第17話 邪竜決戦/1

 邪竜。神代に生まれ、地上を蹂躙した破壊の化身。やがて永い眠りにつき、人々の記憶から忘れ去られた。ヤツが完全に解き放たれ、王都で食い止められなければ、大陸中が焦土と化すだろう。女神の護りアイギスをはじめとするオレのすべてを持って倒さなければならない。

大穴からは今までとは比較にならないほど、禍々しい瘴気があふれ出している。そろそろ復活だ。

作戦は、大穴から邪竜が上がってきたところをレールガンで弱らせる。次に冒険者と騎士たちで近接戦闘、最後に再度レールガンで同時に頭をすべて吹き飛ばす。

女王が各地に応援要請をしているので、腕の立つ戦士たちもたくさん集まっている。だがロレーヌ家領地の騎士たちが来たという話は聞いていない。アルトたちに何かあったのだろうか。―――いや、もう考えている時間はない。とその時、地面が大きく揺れ始め、大穴から瘴気がますます強く噴き出してきた。決戦が、始まる。


 一週間前、ロレーヌ家領地にて。

「なぜです父上!今すぐ王都に加勢にいくべきでしょう!」

「ならん!我々は総力戦には参戦しない!」

今僕――アルト・ロレーヌの前にいる男は、僕の父であるグラム・ロレーヌだ。王都から、邪竜討伐の応援要請が少し前に届いている。だが、あろうことか僕の父親はその要請を蹴ろうというのだ。

「私たちは現在、領地の魔物の処理で手いっぱいだ。そんなことをする余裕などない。」

「......ならば、僕一人で向かいます。」

「待て、アルト!」

僕は屋敷を飛び出し馬に乗ると、王都に向けて全力で走った。ロレーヌ家次期当主としてというのもあるが、作戦にあった〈電気を用いた大砲〉。ソラトが王都で戦うということだ。何としても親友ソラトの危機に駆け付けなければならない。

そして領地の境で、待ち伏せていた追手の騎士たちと遭遇した。

「アルト様、どうかお戻りください。我々はここを通すわけにはいきません。」

「押し通る!」

凄まじい剣戟の音が鳴り響く。

剣の腕だけで言えば僕の方が上だが、こちら一人に対し、あちらは十人もいる。三日間寝ずに馬で走った消耗もあろうか、じりじりと押されていく。

「グラム様の元に帰っていただく!アルト様、御免!」

「そこをどけぇッ!!!」

刀身が蒼く燃え盛り、騎士たちを吹き飛ばす。僕が学園でソラトと共に修練し続けた新技、天叢雲あまのむらくも。名の由来は、ソラトの故郷に伝わる神話の剣の名らしい。

騎士たちが再起不能であることを確認すると、再び馬で駆け出した。

―――待っててくれよ、ソラト。

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