第16話 邪竜の瘴気

「大穴の正体は邪竜の巣なのです。」

 若き女王シャルロットは、深刻な顔で話を続けた。

「最近大穴の近くに強い魔物がいるのも、きっと邪竜の瘴気の影響です。」

「瘴気?」

「瘴気は弱い魔物には即死の猛毒です。しかし、瘴気はそれに耐えられる魔物を呼び寄せ、寄ってきた魔物をさらに強化するのです。」

「で、でも生贄はいない。それなら邪竜は目覚めないのでは?」

「先ほど私を連れて行こうとした男は、仮に生贄がいなくとも、一か月あれば目覚めると言っていました。民に逃げるよう言わなければ。」

「諦めるのですか?」

「相手は神代の魔物、今の人々で倒せるはずがありません!」

「戦わなければ勝つことは出来ない!」

そうだ。一か月あれば準備のしようはある。

「わかりました!民たちに決戦だと伝えましょう!」


 次の日、町中大騒ぎだ。武器屋は剣や鎧を次々と王城に運び込み、冒険者や兵士たちは近衛騎士団と共に魔物を討伐しに、大穴付近まで行っている。料理人は彼らへの差し入れを作り、薬屋は解毒ポーションや傷薬を調合している。

オレとアリスは本来の任務をこなしに、大穴付近で強化ワイバーンと戦っている。オレがワイバーンの羽に弾丸で穴をあけ、墜落してきたところをアリスが一刀両断。ぴったりと息の合った連携だ。

「まさか邪竜の巣だったなんて...本当に衝撃ね。」

「ああ、そうだな。しかし、こんな状況なのに一人も逃げないなんて、女王の人望がうかがえるな。」

あと一週間、戦闘にでる者たちの装備はすべて揃い、あとは作戦を立てるだけだ。こんな総力戦の状況で、オレも手の内を見せたくないなんて言っていられない。

女王に相談して、王都の外壁にレールガンの設置を許可された。生成は一日三回が限界なので、すでに収納している五門とあわせて、二十六門、あとは弾丸と電力バッテリーを作る魔力も必要なので、実質二十門が限界だ。

毎日三門の生成をした後、残った魔力と時間で、スキルの派生進化をさせるべく、狩りに出る。高レベルモンスターのみを倒しているおかげで、新たなスキルをどんどんと覚えていった。

弾道演算が物理演算に、遠視スキルが千里眼に、そして二つが統合され、千里の魔眼ラプラスの悪魔へと統合進化した。この段階では、視界に入るものすべての予測が可能であり、未来視に近いことができる。しかしさすがに限度はあるようで、直近十秒ほどまでしか見ることは出来ない。

もうできることはすべてやった。明日、オレたちと邪竜との決着がつく。

絶対に、負けられない。

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