言わなければならない事。

なゆお

言わなければならない事。

俺は陸上部で朝練に通っている。


だがしかし、ちゃんと行っていたのは1年の時だけで、心を入れ替えるまでは朝練に行っていなかった。


ただ、心を入れ替えたから毎日行く訳では無く、今日は、朝練に行かなかった。


登校し、校門に着いたところで、朝練に間に合わない時間だという事を確認して自転車を置き、そして朝練をやっているであろう体育館の前を通る。


…だかしかし。


「おい田中!朝練来い!」


と俺の友達である佐藤が体育館のドアから顔を出し、そう言ってきた。


「わりぃ!行かねぇ!」


と答え、下駄箱に行き、階段を登り、教室に着いた所で一安心。


だか、数分後に


「田中!おい!行くぞ!」


と佐藤が来た。


「はっ!?おい!今から行っても間に合わねぇよ!」


「とりあえず行くぞ!」


と勉強しているサボリ組を気にせず俺だけを連れていった。


そして、連れられるがままに、俺は体育館に行き、「よろしくお願いします」と挨拶をする。


そして、先生に


「すみません。遅れました」


と言う。


「は?何でよ?」


と聞かれるが、次が始まるからか、


「まぁ、いい。行け」


と言われ、スタートの合図と共に走り出した。




「はぁ…」


とメニューが終わり、呼吸を整える人やマッサージしている人を横目に、俺は遅れてしまった本数をやる準備をしていた。


そしたら佐藤が、


「俺も行くよ」


と言ってきた。


「いや、お前…」


「俺1本やってないし」


そして、スタートの合図が鳴り、走り出す。


俺より速い佐藤の後ろについて行く。


そして、1本が終わり、俺がジョグしていると佐藤もジョグをしていた。


「1本終わっただろ」


と話しかけると、


「残りも一緒に行くよ」


などと言ってきたのだ。


「いいよ」


と言っているのに、それを聞かない。


「1人だと嫌だろ」


「俺は1人が好きなんだ」


「いいから行くぞ」


言い返そうとしたが、スタートの合図が鳴ってしまったので、走り出す。


そして、遅れた分を最後まで一緒にやった。


「ついてこなくていいって言ってんのに…」


「別にいいだろ」


すると顧問が、


「早く次のメニュー行け」


と言ってくる。


それに従い、メニューの準備をしていたが、

顧問に俺に近づき、こう言ってきた。


「おい田中、佐藤にちゃんと謝ったか?」


多分、わざわざ朝練に連れてきた事を言っているようだ。


「いいえ」


と正直に話すと、顧問は


「じゃあ、今言ってこい」


と言ってきたのだ。


「分かりました」


そう返事をして、ちょうどメニューが終わった佐藤の所に行く。


「なんだ、何か言われたのか?」


どうやら何かしら言われた事には気づいているようだ。


ならば、俺がする事は1つのみ。


腰を90度に回し、言った。


「わざわざ俺の事を朝練に連れて行かせてごめん。メニューに付き合わせてごめん。そして、」


間を空け、精一杯気持ちを伝える。


「わざわざ俺の為に朝練に連れてきてくれてありがとう。メニューに付き合ってくれて、ありがとう」


そう言い終わると、佐藤は



「そんな湿っぽいこと言うなよ。友達だろ」


と言いながら嬉しそうに俺の手を握って、


「これからも頑張ろうぜ」


と言うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言わなければならない事。 なゆお @askt

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る