口の開かぬ無知の主(あるじ)は紫雲(しうん)に癒され独歩(ある)き始めた分身(かわり)を見付けて安心して居り、宗教(まよい)に生じた黒い壁など真向きに捉えた病(やまい)の果てでは、中々返らぬ欲の強靭(つよさ)が今度は次第に歪曲して行き、〝そこでも「革命」成るもの決って降り立ち、本体(からだ)に返らぬ迷いが在れども神の眼(まなこ)は然(しか)と見開き全てを透して救ってくれ得る。最後に真向きに捉えた自然の集体(からだ)にほとほと落ち着き、被(こうむ)る晴嵐(あらし)を俄かに出し抜き個人(おのれ)の全てを告白したらば、神の怒(あらし)は必ず静まり個人(おのれ)に託した嗣業を奏でる。もう少しの辛抱だ。もう暫くの辛抱である。南へ行くには東西に延び得た赤道辺りを通って行くのが自然であって、個人(ひと)の司業(しぎょう)に不審な点など見付かりはせぬ。ここ北地(ほくち)には既に決って華(はな)が咲かずに自体(からだ)に宿った神の私財も充分咲き得ず、自分の別途を自由と一緒に求め行くのは何も今新しく観るものではなく、人の律儀に適って在るのだ。「革命」とは初めに自然に埋れた可能性(ヒント)を辿って具現を拵え、故習から成る新たな知識を斬新(あらた)な態(てい)して人に降り行く対象(もの)故、人の眼(め)には新生(あらだ)に見えて活気が在るのだ。目を覚ましてよく見よ。「革命」など何処(どこ)にでも在り、彼(か)の芸術家が彫刻する時、自身の成すのはその可能性を全て繋げて「革命」自体を掘り起こすのだ、と言ったじゃないか。この「先述」は文献に活き行き媒体(メディア)を通じ、今や大ニュースにさえその身を載せて人の耳にも侵入(はい)って来ている。「経験こそ我が宿命なり」、「何事も経験し得て知識を養う。」、「そしてその経験を生ませる存在(もの)とは神が創った。」、「聖書の言葉は難し過ぎる。」、「聖書の言葉は曖昧なりき。」、「人の心に選択させ得る自由が芽吹く。」、こうして成り立つ聖書の行間(うち)には人の試算(おもい)が自在に活き行き、自分の思惑(ことば)を聖句へ繋げて、「神の配した人間(ひと)への尺度は到底人間(ひと)には解せやしない。故に、君が観て居る一瞥俺の悪行も、人の上では悪であっても神の下(もと)では正義と成り得る、かも知れない…、」など戯言並べて遊んで行くのは目下人の生活(くらし)に悠々表れ、人の頭上(うえ)には個人の創った偶像(イメージ)等が体(からだ)を合せて一処(ひとつ)に居座る。彼等は散在しているように見えて、実は一体(ひとつ)に居座る。その彼等にお前は紛れちゃいけない。曖昧(くも)を背に着て「誰も見知らぬ」等と一つ覚えに自然に付き添い、罪の意識を採ってはいけない。「神の眼(め)」以前に自分の眼(いしき)が既に見ていてお前の始終を知っているのだ。こんな安い真実(あらわ)もお前に疎く、お前の分身(からだ)は教会(かこい)の内から俗世(そと)へ返って、神が俺に与えた「一部始終を経験してから吟味を掲げて考えるのだ」と散々喚いて「夢海」へ入(い)った。放蕩息子のお前に言う天使の言葉は「それなら一層(いっそ)全てを経験してから深意を身に付け、お前を愛した父の身元へ還って来るのだ。お前に与えた試練の道には、お前が耐えられる分だけの鋼を拵え、又、お前が戻って来れるようにと父が態々支援を下さり『お前用の、お前向きの帰路(みち)』まで備え給(たも)うた。行って、還るがよい。私はお前が還るその日迄、我が父が私に訓(おし)えるその日迄だが、お前の活性を終ぞ待ち望んで在る。」であり、お前の前方(まえ)には往路(みち)が開けた。一見、そう見える往路(みち)である。此処(ここ)から出掛けて、お前が如何(どう)して日々を過してお前の言う「思考」と「望み」とを成し遂げるのか、私も運動場(ここ)にて眺めて居よう…〟、今ではもう密室の、この個室(へや)の何処(どこ)からしたのか知れぬその声(ことば)は刹那大喝のような無音に似せられ俺に聞えて、俺はそそくさ、ゲームでも始めそうな手付きを以て身軽に成って、服を着替えて、群衆(ひと)が蠢く街中迄へとその身を浮かせて独走(はし)って行った。

 街の人煙(けむり)が如何(どう)して立つのか仔細を報さぬ流行(ながれ)の内にて、幾社が入った細いビルの最下階では書店を営む夫婦が在るのに俺は気付いて、ふらふら自然の行くまま俺の意識(からだ)は夫婦が営む故のやや小規模に体好く映った店の軒先辺りへ心配せぬ儘とととと這入り、そこに並んだ本の内から、彼(か)の三条冬美著である「宗教改革」を講じる一冊を自然に睨(ね)め付け見付けてふっと取り上げ、既に知り得た彼(かれ)の本へと俺の意識は埋没していた。本のタイトルはずばりその儘「三条冬実の宗教改革」である。俺は個室(へや)に居座るその以前、即ち夢想(ゆめ)見る以前の現実からもうこの彼(かれ)の事など遠(とお)に見知って把握して居り、最近巷で彼(かれ)の噂が何かに詰って独歩(ある)かないのを淋しい気持ちで眺めて居たので彼が息する無教の界隈(やしろ)がこと現行(いま)の界隈(ふもと)で復興するのを待ってた様(よう)にて彼(かれ)を美化して、彼(か)の新巻の出るのを機会遅しと望んで居たのだ。そうした背景(うしろ)を優に笠着て個人(へや)に居座り、退屈(ひま)を醒ましてくれ得る新たな一歩を心中(こころ)に射止めて広告等見て、自身を預ける外界(そと)の砦を探しても居た。そうして歩いた広告(チラシ)の内にて三条(かれ)の〝新巻登場・発売〟の欄を見たのが始まりであり、この「始まり」とは先述通りに既に見て来た経験(ちしき)であるから自然に居座り、「既に知っていた」事実に支障が無いのを夢想(ゆめ)の内でも俺は手にして事実確実に、俺は彼等を抑えて居たのだ。

 夢想(ゆめ)のようだ。夢想(ゆめ)のようだ。薊のようだ。薊のようだ。又、野薔薇のようだ。野菊のようだ。気難しい父親を横目に置いて俺の心身(からだ)は何処(どこ)か知らない〝潤う地〟へと堕ち得たようだ。朝から晩まで酒宴のような蟠りが在り、融通利かない丈夫な毒牙も冗談交えて真横にたえる。俺の理想は何処(どこ)ぞへ消え行き明日(あす)に咲くのは蛻の空(から)だと、一重(ひとえ)に聞いては宇宙へ返る。返った俺には心身(からだ)が無いのにふと気付き、気付いた様(よう)でも何にも成れない虚ろな修業(しゅぎょう)が巡業交えて宙(そら)へと飛び立ち、明日(あした)の憂慮を儚く見詰めて途端に消えた。夢想の行方は他(ひと)に分らずその体(てい)等にも知られぬ空地(あとち)が居残るばかりで太陽・月さえ初めから無く、他(ひと)の秩序を勝手に乱す。可なり色めき落ち着く限りを知り得た野草人(やそうにん)なら、独創(こごと)の態(てい)した夢想話(むそうばなし)が実にはっきり見憶え無いまま下らぬ華であろうか算段すれども、描(か)いてる試算(あるじ)は追手を気にせず自活の行くまま自然の主(あるじ)と対峙して居り、論理(このよ)を離れた摂理を採ろうと暫し辺りを睨(ね)め付け気にして、他(ひと)の来るのを試算(しさん)に暮れつつ何度も生きればやがては自信が自然に落ち着き、主(あるじ)が在れども固より自分の生活歴など具に掲げて自然に向い、主(あるじ)と対峙し、書斎に呼び付け、己の軍歌を唄う調子で生気の従順(すなお)を強調しながら後退し得ない立場(とりで)に居座る。闇に配(はい)した親父の文句がちょこちょこ飛び交い眼(まなこ)に移ろい形成(かたち)を呈して自然を呼び付け、白紙に描いた従順(すなお)の潔白(しろ)には如何(どう)とも言えない未開の結界(とりで)が又もや現れ未熟を呈した俺の試算に、所々の欠点(やわさ)をくっ付け素知らぬ表情(かお)して宙へ返った。矢張りこの世に於いては何が何でも結界紛いの欠点(やわさ)が飛び行き脆さを偽る丈夫が居座り、形成(かたち)を呈した元気が具現(あらわ)れ、個人(ひと)の躊躇を苦労ともせず遊女(おんな)の遊びを罪ともしないで咎を蹴落とし、楽園(パラダイス)に足る人の古郷(ドグマ)を構築しながら旧い教習(ドグマ)を馴らして在るのだ。曇天日和も彼等にとっては晴れに居座り、温泉日和も彼等にとっては泡(あぶく)と化し行き、化物(ばけもの)等さえ未熟の内には天使と化して身に持つ獣の紅毛(あかげ)を鶏(とり)を剥き行く手順の程度に静かに捌いて貯蔵に認め、明日(あす)の糧だと満足するのだ。俺はそれからそうした彼等(むれ)から離れて見たいと従順(すなお)にひたすらお祈りしたまま心身(からだ)を支えた最寄りの独創(くうき)は試算に化し行き闇(よる)を呈して、俺の眼(まなこ)は夜目に輝(ひか)って、明日を活き行く空虚に置いて、化物(けもの)を拝して彼等に寄った。寄り着く孤島(しま)には自分を耕す場所さえ知らずに何処(どこ)へ行っても〝無駄〟を知ろうと辺り構わず遊女に手を付け、掟を破った放蕩だったが、そうした最中(なか)にも飽きを憶えてふと又人間(ひと)の性(さが)にて孤島(ことう)を離れ、希望(ひかり)に釣られて市中を出ると、何処(どこ)まで行っても市中で知り得た看板、表情(かお)、個性(いろ)など真横を透して自体を構え、俺の頭上(うえ)には変らず在るのを近眼(ちかめ)ながらに仔細に捉えて認識して居り、「孤島(ことう)」としていた離れ小島が周辺(あたり)全土を統べ行く一国足るのを手中に収めて仰天して在り、驚く両眼(まなこ)は俺を捉えて思惑(こころ)を鎮め、麻痺する感覚(おもい)を現行(ここ)にて再度麻痺する機会を射ていた。火の粉(こ)が藁葺家屋に順々自然に寄り付き燃え行く理念を手数(てかず)に痛んだ修行の司祭(あるじ)は事毎認(みと)めて正義に狼狽え、趣向を凝らした悪の人道(みち)へと全身傾け落ちて行くのを今度はゆっくりした眼(め)で見据えて捉え、一旦離れた偉業の術(すべ)には俺を直さぬ強靭(つよさ)が在った。

 そうした人煙(けむり)が虚無に巻かれて宙を見る内、俺の心身(からだ)は書店を行き過ぎ果(さ)きへと消えて、仄(ぼ)んやり浮んだ夫婦の微熱(ぬくみ)は仔細を背にして冷たく成り着き、俺の目前(まえ)から姿勢(すがた)を失(け)した。太陽が熱い真夏の夜(よ)の夢、俺の体裁(からだ)は幻夢(げんむ)を知る程剥き出た神経(いたみ)の主(あるじ)に平伏していた。三条冬実を知り得た俺には他人には無い計画(はかり)が芽生えて独歩を呈する立場(たちば)を確かめ、唯、人に対する臨時の気勢を意欲を咲かせて温(あたた)めて行き、人に知られて辟易するのは少年(みじゅく)に落ち着く臆病だった。彼が描(か)き得る内容ながらに活字で書いても意欲を漏らさぬ豪人(みのたけ)抑えて人に遣るのは色情湧き立つ本音であって、一向従順(すなお)が個人(ひと)を賄いくっきり在るから読者もそれほど反論せずまま納得して行き、経過を踏まえて周辺(あたり)を見遣れば、反発どころか懐柔され行く弱者の態(てい)へと皆が間違い落ち行く様(よう)で、独身(み)の寄る処をふとした過程(あたり)で目線を上げれば宗教(まよい)に堕ち行く人間(ひと)の迷路を恰も具現(うつ)して自然に解け入る描写と成るのに矛盾は浮ばず、潔白(しろ)い眼(まなこ)は何時(いつ)しか和(やわ)さを軽く紡いだ善者(あるじ)と成り得た。他(ひと)の言動(うごき)が早かったのを、人の動きを鵜呑みにしたまま俺の思惑(こころ)は好(よ)く好(よ)く知った。

 人間(ひと)の流行(ながれ)に身を寄せた儘で俺の独歩(しせい)は緩く成り着き、明日(あす)を知れない虚無の境地へ埋没して行き、〝数打ちゃ当る…!〟と予想を異にして人背(ひと)に埋もれ、長く成り行く快楽(オルガ)の境地へ黙って従う。誰にも夫々目標(あて)が在りつつ潔白(しろ)い眼(まなこ)は優柔ながらに独身(み)の寄せ所を忍従したまま未だまごまご捜した様子で、俺の独特(オーラ)は〝火の粉〟を包(くる)んで優雅に羽ばたき妄想嫌いに程好く成り得た。〝あの日〟に探した自問の回答(こたえ)が頁を開かぬ当書(とうしょ)の内にて散乱するのがはっきり身に採れ、糧とするのに躊躇は要らずに幻惑紛いの老子(ろうし)は飛び行き、教訓(おしえ)は平々(ひらひら)浮んで俺の欲する古郷(こきょう)へ跳んだ。彼の内実(ちから)をちらと見遣れば成る程そこには改革(わざ)の成し行く新生(あらた)が忍んで自活を束ね、自己主張にも程好く肥え得た根拠(にく)が付き行き人の目に好く、脂の乗り切る不問の行方が人の期待を大きく揺さ振り、まるで明日(あした)を酔わせる能力(ちから)もあった。男女が飛び散る夢の火花を華(あせ)に任せて不意に跳び退(の)き、退引(のっぴ)き成り得ぬ人間(ひと)の夢想は終末(おわり)を迎えて新生(あらた)に生き行く。そうした幻惑(ゆめ)に微睡む人間(ひと)の希望(ひかり)が恰も火花(ひかり)に身を化(か)え唐変朴から平和(やわさ)に降り立つ生気(精気:せい)の主(あるじ)を各々一同同時に見て取り自活(かて)に備えて、〝昨日より今日、今日より明日、…〟と選り取り見取りに華(はな)を添え得る自体を繕い、明日(あす)へ向くのを愉しみとした。そう出来たのだ。そうした〝刺激〟が性の退屈に折好く芽吹いた秋気(しゅうき)に在る故、恰も幻惑し掛けた人間(ひと)の思惑(こころ)は内実(ちから)を蓄え出直し始めて、無理が無いのを自然に見立てて人間(ひと)の従順(すなお)は力説して行き、己が倒れぬ個室の行方を果(さ)き廻って歓迎しており、今日を活き抜く自体(おのれ)の自活は罪を逸れ行き未来へ散って、自然に過去の自体(おのれ)を浄化するのも止まらぬ早さに遂行していた。彼(三条冬実)が描いた詮無き物語(はなし)は至極当然色めき立つので男と女は、特に若男・若女は、興味を引かれて頗る頭脳を洗練し始め、初めて知り得た経験(ちしき)ならば、と悠々自適に文句を垂れ行き自分の自活に重点(おもき)を置きつつ知りつつ、熱の出るまま市中に埋れた。このような有様を一体誰が見得たか。知り得たか。個人(ひと)の虚空は虚空足るまま既に誰かの右手に落ち行き太陽知らねど月光(つき)を知りつつ、自然の背後で犇めき合うのだ。皆、感動が欲しいと言う。〝感動〟の言葉を官能に見立てて安易に堕ち行く自力の徒労は華(はな:かて)を知るまま夢想に幻能(ゆめ)見て、夢幻能(かたち)を煎じて現在(かたち)を離れ、淡い独気(オーラ)に伝手を知るまま身分(じぶん)の立場に刺激を求め明るい日昼(ひる)には影を求めて無い物強請り、誰も彼もが男女を問わず軌跡を問わずに浅く咲き得た水場(みずば)の蓮(はな)にて自仰(おもい)を流し、主義(こころ)を見るまま自然に二重(だぶ)らせ、宗教(おもい)の赤糸(いと)には未熟が求めた司祭(あるじ)が往くのだ。人間(ひと)の仮死には夢想(ゆめ)が咲き出て自体(おのれ)の姿勢(すがた)を無体とせずうち次第に嘆いた少年(みじゅく)の居所(いどこ)が寝床を忘れて空虚と化し行き、明日(あす)を知るまま有体(からだ)が芽生えて延長上には自体(かたち)の咲き得る楽園(くに)を頬張る。無い物強請りは人間(ひと)の欲望(まよい)に革命を成し、人間(ひと)の独居は独歩を知るまま胡散(におい)に捕われ、自然を排する空虚の内には人を見下ろす虚空が咲き行き、神の存在(いぶき)は床(とこ)を見ぬまま人へ対する恐怖と化(か)わる。鉄壁成る哉、白い潔癖(こと)には数多を献じた人の空想(まよい)が具現化され得て〝科学〟と称した論理を組み立て人の分野(せかい)に降臨したが、人は科学を物に出来ずに挑戦半ばで肢体を奪(と)られて土台を奪われ、〝何だったのだ…〟と刹那唱ずる内にて明日(あした)の明かりは宇宙を包(つつ)んだ黒へと還る。塵と化し得た人間(ひと)の躰は万能忘れて宙(ちゅう)を跳んだが煩悩(なやみ)を失(け)し得た至極の刹那は今まで通りに一瞬に在り、人間(ひと)の信仰(ドグマ)は肢体を知らずに又もや宙を彷徨い煙る眼(まなこ)は向上(よく)を見破り、地中に還って追手に芽を出す思体(したい)と化すのだ。人間(ひと)の進歩(せかい)に終りは無い。

 彼の著書にはそうした内儀(ドグマ)が口を割るまま思春に講じて数多と出で立ち、涼風(かぜ)の鳴るうち俺の闊歩が市中(まち)を過ぎれば時間の秒針(はり)など問題ではなく、経過を知り得ぬ人間(ひと)の快感(オルガ)は熱病(やまい)に絆され案山子と成り着き、果(あす)を見るのも億劫がった。束の間病に倒れた躰は愛を求めて異性を求め、独歩(ある)く努めを果した後にて自制に絡めた義理を固めて覚悟と成し得て、人間(ひと)の往来(でいり)は激しさ増す儘、宇宙を捉えた活気(あした)と成った。彼の著書には涼風(かぜ)の吹くまま両掌(りょうて)を重ね、一義(いちぎ)を載せ行き大事な本意に正義を課し付け悪意と成して、人間(ひと)の信仰(こころ)を惑わす内にて偶像拵え新生(あらた)を報せ、主人公には新生(あらた)に活き得た障害(いろ)を付け得て物語(はなし)の弾力(やわみ)を豊富にしていた。

〝Those metamorphoses made people free and have catalysis.〟

 短歌が興って斬新(あらた)が生れ、明日(あす)に生き抜く人間(ひと)の弱身(よわみ)を事毎努めて大きく裂かれて精気を失くさせ、忌々しい程〝寝耳〟に映え得た〝謳歌のShow〟には人間(ひと)の生命(いのち)も〝燃え尽き〟知らずに更生ばかりと貪欲に成り、自体(おのれ)の言動(うごき)を知らない儘にて如何(どう)とも出来ない天変地異など〝寝耳〟に採って吸収して行き、白痴に咲き得た人間(ひと)の〝生(せい)〟とは初めから在る孤踏(ことう)の虚ろを模造していた。彼(かれ)の口から『有宗教者と無宗教者に大きく分れて、何かしらの悪戯(ゲーム)をした後(のち)、敗けた側には重くて内気な罰ゲームを課し、勝者の側には別段新たな負債を負わせず、唯、敗けた男女の〝罰悪戯(ばつげーむ)〟に準じて滅びる様など吟味(あじ)わい観せ行く無理ない道理を用意してある。その〝悪戯〟に纏わる内実(もの)とは主(おも)にこれまで性を扱う分野に隠れて息した褒美にあって、男女(ひと)の興味を必ず必ず引くものである。』など吹聴気味にて『性』を取り立て魅惑を醸した整文(せいぶん)等が文体(かたち)を拵え目に好く輝(ひか)り、人間(ひと)の流行(うごき)は取分け準じて匂いを嗅がされ独歩に止(と)められ、俺の肢体(からだ)は取分け準じて自我(じぶん)を忘れて幻覚見せられ苦も無く通えた夢想(ゆめ)を立たせて主眼と成り着き、泡(あぶく)に落した常識(せけん)の表情(いろ)など見方を変えれば刹那に透った空体(くうたい)と成り、問題失くして熱気(もうか)の内へと折って入(はい)った。

      *

「『性』を対象に取り上げている所為か、中々如何(どう)して深味(ふかみ)が在りつつ信義が在って、中々通らぬ理性の穂先は世間に埋れて悪態吐(づ)き行き、俺の右手は不要を採りつつ大事と成した。要を知るのはこの果(さ)きの事故、如何(どう)して現行(いま)など窘めようか。楽に成りつつ心身(からだ)を軽くし、活きて行くのに都合の好い主義の在り処を皆で仲良く捜して行こう。」

      *

 そのような声々(こえごえ)が市中の辺りで氾濫しながら発声(こえ)の主(あるじ)は定かには無く、俺は彼(か)の三条氏等を知って居たからそうした発声(こえ)等物ともしないで自力で寄り着き、寄り着く果(さ)きには氏こそ居ないが氏を律儀に称えた偶像(ビジョン)が降り立ち個人(ひと)が集まり、アイドルに観た密室(へや)の狂気を舞踏(おどり)に見立てて合図(ゴング)を鳴らし、個人々々が愛した端身(かけら)を一体(アイドル)から出た意欲に重ねて禁断(タブー)と化して、個人(じぶん)の新生(あらた)に水雲程にも若い声明(いのち)を大喝しながら静かに制した。俺は生活歴(これまで)に免じて甦る氏が究明し尽し俺に見せ得た巨大なエロスに唯翻弄してあり、決着(さいご)まで生(ゆ)く無業の主(あるじ)に辟易しながら欠伸も出来ずについ又孤踏(ことう)へ辿り、自我(おのれ)が配した下界の人等(ひとら)と現行(いま)を愉しみ構築した儘、恐怖のリターンに感謝を覚えた。偽装の〝感謝〟に程無く行き着く。次の市中(まち)まで行き過ぎないで彼(かれ)の精神(いしき)をそっと覗けばほとぼり冷め行く精気の内にて青く輝(ひか)った媒体(しょくしゅ)が飛び出て俺に絡んで、耳打ちするほど優しい小声(こえ)にて俄かに営む脚色(いろ)など立て行き俺に拝して、〝注文通りに仕立て上げ得たMasochism(マゾ)の最中(さなか)に四肢(からだ)を拡げて御前(おのれ)の躍動(うごき)を良く見知るがいいさ。御前の知り得ぬErosの表記がそこに居座り、順々嗜む泡(あぶく)の変身(うごき)を手許操作で御前は知り得る。何処(どこ)へ行っても御前(おまえ)に湧かない他人(きょむ)の教授がそこに在るのだ。白い吐息は紅(あか)く化(か)わって楽園表記も夢想(ゆめ)ではなくなる。御前の独歩は一つの経験(ちしき)に此処へ居座り現行(いま)の理想を此処にて吟味(あじ)わい、経過(とき)を動かす分業(ノルマ)を知るのだ。あっと言う間に地は裂け始めて御前の憤悶(なやみ)を統べて呑み干し、御前の独走(うごき)は活きる儘にてこの世で貰える自然(ちから)を得得(うう)る。臆する者には悔いのみ残る。アダムとエバも一度はその身に果実(ほろび)を観たのだ。両者共々現行(いま)を生き抜く老若男女の祖先に落ち着き、聖書の内にも二人の豊富は約束して在る。一つの経験(ちしき)だ。生き行く儘に、活き行く内にて、自然が訓(おし)える個人(ひと)の知識だ。怖がるな、御前の身元は万(すべて)を以て此処に記し得る御前の司祭(あるじ)が正義と共に過去から未来へ確立して行く。此処に記し得た一つの経験(ルール)はこういうものだ。二人の真面目な有宗教者と無宗教者が皆が観て居るトイレへ入り、日常に観る平均的なサイズの坩堝(べんき)の水面(みなも)に両者が自由に切り取る落紙(かみ)を投げ入れ、或る程度溜まった状態としたまま今度は流し、それまで放(ほう)った落紙(かみ)を上手く奇麗に流し切れるか、というものである。簡単な作業(ルール)に見えてこれが中々至難でもあり、「シンプルな奴ほど倒し難(にく)い」など御前が聴いた戯言を踏襲するほど斬新さが在り、御前の興味も少しばかりは満たされながらそこで尚且つ愉しめるだろう。」等、云々彼々(うんぬんかんぬん)ごたごた言いつつ、俺の虚無をも上手く掬って体裁(かたち)を調え、土台もしっかり切り取り始めた。物語(はなし)の流行(こっし)に俺が立ち得る丈夫な土台を上手く講じたミラージュは又、どんでん返しの策を講じて俺を惑わせ、俺から出て行く遠吠え等を一つに纏めて現実(かこい)に整え、自然(とうめい)ばかりの現実(かこい)の内に退屈(ひま)を射抜ける内実(ちから)を与え、余力(オプション)等まで体好く講じて俺へと対峙し、俺の分身(からだ)は見る見る解け出し自然(くうき)に泳ぎこれまで観て来た単色リズムを総纏めにして真実(やみ)へ遣ろうと努力していた。

 丁度良き日に俺の心身(からだ)は友人に会い、その友人とは又D大文学部国文科に居座る流暢な口振りに偏見(ゆめ)を預ける若輩に在り、その男と俺の進退(のろし)は左右に寄りつつ相対(あいたい)しながら、実は根底(そこ)では互いを欲して認めて悪態吐(づ)きつつ理想(ゆめ)を投げ合い、互いに活路を見出しながらも悠々自適に構えてあった喰えない士にある。俺が睨(ね)めても友人(とも)の心身(やから)は空転するまま何処(どこ)へ行くのかその身を預ける鉾先望んで幽体して居り、掴めぬ穂先(やさき)に無聊を挙げれば図書の香りが仄香(ほのか)に居座り系譜を忘れる。実はそれほど文士に落ち着く間も無く俺の心身(からだ)はのらりくらりとひるひる廻って総身双身(そうみそうしん)心も思惑(あたま)もそれほど文字を呈せず気力も薄れ、退引(のっぴ)き成らない死力を講じて毎日この士と相対(あいたい)しており、士は士にて自分の想いが余す間も無く思体(からだ)を狂々(くるくる)遊泳(およ)いで素知らぬ表情(かお)にて此方(こちら)の出方を窺う最中(さなか)で、昼が夜でも、夜が朝でも、一向変らぬ無極の社(やしろ)を学舎に構えて遊んでいるから、当の俺にも士にも、皆目付かない見当外れが散々散らばり、文士の卵はこの上無いまま作品(もの)を創れず左右して在る。これは彼(か)の国学教授の成す処にある、文士成らぬ学士に仕込んだ黄金色(きいろ)い小玉(ゆめ)など蛻を忘れて空転しており、明日(あす)の我が身を活歩(かつほ)に知るまま寝語(ねがた)りし得ない堕在(だざい)の間(ま)に間(ま)に仕上がり続けた胡散であって、D大(ここ)に至れば二人は共々、そうする間際に散々知り行く寝息の在り処と微動(うごき)の在り処が漸く並んだ自在の空(くう)へと密かに湧いて快適など知り、癖を覚えた二人の在り処は双身(そうみ)と成り得て目下騒いだ脚色(いろ)の流行(ながれ)に独走(はし)らされ行く。そうして仕上がる念仏等がこれ又脚色付(いろづ)き独走(はし)って合わない流行(ながれ)の果(さ)きにて独創など見せ双身(ふたり)を固くし、緊張等にも落して行くから双身(ふたり)の夢想(ゆめ)とは現実離れに逍遥し始め滑稽劇に堕(だ)して阿り、挙句の果てには空想(おもい)も問えない魅惑を失くした白紙の博士が功を焦って撫子と成り、物を言わない理想(ゆめ)の迷路が身体(すがた)を見せ得た。双身(ふたり)の始めは所々で波長を呼びつつ講じて困らぬ打算に満ちたが、独創(こごと)を言い抜く〝針の筵〟は結局黙って身を棄(な)げ草木(そうもく)等にも躰(おのれ)の文士をぽつぽつ置き遣り魅惑を化(か)え行き未熟と成り着き、明日(あす)への活路(ゆめ)とは明日(あす)が観に来て肢体を操(と)るまで一切合財黙して微動(うご)かず、白紙に投げ遣る言葉の数まで透して在り着き、思惑(こころ)を仕留める知己(おのれ)の主(あるじ)は司祭を無視して俺の寝床へ思体(すがた)を棄(な)げ得た。そうした我等の足元(みもと)に大きく羽ばたきその思体(み)を呈せる〝愛露事師(えろじし)〟が来て、思惑(あたま)を抱えて悶絶するほど淡い安堵を幾つも置き遣り〝自分は此処(ここ)にて大人(たいれん)成る〟など双身(ふたり)の間柄(そうち)に灯(ひ)を付け悪態吐(づ)き行き、活歩を覚えた淡い温日(ぬくび)は銀杏の影から蒼(あお)に返せる砂塵を知りつつ欠伸を炊いて真逆(まさか)に陥る不実の思春(はる)など緩く転んで俺へと居座り、対峙する内、双身(ふたり)の独身(ひとり)は掛け声鳴るまま風の陰から欲体(よくたい)覗かせ優雅に舞い行き、友人(おとこ)は宿敵(とも)から〝絶世成る哉〟優雅を生け捕る噂の美女へと視点(めさき)を返させ画餅を愛し、孤独に居座る独身(そのみ)の根暗を隈なく愛した夢想(ゆめ)の在り処は友さえ消した。消された〝友〟には目の無い目暗(もぐら)の様(よう)な、蛇の様(よう)な、はた又蝙蝠(とり)の様(よう)な、一見、逃げ得る避暑地(ばしょ)さえ上手く抱える身軽が在ったが、〝友〟とするには何かが足りない現実(かたち)を操(と)りつつ俺の根暗は暗算したから〝友〟は呆(ほう)けて、暗黒(くろ)の真淵(まぶち)を白くして行く「雪」の在り処に密かに身を寄せ結託して行き、独歩(ある)き始めた美的な思想は夜目の内でも密かに輝く幽体離脱を十八番(とくい)としたまま特異として行き、自体(じたい)の立場をはっきりした儘、俺の軌(あと)へとしっかり繋がる宗教(まよい)を呈した。

 冷たい「雪」には幼女が戯れ、大人が失くした温(ぬく)みを呈する音頭の仄かが微妙に擦(ず)れ行き根雪が居座り、大きな陽(ひ)の中、惰性に導く人間(ひと)の快感(オルガ)は果て無く止(や)み行く宗教(まよい)を講じて安産され行き、その総身(み)を落した幼女(しとね)の内には母体(はは)が束ねる愛情(あい)の仄香(ほのか)が色香(いろか)を灯して表象(かたち)を連れ行き、魅惑の苗床(とこ)には明りが曇った四谷(よつや)の僧など禿げた頭頂(あたま)を上手く輝(ひか)らせ俺と相手の微妙な擦(ず)れなど修正していた。「相手」というのは〝意味〟の心内(うち)より這い出た物体(もの)にて物質(しつ)には寄らずに苗床(とこ)に有り付き、思想の変化を先取り読み行き俺の夢想(ゆめ)には驟雨に濡れ行く下腹(しとね)が和(やわ)いで素直に延びて、膨張し掛かる理性(こころ)の裾には性(せい)に纏わるあらゆる生気が表情(かお)を隠して微妙に仰け反り思惑(あたま)を隠し、悶絶するまま日常(ひび)に落ち着く速さを知った。知った果(さ)きには異形(ひと)が居座り、仄香(ほのか)に知り得た幼体(しとね)に倣って我が唇は又々和(やわ)いで老朽して行き、下卑た虚言(ことば)を沢山並べて軒端に謳った幼女の体(てい)など具も漏らさず回収し出して熟女(おんな)を見付け、熟(じゅく)した果実は知恵を付け行き、俺の裸体(はだか)は要(よう)を成し終え静かに退(さ)がる。悪魔の手先が何処(どこ)へ咲けども俺の心身(からだ)は異様に膨れて大きく成って、明日(あす)へ跳び付く指弾(しだん)の意図には狂喜が騒いで下腹へ溜まり、谷崎、野坂が如何(どう)とも言えない身重(みおも)に悩んだ苦楽の果(さ)きより越え得た仕種を俺も真似して遊興して居り破格を付けて、こうした徒労(ろう)には力無くとも試算が活き着き、独創(こごと)を遊んだ小さな寝室(ねむろ)が勇んで来たのは〝あいつの以前(まえ)から俺は知り行く実存(かたち)が有り付き、行方を晦ます人の勇気(こころ)が宇宙(どこか)へ消え果て星を呈(だ)すのが仕種(つとめ)であるから、如何(どう)とも言えない宗教(みわく)が返って遊撃(あそ)び、俺の心身(こころ)を懸橋成る哉小さな舟へと落して行って、俺の真価を崩せはせぬのだ。まぁ観て居るがよい。明日(あす)へ咲き得た未想(みそう)の作物(もの)とは夢想(ゆめ)の主(あるじ)を引き連れ始めて誰にも止まらず、自己(おのれ)の幽体(からだ)を静かに支えて虚日(きょじつ)を見せ行き、やがては苦悩を除いて死んでも活きる。活き行く糧には経過(いつか)に居座る碗(かこい)が彩(と)られて弾いた批評は丼などでも帳尻合せず無駄に頬張り、斯くして「俺」とは、目下の樞(ひめごと)、苗床(とこ)に就く前、瞬時に照輝(てら)した一等星など俄かに仕立てて排斥され得た古代の生命(いのち)を呼び起こすのだ。冷静(しず)かにたえ行く思想の司祭(あるじ)は「小手鞠」突くほど美軟(びなん)に貫き幼女を仕立て、仕込んだ残泳(こども)は悪態吐(づ)きつつ始めの頃には幼女(おんな)を濡らして困惑させつつ、成熟(おとな)の食(しょく)など頬張らせるが、一体如何(どう)して女体(おんな)の神秘は男体(おとこ)を連れ行き独身(ひとり)にさせて、宙へ浮んだ「確認」等を目下掌(て)の内(なか)拡げて蹂躙して行き、過去の我が名を悪態吐(づ)きつつ呼び続けるのが仕種(しごと)と知って成長始めて、脆く壊れた秘蔵(ひみつ)の内へと生け捕らせるのだ。誰も彼もが透った人路(みち)で、明日(あす)は誰もが、過去には誰かが、悪態吐(づ)きつつ通って行くので、誰にも何にも奇跡は報(しら)さず自然に解け行き硝子に透った阿弥陀の一線(すじ)など真逆(まぎゃく)に捉え、心地に居座る権力(ちから)を意味する。諸行無常に億尾に漏らした人糞等には谷崎なんかが何かを頬張り夢想に信じて解けた様(よう)だが、俺の過去には孤島に居座る大開脚等にも精子が跳び付き肥えて行くので、女体(からだ)に凄んだ精確などには始めに捕えた従順(すなお)が始めて、自然を拵(こさ)えた柔軟(やわさ)を憶えて成人して行き、孤独顔した塗工の主(あるじ)は透った硝子の向こうに映え出し手足を伸ばして有頂を見定め、「明日(あす)の夜には女帝(にょてい)が居座る後楽園さえ夜咲(よざ)きに免じて実際在る」等、脚色(いろ)を重ねた塗工の人種は頓首するまま夜に散乱(みだ)れた女帝(あるじ)を愛撫(な)め得た。〟

 孤高に居座ること数十分、気持ちの角から行李を具えた夢路が現れ俺の手を取り、必死に成りつつ流行(ながれ)に巻かれるこの身に解け得た夢想を携えどん詰まりに着き、孤独を下して宙(そら)を見たのは、明日(あした)が聞えた詩壇(しだん)であった。永年(えいねん)連れ添い共に理想(ゆめ)見た双身(ふたり)の夢路は双身(ふたり)にとっても世情にとっても新しいまま明日(あす)を賄う砂塵に有り付き、「文学とは神が無ければ何にも成らぬ。何にも成れぬ。文学とはこの一言に尽きる。明日(あす)の苦労(こと)を思い出さずに我が身の行方を目敏く見詰めて、友の嘆きが正義か悪かを見極めよ。試算は入(い)らぬ。蛻と成っては始末に悪く、有名無実に孤独を売ろう。明日(あす)を気にせず今日を愛せよ。今日を愛せば自身(おのれ)の行方が現実(かたち)に落ち着き、静かな誤算は今日を愛する。マザー・テレサの鬱の瞳(ひとみ)に死海が拡がり夢想を隔てて信仰(かたち)を観たのはつい先日構えた狼狽心(まごころ)にも在り、経過(とき)を越え行く転生成るまま理想(ゆめ)の叫喚(さけび)は明日(あす)に備えてくっきり静まる。我が身の賭けには生気が灯らず覇気さえ乗らず、日々の支点に両脚(あし)を進める糧を採れども〝山海定理〟の手本を知らずに明日(あす)の白痴は宙へと沈む。下手な生気も数打ちゃ当る。上手な法話も数打ちゃ折れる。人間(ひと)の酸味は聖界(せいかい)からでも下界からでも唐突極まる自穴(あな)に落ちれば自然が狙った流転が和らぎ、統制諸国(とうせいしょこく)は新進作家の不貞を許さぬ定理(じょうり)に収まり、俺の出場所は失墜され行く。後頭(あたま)を抱えて自身を労わり、老朽して行く他人(ひと)の身体(からだ)を傍(よこ)に見ながら涙に暮れ行く独歩を従え華水(あせみず)流し、冷や汗掻くのは瞬間(つなぎ)を活き切る自分の宿命(いのち)で、両親(おや)の愛情(あい)さえ哀しくもなる。橙色した丘の彼方で都会に構えた虚無の幻想(かたち)を具現(かたち)にして行き、独歩(ある)いて行くのは真っ黄(まっき)に染まった次元の迷路をゆるりと独歩(ある)いた少年であり、少女は居ないで、明日(あす)を冷やす盲目の骸は整頓されない自分の苗床(とこ)へとすごすご闊歩(はし)って返って行くのだ。俺は女性(おんな)を知り得た。女体(おんな)を知った。女帝(おんな)を知り得た。女将(おんな)を知り得た。傀儡(どうぐ)へ落ち着く他人(ひと)の心身(むくろ)を逆さに着たまま堕ちた餓鬼道(みち)には幼少(こども)が揺らいでほっそり立って、俺の行方を美声(こえ)に誘って透り行くのは明(あさ)の明星(ねざめ)で、地道に駆け寄る牛歩の新参(むすめ)は声明(いのち)を嗄らして俺へ偽り、身分の相異をTV(かがみ)に映して発狂し出して、明(あさ)が来るのは到底適わぬ未信(みしん)の斜(はす)へと仄(ぼ)んやりして来る」。

 三条(かのじょ)は幼少(こども)を衒ってお淑やかに成り、数多の夢想(ゆめ)など男性(おとこ)が観るまま不問を問い掛け丈夫へ成り着き、新参(むすめ)が乞うのは間近に咲き得た終着(ゴール)の華(はな)だと小さく頷き褥を脱いで、悪戯(ゲーム)に纏わる裏口上(うらこうじょう)など退引(のっぴ)き成らない試験の労にも近付いて来て、展開(つぎ)を見積もる試算の有限(かぎり)は俗世を離れて揺らめき尚且つ、人間(ひと)の寝間へと押し入り始めて、山海珍味を愛でるように、木通(あけび)の〝丈夫〟を呑み喰い始めた。幼少(こども)の菓子にも丁度好いのを三条(かのじょ)の頭脳(あたま)はくるくる廻って捉えた様(よう)にて、その実(み)の採取が容易成るのに目敏く這入った二本の触手は独創(こごと)を言いつつ自身(おのれ)を化けさせ、却って正しい定理(じょうり)の寝床(ありか)を上手に持ち出しその実(み)を揉みつつ、無人の快気(かいき)に感謝を呈した俺の出来などまるで諭した。田舎の路(みち)から山路(さんろ)を隔てて養育(そだち)が始まり、俺の成長(からだ)は取り付く間も無く吟遊詩人にその身を化けさせ〝木通〟に酔いつつ、馬酔木に良く似た微温(ぬる)い眼(まなこ)を虚遁(きょとん)と投げ遣り俺の脳裏に芝居が込み上げ、有限(かぎり)を知らない内輪の居所(いどこ)は年増を立たせて彼女が成り立つ。幼女の体(てい)には一足飛びする五形(ごぎょう)の肢体(したい)が行方を採りつつ暗算し始め、偉い愚者(ぐしゃ)など高位に就かせて悪戯(ばつげーむ)には諸行を見知らぬ新生(せいき)が根付いて行人(こうじん)と成り、身分を幻想(せけん)に支えて要らなく成った排泄物等、一人の女人(おんな)を思惑(こころ)に挙げ得た夢想(むそう)の司祭(あるじ)は彼等の目前(まえ)にて四肢を突かせて地面を這い擦(す)る人豚(ぶた)の姿勢(すがた)に女人(おんな)を据え置き、その身の尻の穴から腸詰めするほど強引極まる隠微な権力(ちから)で皆に勧めて人糞(ふん)を詰めさせ、彼等の内には幻想(せけん)に活き行き流行被(りゅうこうかぶ)れに他人(ひと)を知らない幼女の体(てい)した女子高生など自然に具えて顔は紅(あか)らみ無邪気に跳ねて、笑い声には生贄(ぎせい)と成り得た正義を愛する無防(むぼう)の使者(せいと)が、女人(おんな)の真面目に真向きに捉えた写生を観ていた。霞の如き揺れ動きには雰囲気(くうき)を害する両刃が降り立ち彼等の身元(たちば)を構築し始め、白い吐息(いき)には長者に対する寝息の在り処が真面にはっきり浮かび上がって、皆が愛した流行(ながれ)が揺れると到底適わぬ辛苦の刃(やいば)が退屈(ひま)を捕えて人間(ひと)を牛耳り、〝明日(あす)に立つのは俺達だろう〟、〝平然無垢な夏の寝床は人間(ひと)をあしらい地中へ潜り、人間(ひと)の足場を固めた後には俄かに息する自由を啄む。啄み採られた人間(ひと)の華(あせ)には蓮華の花より一層目立った金の色した価値が光って、人間(ひと)は丸々活きて開花し、暗黒(やみ)を忘れて背徳(ノルマ)を愛(いと)う〟等々、人間(ひと)の流行(ながれ)は終ぞ束の間少しの隙無く叫喚して行き遠くへ立ち行く走者の態(てい)して真向きに居直り、居直る先にはこれまで見知った故習が根付いて破戒に芽吹いた快感(オルガ)が佇み、快感(オルガ)は矢鱈滅法快楽(らく)を講じて初春に活き得た本能(こども)を愛した。故習(ドグマ)は一度底にて正味を覗かせ果(さ)きにたえ行く苦楽を報せて人間(ひと)を生け捕り、大人子供を未熟に愛した世情を伴う快楽(いろは)の内にて体(たい)を化(か)え行き世間に通り、人間(ひと)の源(もと)へと浸透して行く。人間(ひと)の根底(しょうみ)を舐めた個人(もの)にはこの世がどれ程、価値がどれ程、苦楽が如何(いか)程、人間(ひと)がどれ程の恥垢に埋れて試談(しだん)に片付き、白紙に堕ち行く脚色(いろ)の多さで愉しめるのかを人間(ひと)に有り付き既に報(しら)されていて、個人(ひと)の身元(ふもと)は明々(あかあか)燃え行く世間の寝首が如何に〝多き〟を占め行き耄碌するのが勿体無いかを気色に訓(おそ)わり思体(したい)に添い付き個人の肢体(からだ)を上手く冷め々々(さめざめ)操って行き、個人(ひと)の思いは所々で正義に問いつつ細かな刺激(かて)さえ欠伸に呑んだ。

 特にそうした中でも、大便を多大に放(ひ)り出し他人の情緒(こころ)に生贄(ぎせい)を捕え、生贄(ぎせい)の懊悩(なやみ)を嘲笑(わら)う如くに彼(か)の女子高生やら女子大生やら世間を見知ったOL達まで立場を変えつつ、透明色した大型シャーレに次々入れ込む黄金色(おうごんいろ)を〝食事〟と称して生贄(ぎせい)の尻穴(あな)へと浣腸器を差し注入するのは、女性の奈落を再現しており、既に見知った地獄の黙示を後生大事に丁寧成るまま我等の刺激(かて)だと上手に知るのは女性(おんな)の勇気が無謀へ行き着く流転(ながれ)に在った。発狂するまで恐らく止まらぬ女性(おんな)の色気の生気成るのは彼(か)の有名なFaust(ファウスト)に夢見た悪魔の前戯を真下に捉えて自己を掲げる手腕に在って、作業は目下咲き行く無欲の煩悩(ほのお)に嫉妬して在り他人と競り合い功(こう)へと闊歩(ある)き、女性(おんな)の牛歩が好(よ)く好(よ)く鋼を彩る男の脆弱(よわ)さを充分堪能したまま男性(おとこ)の色気を誘って行った。独裁的に、禁欲的に、強権的にと女性(おんな)の唾棄など吹き飛んで行き、暗闇(やみ)の内から揺ら揺ら仄(ほの)めく紅(あか)い炎が嫉妬を呼び付け生贄(ぎせい)を焦らせ、心身(からだ)が遠くの目的(あて)など知るのに都合の好いほど褥に和らぐ道具(ツール)の一部は女芯を責め遣る棘突(しとつ)に在って、どんどん挿入(い)れ行く女体(おんな)の大便(べん)には夫々個別に形色(けいしき)の違う特異が成り立ち生贄(ぎせい)に宿り、生贄(ぎせい)の体内(うち)では幾重にも層を重ねた寄生の強靭(つよ)さが素知らぬ表情(かお)して地道に活きて、誠実(まじめ)な女体(からだ)は一々蠢き絶叫するまま刺激を呼び込む。男は釣られて小声(こえ)の在り処を揚々探して徘徊して在り、現実(リアル)に見付けた美声の在り処が自分の身近にはっきり分ると急に焦って前傾したまま女帝(おんな)の優美に酔い痴れて行き、甘い腕力(ちから)と淡い恥臭(ちしゅう)に火照った躰は明々して行き女の双身(からだ)を一つ纏めに生け捕った儘、身前(みまえ)に横たえ美味しく頂く。発狂して行く女心(おんな)の神秘は如何(いか)にも増して男を呼び込み、所々で冷静さを操(と)り自分の少女をあやして行くのが、母体に咲き得た温情(ぬくみ)に似ていて男を横取る。操(と)られた男の飛散(ひさん)の最中(さなか)に俺に生れた恋心が在り、女体(おんな)を欲した興奮等には誰にも気付けぬ丈夫が在った。悪戯(ばつげーむ)として眺めて行くには余りに稚拙で欲が深く、人間(ひと)の流行(ながれ)に即した重体であろう。〝稚拙の神〟など彼等に見えて、端(はた)では知れない無欲の番人等が骨身を輝(ひか)らせ遊んだようだ。玉手の匣には何も無いのが不思議でならず、人間(ひと)の蚊帳には無害成るまま簡略な防御で周囲(まわり)を閉め出し、屈折したまま人間(ひと)の防御は夢想(ゆめ)の内にて歪曲している。脚色(いろ)が付くまま土の中にて人間(ひと)が創られ四肢(からだ)を育て、脳は思惑(こころ)の淡い如きに途中で生れて、宙(そら)から掘られた木通の様子だ。俺はこのかた生れた周辺(あたり)に塒を置き遣り、両親(おや)に対する神秘の程度(ほど)など胡坐を鳴らして上手く頬張り、地中に蠢く根虫(むし)の樞(いろは)は群青色した身軽な宙へと打って返した。

 俺にはもう直ぐ自然がくれ得る新生(あらた)な弄(あそ)びが軒端に映え切る独創(こごと)の如くに憔悴して行き、思体(からだ)が萎え得た猫背の頭上(そら)には恰も輝(ひか)った超鉄人(スーパーマン)が独語を連ねて明るく成って、寝耳に居座る戯言(ことば)の手数(かず)など丈夫に身揃(みそろ)え、一つの花画(まんが)を微妙に点けた。TVの体(てい)にて点いた花画(まんが)は俺の掌(て)に在る常識(ルール)の手数(かず)など地中に投げ遣り空虚を諭し、俺の頭上に輝(あか)く灯ったネクロマンサの登場絵図など季毎(きごと)に咲き行く瑠璃咲(るりざ)きにも似た青白(あお)い嫉妬(ほのお)を宙(そら)へと返し、虚空に浮んだ花画(まんが)の態(てい)には、何時(いつ)か見知った空虚が産した。産した空虚は〝瑠璃色乙女〟に密かに近付き曇天呈して俺へと訝り、俺の定めは終ぞ密かに大樹(くうきょ)に解け行く思想を目っけて身軽に跳んだ、あの日の傀儡(したい)に程好く取り付く試算を設けた。尻切れ蜻蛉の広く落ち行く体裁採りつつ彼(か)の花画(まんが)の未完の具実(からだ)は、一端(いっぱし)に輝(ひか)る塩辛蜻蛉の腕弱(よわ)いお尻にぽっと芽が出て相好く呆(ぼ)けて、尻切れ蜻蛉は塩辛蜻蛉に養育されつつ、俺の塒をゆっくり飛んでる。花画(まんが)に即した堕情(だじょう)の性器は世紀を厭わず思体(からだ)を嫌い、注射器何たる科学の既成を終ぞ束の間目の当たりにせず、揚々飛び行く蜻蛉の短命(いのち)を真逆(まさか)に捉え、俺の性器を弱く返した。正理(せいり)に飛び込む俺の寝言(おと)、俺の吐息は蛙を呑み行き蜻蛉を蹴散らし、熱い乙女を充分冷やして花画(はな)の蜜へと用途を耕す。俺の苦楽(オルガ)はそこで終った。

 土の内(なか)から太陽(そら)を見上げて地上へ降り立ち新生(あらた)に湧き出た人間(ひと)の具像を逆手に採れ得(え)ば、雲の行方は泉を指し行き斜光に小踊(おど)った超佳人(ウルトラマン)が俺の寝耳に打ち添えしてくれ、〝宗教(まよい)を齎す苦策(くさく)の花画(まんが)は何時(いつ)にも果て得ぬ強靭(つよき)を返(へん)じて人間(ひと)を呑み込む。人間(ひと)の空胴(からだ)を殻だ空(から)だと騒ぎ立て行き自己(おのれ)を誤魔化す羞恥に寄るのは、きっと却ってお前を過ぎ去り刺激(かて)とは成らん。刺激(かて)と栄養(かて)とは知識を透して経験(かて)と知り着き、「一端玄人(いっぱしくろうと)」が仰け反る体(てい)にて常識振っても一向仰いだ希望は返らず、宙(そら)の虚空で寝入り出すのだ。お前の主観にもう着く筈である。新生(あらた)に湧き出る思想の源泉(いずみ)が付く筈である。『思想の源泉(いずみ)』等と端(はな)から揺らいだ冗語(じょうご)の態(てい)にて人間(ひと)はこれを捉(捕)えられぬが、『お伽切草紙(おとぎりそうし)』の云々、明確、苦にして喜び、花画(はな)の在り処を探して行く等、幼児(こども)の仕種(しごと)は自然に廻って養育され行き、お前の思体(たい)にも具現(かたち)が宿ろう。白日夢は今、独創とは今、生き抜くとは今、涼風とは今、科学とは今、文学とは今、宗教(まよい)とは今、信仰(まよい)とは今、決意(まよい)とは今、人間(にんげん)とは今、お前の目前(まえ)にて小踏(おど)って在るのだ。九十五年に都会(ちまた)を沸かせたオウムの寝声(こえ)など間近に知れて、馬鹿にも出来ぬ丈夫な骨身がお前に映ろう…」〟、散々個室を騒がせ四隅に消え行く骸の微声(こえ)には大喝には無い無音の木霊が貴(とうと)く活き抜き、俺の心身(からだ)を鞣して行った。

「この俺だけが住み着く個室に誰か居る。この個室(へや)に跳び付き我聞に傾く新生(あらた)な誰かがオウムを信じて俺を観ている。具に読まれる俺の微動はあいつの掌(て)に堕ち、俺とあいつは要(よう)を成せ得ぬ永久(とわ)の間隔(きょり)にて白帆を掲げて反逆して在る。俺は意図を失い、何に向かって反逆するのか合財知らずに狼煙を上げつつ白々(あさ)へ向かって、オウムのあいつに調子を合せて白々解け入る思体(からだ)に居座る。」

 予定調和に思体(からだ)を落した俺の記憶(かこ)には間も無く固まる「調子」の行方を誰に合せて澄ませて在るのか俄かに知らず、唯々硝子を破った光線銃でも身内(うち)へと忍ばせ、領土を採り行く果(さ)きの身軽(かる)さに失墜しながら、未来が落ち来る軌跡を待った。俺はこれ等を夢想(ゆめ)見て書き置きして安堵を揃えて良い筈なのだが一切記さず黒机(つくえ)に睨(ね)めつけ、帰国(かこ)の間(ま)に間(ま)に飛び散る華(あせ)など一瞬耕す苦労の運びを総身に保(も)たせて逡巡して在り、これ等の一連(ゆめ)など一気に書き得た。

 俺はその際、描(か)いて居ながら、オウムに殺(や)られた幾多の人体(からだ)を強く睨(ね)め付け吟味して居り、試練を失くした無体の司祭(あるじ)を終ぞ束の間〝怖い〟と想えて、〝有名人には成りたくない〟など仔細に呟き夢想(ゆめ)を記(か)き終え、この場を去った。地中に咲き出た貝のあの子は未だに呆(ほう)けて暗闇(やみ)へ逃げ切り、俺の目暗(めくら)の掌(て)等を引っ張って在る…。


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~吾妻病(あずまびょう)―幻想病―~ 天川裕司 @tenkawayuji

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