オカルト研究部

くまんばち

オカルト研究部【読み切り短編】




 駅のホームで待ち合わせしていたのは、同じ大学に通う女子大学生たちだった。3人は電車を待つ間、オカルト研究部での活動について熱心に話し合っていた。電車が到着すると足早に乗り込んで座席に着いた。乗客は少なく、彼女たちのわくわくする話し声だけが車内に響いた。電車は不思議な噂のある町に向かって走り出した。 


 桜井賢子さくらいかしこは不安を感じつつも、仲間と一緒にいることで、勇気を振り絞り、笑顔でチームを盛り上げた。


 石川紗希いしかわさきは冷静な判断力を発揮し、チームをリードしながら、慎重に行動を決定した。


 一方、野口謎子のぐちなぞこは霊感があり不思議なエネルギーを感じ取りながら、周囲の空気が変わるのを敏感に察知していた。


 賢子「ねえ、もし本当にお化けが出たらどうする?」  


 紗希「お化けが出たら、それはそれで大発見よ」  


 謎子「私、お化けに会えたら、霊感でコミュニケーション取ってみたいな」


 賢子「それって、お化けに連絡先聞くみたいな?『ねえ、LINE交換しない?』って」  


 紗希「賢子、それはお化けも困惑するわよ」 


 謎子「でも、お化けと友達になれたら、面白いかもね」  


 賢子「そうね、次にお化けが現れた時は、『前に連絡先交換したお化けさんですか?』って聞かなきゃ」  


 紗希「賢子のおかげで、お化けも笑ってるかもしれないわね」


 電車が進むにつれて、外の景色は徐々に不気味な雰囲気に変わっていた。車窓から見える薄明るい光や影は、物語を語りかけるようで、それは彼女たちを別の世界に誘うかのようだった。謎子は窓の外をじっと見つめながら、心の中で何かを感じ取ろうとしていた。 「ここから先は、何かが違うね」 賢子が小さな声で言った。その言葉に……。彼女たちは無言の同意をしていた。  


 電車がゆっくりと駅に滑り込むと3人は窓の外に目を凝らした。薄暗い駅には人影一つ見えず、ただ古い時計が刻む針の音だけが、静寂を破るように鳴っていた。彼女たちは駅を出て、お化けが出ると言われる町に足を踏み入れた! 

謎子は立ち止まり、

「何かが私たちを見ているよ」とつぶやいた。 

賢子は小さな声で、

「マジ? 怖いなぁ」とつぶやいた。


 紗希は冷静に、

「私たちが気をつけていれば、心配ないよ」と答えた。 


紗希は冷静な表情で周囲を警戒し、謎子は霊感を研ぎ澄ませて不思議な気配を感じ取っているようだった。


 彼女たちは足早に歩き出した。町を見渡すと、古びた建物や閉ざされた窓、さびれた看板が目に入り、人の気配は感じられず、風に揺れる古い看板から寂しい音が鳴っている。道路には薄暗い灯りが灯り、街灯の灯りは建物の輪郭を浮かび上がらせ、不気味な光景を作り出していた。 賢子は小さな声でつぶやいた。「ここって、人がいないのかしら?」 謎子は霊感を研ぎ澄ませて、不気味なエネルギーが強くなるのを感じていた。 彼女たちは団結し、手を握り合いながら歩く。 進んでいくと、途中で、小さな公園を見つけ、彼女たちは公園のベンチに腰掛け、一息つきながら、今後の計画を立てた。


 賢子「ねえ、本当にお化けが出るのかな? 私、超怖いんだけど…」


 紗希「大丈夫よ、謎子の霊感があれば、何かあってもすぐに対処できるわ」


  謎子「うん、私も何か感じるかもしれないけど、きっと大丈夫、何か面白いことが見つかるよ」


 賢子「そうね、心強いわ。でも、もし本当にお化けが出たら、どうしよう…」


 紗希「お化けが出たら、冷静に対処して、証拠を集めるわ」


 謎子「そうそう、私たちの活動はいつも、未知のものにチャレンジすることだから。怖いけど、それが魅力的なんだよね」


  賢子「うん、みんながそう言うなら、私も頑張る! でも、ちょっとだけ後ろに隠れさせてね」


 紗希「もちろん。でも大丈夫。みんな一緒なら、なんだって乗り越えられるわ」


 町の中心部に近づくにつれ、不気味な気配は一層強くなり、彼女たちは緊張を高める……。 

 そして町の中心部に差し掛かると不気味な光や影が一斉に現れ、町全体が異様な雰囲気に包まれた。


 突然! 遠くから低く呻く声や足音が聞こえ、影が動く様子が見えた。


 賢子は、驚きの声を上げ、「私、メイク大丈夫かしら?」と言葉を失った。 町の中央広場に到着した彼女たちは、目の前に広がる光景に驚愕した。そこには、沢山のお化けたちが、楽しそうに遊んでいる姿があった。 ミイラは光を反射するような輝きを放ち、ゾンビは青白い肌と赤い目を持っていた。 不気味な笑顔を浮かべながら台所に立ち、調理器具を使って料理を作っている。ミイラは巧みにナイフを使い、ゾンビは味見をしながら、「もう少し塩を加えた方がいいかもしれない」とつぶやいた。


 空気中には異様な香りが漂っている。  賢子は目を疑い、「お化けカフェ、開店予定はいつ?」とつぶやいた。 彼女たちは、木の陰に隠れ、お化けたちが気づかないように彼らの様子を確認した。 骸骨のお化けは手を取り合い、奇妙なリズムに合わせてダンスを踊っている。骸骨は軽やかなステップを踏み、重力を無視しているかのように空中を舞い上がる。 提灯お化けが楽器を演奏している間、影のお化けは、薄暗い森の中でかくれんぼをして、木々の陰や建物の隅々に姿を隠して、「見つけた!」と声をかけられると小さな影はキャッキャと笑いながら、次の隠れ場所を探し合っている。


 紗希は目を疑いながらもこの光景をスマートフォンで撮影しようとした。しかし、シャッター音がお化けに気づかれてしまうことを心配して、思わず震える手を止めた。紗希は静かにスマートフォンを下ろし、その時、周囲の雰囲気が一変し、不気味な影や音はすべて消え去った…。 空にはオレンジ色やピンク色の美しい色合いが広がり、夕暮れが静寂を包み込んだ。お化けたちも夕日を見つめ、不気味な笑みを浮かべている。


 空が徐々に暗くなり、夜が訪れた。 星が空に輝き始め、月が静かに輝く中、夜の静寂が周囲を包みこんだ。賢子は、「ねぇねぇ、知ってる? お化けって、夜中に歯磨きすると歯ブラシが逆さまになっちゃうんだって! 笑って笑って!」紗希は笑いながら、「本当に? それって怖いけど、なんかおかしくて笑える!」謎子は、「賢子ちゃん、いつも面白いね! 不安も少し吹き飛んだ気がするよ」


賢子は笑顔で、「みんなが笑ってくれると、私も元気が出るよ。一緒に楽しいこと見つけて、不安を吹き飛ばそう!」


 夜の闇に包まれた森の中に、幻想的なランタンが灯りを灯し、微かな光が木々の間を照らしている。霧が立ち込め、不気味な影が地面に揺れ動き、お化けたちは楽しみに催しを待っている。彼らの期待は空気中に漂い、不思議な雰囲気を醸し出している。この妙な光景は、お化けたちの興奮を感じさせた。


賢子は、「お化けたち、夜になるとなんでこんなに騒がしいの? もう少し静かにしてくれないかしら?」


紗希は、「うわー、お化けたちの騒音が凄いね! でもなんだか楽しくなってきた!」


謎子は、「夜のお化けの騒ぎ、なんだか興味深いね。でも、もう少し静かにしてほしいな…」


賢子は、「みんなお化けたちと一緒に楽しい夜を過ごそう! 騒がしくても、それがお化けたちの楽しみなんだよ!」


 奇怪な騒音を求めて、彼女たちの足音は、森の中に響き、奥深くに進んでいく。 賢子の髪は風になびき、紗希は目が輝き、謎子は可笑しな表情で後からふたりを見守っている。彼女たちは騒がしい場所に辿り着いた!


 そこではお化けたちが楽しみにしていた催しが行われていて、会場はカラフルな飾りや装飾が施され、不気味な雰囲気と楽しい雰囲気が交錯している。 お化けたちは歓声を上げ、チームを組んで踊りや競技に興じている。


 骸骨のお化けは軽やかに跳ねながら、骨のバトンを吸血鬼に渡して短距離走を競っている。ミイラは包帯が解けないように注意しながら、ゾンビは部位が落ちないように慎重にリレーを繰り広げている。森の中には笑い声や歓声が響き渡り、不気味な光景が広がっていた。 彼女たちは驚きと興奮で目を丸くし、お化けたちの活躍を見守っていた。  


 突然、サクラの木の上にいた黒猫が、「さあ、次は誰が勝つかな?」と声をかけると、お化けたちは益々熱くなっていく。



 一部のお化けは空中を浮遊しながら競技に参加し、別のお化けは不思議な力を使って障害物競走を繰り広げる中、音楽が響き渡り、コウモリが飛び交う。 紗希は怖がりながらもスマートフォンを取り出して…カメラを構え、コウモリが飛ぶ様子を撮影している。

 紗希「ねえ、もしお化けたちが私たちのことを見たら、どんな風に思うだろうね?」

 賢子「たぶん『運動会に彼女たちも参加させよう』って計画するよ。特技は何って?」

 謎子「私は…霊感体操でもどうかしら?霊的な力を鍛えるの」

 紗希「霊感体操って、どんなの? 空を飛ぶの?」

 賢子「それはただの飛行術じゃない? 謎子の言う霊感体操はもっと深い意味があるんじゃない?」

 謎子「正解! 実は、心を清らかに保ちながら、霊界と繋がる体操よ」

 紗希「じゃあ、私は…『幽体離脱リレー』を提案するわ!」

 賢子「それ、スタートでみんなどこにもいなくなっちゃうやつ?」

 紗希「そうそう、肉体はスタートラインに、魂だけがゴールを目指すの!」

 謎子「面白そうね。でも、誰が一番早くゴールしたか、見える人がいないと難しいわね」

 賢子「それなら、私は『霊界版じゃんけん』を提案する。負けた人は、次の運動会の企画を担当するっていう…」

 紗希「面白い! でも、じゃんけんの手はどうやって見るの?」

 謎子「それはね、心で感じるの。真の霊感を持っている人だけが勝てるゲーム」

 賢子「私たちの運動会は準備バッチリね」

 紗希「お化けに、私たちのアイデアを伝えたいわ」

 謎子「もしかしたら、彼らは聞いているかもしれないよ」  彼女たちは笑い合いながら、次の運動会で実現するかもしれない夢のようなアイデアについて話し続けた。



 朝が近づくにつれて、お化けたちは次第に静かになり、運動会も終わりを迎え、朝日が森の木々の間から優しく地面を照らし始めた。 紗希「あれ、もうこんな時間! 家に帰るの忘れてたよ。でも、こんなに楽しくて不思議な体験ができるなんて、ラッキーかもね」賢子「そうだね、家にいたら絶対にできない体験だよ。ここって、なんだか魅力があるよね」謎子「本当にそう思う。そして、こんな体験をできる友達がいるって、すごく貴重なことだよ。家に帰るのを忘れるくらい、価値のある時間を過ごせたんだから」紗希「それに、こんなに遅くまで一緒にいられるってことは、私たちの絆も強いってことだよね」賢子「うん、絶対に忘れられない夜になったね。家に帰ったら、日記に書き留めよう」謎子「いいね! 次はどんな冒険をしようかな」



 そして、朝日が昇る頃には、森の中に静寂が戻り、お化けたちも眠りについた。 お化けの姿は消え、その代わりに広がるのは沢山のお墓が並ぶ寂しげな墓地だった。 彼女たちは驚きと恐怖を感じながら、墓地を歩き始めた。石碑には古びた名前や日付が刻まれていて、不気味な雰囲気が漂っている。賢子「なーんかお腹空いてきたなぁ」紗希「それじゃあ、朝ごはん食べて、のんびりしよう」謎子「いいね。朝ごはんは何にしようかな? みんな好きなのにしよう」賢子「私はフレンチトーストが大好き」紗希「私はシンプルなトーストと目玉焼きが好きかな」謎子「私はヘルシーなヨーグルトとフルーツが好きだな」賢子「それぞれ好みが違うって面白いね!」


 鳥がさえずり始めて、墓地の静けさの中に溶け込んでいった。彼女たちは肩を寄せ合いながら、静かな墓地を歩いた。



 紗希「パンもいいけど、やっぱり私はラーメンが食べたいな、熱々のスープに、ちょっと辛いチャーシューが乗ってるやつ」

 賢子「ラーメンもいいけど、私はお寿司が食べたい! 特にサーモンとアボカドのロール。海の味が恋しいな」

 謎子「二人ともいいね! でも私は、甘いものが食べたい気分。パンケーキにたっぷりのメープルシロップとバター、それにフルーツも乗せたい!」

 紗希「ああ、それ聞いただけでよだれが…。でも、全部美味しそうだね!」

 賢子「そうだね、もしかしたら、ラーメンを食べた後にお寿司、そしてデザートにパンケーキっていうのはどう?」

 謎子「めっちゃいいアイデア! それなら、お腹いっぱいになるね」 

 


 突然! 一つの墓石が不思議な光りを放ち、その中から一体のお化けが現れた。お化けは自分の名前を言った後で、3人に微笑みかけ、

「わしはソウルフードが食べたい」と言った。

 彼女たちは、にっこり笑って、

墓守はかもりさん、一緒に朝ごはん食べませんか?」




 完


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