次こそはソロで⋯⋯
初めてクエストを達成した俺は充実感を感じつつも、少し憂いを帯びた雰囲気を
「おかえりなさいませ、アンソニー様」
「ああ、ただいまイリス」
「本日はいかがでしたか?」
「なんとか無事にクエストは達成できたよ。⋯⋯クエストは、ね」
俺はなんとも言えない表情でイリスに答える。
「言い方が気になりますね。何か腑に落ちないことでも?」
「⋯⋯聞いてくれるか?」
「ええ、当然お伺いいたします」
俺の微妙な心情を察してくれたイリスが話を聞いてくれるようだ。
優しいなあ、イリスは。
「俺が冒険者になりたい理由について説明した時のこと覚えてる?」
「はい、『依頼を次々とこなす謎の新人ソロ冒険者がかっこいい』から、でしたか?」
「──流石イリスっ! 俺がやりたかったのはそれなんだよッ! でも、今日は邪魔が入ってソロでクエストを受けられなかった⋯⋯」
そう、俺は冒険者として『依頼をこなす』という目標は達成できたが、『謎のソロ冒険者』という部分を達成することができなかった。
「つまり、今日は誰かと一緒にクエストを受けられた⋯⋯ということですね」
「ああ、ソフィーという冒険者にライバル宣言されて、なぜか一緒にクエストを受けることになったんだ! 酷い話だろッ!?」
冒険者ギルドでは本人もいたしルークさんや周りの目もあるため、不満をぶつけるわけにはいかなかったが、やはりソロでクエストを受けられなかったのは悔しい。
「まあまあ、落ち着いてください。ほら、飴でも舐めて」
「ああ、そうだな⋯⋯ぱくっ。⋯⋯じゃない! 子供扱いをするな!」
イリスが飴玉を差し出してきたので、俺はそれを口に含みながら子供扱いされたことに抗議する。
「いや、どう考えても子供ですよね⋯⋯」
「そんなことよりッ! あの女⋯⋯ソフィーが俺のソロ冒険者ライフの邪魔をしたんだ! 許せないッ!」
「かしこまりました。では私がその女を暗殺してまいりましょう」
「⋯⋯ちょっと待て、どうしてそうなる!? 急に
なんなのこのメイド、本当に
「しかし、アンソニー様が邪魔だと⋯⋯。邪魔者は排除すべきでは?」
「確かに、俺がやりたいことはうまくいかなかったが⋯⋯そこまでする必要はない」
「かしこまりました。アンソニー様の仰せのままに」
「ああ。それに、俺と同年代のAランク冒険者の実力を間近で見ることができたことだしな」
正直、最初からソロ冒険者として活動できなかったことは残念でならないが、同年代の実力者を
「⋯⋯まさか、そのソフィーという女はAランク冒険者で、アンソニー様と同じくらいの年齢だと?」
「そのまさかだ。俺も流石に、同年代で高ランクの冒険者がいるとは思わなかった」
「なるほど⋯⋯確かにAランク冒険者ともなれば暗殺するのも少し難しいですね」
「おい、暗殺の話はもう無くなったはずだろッ!? 仮にできたとしてもやめてよねッ!?」
Aランク冒険者の暗殺が
「⋯⋯冗談です」
「だよね⋯⋯ははは⋯⋯」
「うふふ⋯⋯」
目が笑っていないが、本人が冗談だと言っていることだし信じることにしよう。
「しかしアンソニー様、普段はやりたいことがあれば断固として実行されますのに、わざわざ同行を許されたのは珍しいですね」
「それは⋯⋯ルークさんというソフィーのパーティーメンバーと、アリシアさんというギルドの受付嬢からの提案もあって断りきれなかったんだ⋯⋯」
「なるほど、事情は理解いたしました」
「ルークさんはソフィーの暴走を止めてくれるし、今後冒険者と活動していく中でお世話になることもあるだろうしな。それに、受付嬢のアドバイスも考慮すべきだろう」
「賢明な判断かと思われます。⋯⋯? ソフィーという少女に、保護者的存在がいるのですね?」
イリスは、ソフィーに保護者的存在がいると知って何やら思案顔をしている。
なぜだろう、嫌な予感がする⋯⋯。
「ああ⋯⋯それがどうした?」
「アンソニー様、私も一緒に冒険者として同行させていただいても?」
ほらきたあああッ!?
いや、保護者同伴で冒険者なんて絶対嫌だからね!?
「⋯⋯やめてくれ」
「アンソニー様はまだ子供です。やはりソフィーという少女と同じように保護者的存在が必要では?」
「イリス⋯⋯あまり俺を失望させないでくれよ?」
俺は本気で怒っているように、少し厳しい口調で言った。
「──っ、失礼いたしましたッ。危うくアンソニー様の楽しみを奪うところでした⋯⋯。私としたことが」
何かがおかしい⋯⋯原作のイリスはこんなキャラでは無かったはずだ。
俺が本来のアンソニーとは違う行動をしているからか?
⋯⋯いや、気にするだけ無駄か。
「いい。わかってくれたのなら問題ない。明日からはソロでクエストを受ける⋯⋯必ずだ」
「⋯⋯かしこまりました。今日はもう遅いことですし、お風呂とお食事を済ませてお休みになってください。準備をしてまいります」
そう言ってイリスが俺のために風呂と食事の準備をしようと歩き始めた。
「⋯⋯イリス、愚痴に付き合ってくれてありがとう。また、聞いてくれるか?」
「──っ、アンソニー様⋯⋯それは愚問です」
「そうか」
なぜかわからないが、立ち去るイリスに声をかけるべきだと思った。
だが、彼女の表情を見れば、それは正解だったようだ。
風呂と食事を済ませた俺は、寝る前に自室で考え事をしていた。
「ソフィー、か」
原作にそんなキャラはいなかったはずだが、俺は似たような特徴と名前のキャラを知っているような気がする⋯⋯。
1巻分の知識しかないが、学園に通いながら冒険者になる展開については覚えがある。しかし、在学中に冒険者として活動する中ではソフィーというキャラは登場しない。
おそらく、俺が本来学園に通う年齢よりも早く冒険者になったことが影響しているのだろう。
「──面白いな」
もちろん、ソロで冒険者をスタートできなかったことについては悔しいが、原作に無かったキャラとの出会いがあった。正直、今の段階でこれがどう転ぶかはわからないが、新しい展開が生まれていることは間違い無い。
この先、今回のように俺が知らない展開が待っていると考えると、わくわくが止まらないじゃないか。
「ふはっ⋯⋯ハッハッハッハッハ」
はは、今日は色々あってほどよく疲れているため、よく眠れそうだ。
「明日からは必ずソロでクエストを受ける⋯⋯必ずな」
俺は再度ソロでクエストを受ける決意を固め、ベッドに横たわり深い眠りについた。
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