第3話 内需とエスカレーター:世界に大きく出ない理由

世界に大きく出ない理由、なんて書いちゃいましたけど、別にこれは悪いことを語るわけではありません。


世界に大きく出ない理由…ズバリ、ほとんどの日本人にとって必要ないと思われるからです。


それもそうでしょう。


日本のほとんどの企業は、内需により潤っていると言っても過言ではありません。


要は、日本国内で完結するビジネスで十分お金が儲かるということです。


2023年、日本のGDPは591.4兆円。アメリカ、中国、ドイツに続き世界四位です。


中国とドイツに抜かれたのは比較的最近ですが、そこまで気にするようなことではないと考えます。小さな島国でこれだけの付加価値を産んでいるのだから、内需は非常に充実していると言えます。


ただ、決して楽観的な話をするつもりもありません。


実際には物価は上昇し税金を多く取られても、給料は変わらずで生活は苦しいと言う人が多いでしょう。もう20年以上は変わっていないと言います。


2022年に判明した世界平均年収ランキングでは世界25位。。。韓国にも抜かれました。


しかも平均値は年収458万円ですが、中央値は年収396万円という。。。


若い人も読んでいるかもしれないので説明しますが、中央値というのは、データを小さい順から並べて真ん中に来る数字です。1、2、3、4、5、6、7、と7個数字があったら、4が中央値になります。右にも左にも数字が3個ある状態です。


中央値が教えてくれるのは、日本の就労者の半分が年収396万円以下で生活しているという事です。


所得税や年金、保険料などを取られた後はどうなるでしょう。。。


https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/50743/


大体手取りは中央値の人間の場合、300万円〜340万円といった感じでしょうか。一人が生きていくにはそれほど問題ないですが、家庭を持つとなるとキツイかもしれないですね。まあ、年齢が上がればもっともらえるのでしょうが。


そういうわけもあって、GDPが高いからと言って、生活水準が高いとは言えない状況です(この話も後のエピソードで)。


さて、話を戻すと、日本は内需が潤っているので、現代社会では特に海外に目を向ける必要性がそこまでないだろうと感じる人がほとんでではないかと思います。


ただ、ここで忘れてはいけないのが、日本は資源が乏しい国ということです。


ENEOSや三井物産や出光が石油を買ってきてくれるからエネルギーが賄えて、プラスチックが作れる。


住金やJFEなどが鉄を持ってきてくれるから工場で物が作れる。


伊藤忠丸紅や西本Wismettac HDやラクト・ジャパンや三菱食品が食品を輸入してくれるから色んなものが食べられる。


(ちなみに知らなかったのですが、この「ラクト・ジャパン」という会社、歴とした日本発の会社で、乳製品輸入ではトップ。なんと創業は1998年。古参を退けてシェアトップを取るとはすごいですね!)


このように、色々とあるわけですが、これらのほとんどが、過去からの遺産です(ラクト・ジャパンは違うけどね)。いくつかの会社は統合したため新しい会社ってことになっていることが多いですが、母体は古い会社ですね。第一次、第二次、第三次、全ての産業で海外からの物資に頼っているのが現状です。


どこの国もそうじゃないかって?いえ、そんなことはありません。例えばタイなんかは、たとえ海外から食料が全く届かなかったとしても、困る国ではないです。


そして、今度は世界で売れる商品を作る。。。ソニーだの日立だの任天堂だのトヨタだの日清だの。。。家電とかゲーム機とか車だったりカップラーメンだの、あっちゃらこっちゃら。。。


こうしてバブルが起きて、崩壊して、デフレになって、インフレになって、ジェットコースター経済の果てに現在に至るわけですが、基本はこの既存する素晴らしい基盤の数々に、日本は優秀な人材を送り込んで、常に回るようにしなくてはいけません。


すでに上手くいっている事業を継続させることは、とても大事な事です。


そういうこともあり、戦後、日本の大企業は一流大学出身でよく働く人材を、良い給料を支払って集めようとし、国もそういうやり方を支援します。


教育界もそれに応えようと、エスカレーターが存在しています。


すでにエスカレーターは若干崩壊気味ではありますが、実はまだまだ機能していると言えるでしょう。私立小学校に私立中学校に偏差値の高い高校から一流大学。。。付属校なら完全なエスカレーター。


実際、大学の進学率は今や過去最高です。57%と言われています。


中には、「え、57%って案外低くない?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。そうなんです、けっこう最近までは50%切ってました。


学歴なんて…と言う人が昨今多そうなものですが、実は大学を出た方が少しでも社会に出た時に有利になるだろうと考える人が増えたとも言えますね。


それとも、社会に蔓延する不安のようなものを表した数字なのか。。。


そういうこともあり、日本の優秀な人材は、ほとんどが古くから存在する大企業に吸収されていきます。


そして、人材もそれに甘んじます。


そりゃあそうでしょう。。。なんせ安定する、お金は入る、ですからね。私は子供はいませんが、親心を想像するに、もし子供が一流大学を卒業したなら、やはり大きな博打を打つよりも安定した場所で働いてほしいと願うものなのではないでしょうか。


これだと自分で起業して、という風には、なかなかならないですよね。


しかし、資源を海外から購入し、良い製品を作って国内だけではなく国外へも売る、という日本を潤すシステムは、すでにかなり苦しい状況ではないでしょうか。



次回は、そう考える根拠について語ります。

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