41話・学園祭
隣街の女子高は二つ目の駅で電車を降りれば、すぐ目の前に広大な敷地に建てられた宮殿のような建物が視界に入り込む。
開かれた正門から敷地内に足を踏み入れると、すぐに屋台がずらりと立ち並ぶ。
既に屋台には行列が出来ており、大勢の学生や一般の参加者で賑わっていた。
カラフルな風船や折り紙や、ようこそと文字の書かれたパネルが華やかに飾られている。
ウサギや熊やトラや犬と、様々な着ぐるみが正門前に佇み参加者を出迎えている。
騒がしく華やかな学園敷地内に、険しい顔をした女子生徒を引き連れて、俺は一条や理人や妙子と共に足を踏み入れた。
「電車を降りれば、お別れだと思っていたんだけど……」
女子生徒の霊は行動範囲が指定されているわけではない。
行きたいと思う場所に移動することが出来るため、女子生徒がその気になれば、俺の寝室まで来ることも可能なんだと思う。
「考え方が甘い」
淡々とした口調で呟かれた言葉に苦笑する。
先の行動が全く読めない女子生徒の表情は相変わらず無表情。
鋭い視線を向けられて、腰が自然と引けてしまう。
「小学生の頃、無視したのは謝ります。ごめんなさい」
女子生徒がついてくる理由はなんなのか。やはり、小学校の頃に女子生徒が声をかけてくれたのに、なんの反応も示さなかったことを気にしているのだろうか。
深々と頭を下げて謝罪をする。
「それは別に……どうでもいい」
即答だった。
過去の出来事に対して不満を抱いているのだと思えば、無視したことは気にしていないようで、女子生徒がついてくる理由が分からなければ対策のしようがない。
「俺のせいで成仏することが出来ないでいるとか?」
まさか、そんなことはないだろうけど、問いかけてみれば
「まぁ……」
まさかの肯定だった。
否定することなく言葉を濁した女子生徒の霊は小さく首を縦にふる。
女子生徒の霊が俺の背後に憑いてからというもの、妙子は巻き込まれたくはない一心で無言を貫き通している。
決して俺の方を見ようとはしない。
一条や理人に積極的に声をかけている。
その表情は笑顔を浮かべているものの、口元は引き
理人や一条も俺の雰囲気や独り言から、側に良くないものがいるんだろうなと、何となく察しているようで
「大丈夫?」
理人が心配をして声をかけてくれる。
「どうだろう。分からない」
痩せ我慢をして大丈夫と答えたいところだけど、正直分からない。
「もしかしたら、家まで憑いてくるかもしれない」
今後の恐怖と不安を口にすれば
「本人の前でよく言えたわね」
すかさず女子生徒の霊に声をかけられる。
「ごめんなさい」
気分を害してしまっただろうかと不安を抱き、すぐに謝罪を口にすれば
「まぁ、気にしてないけど」
女子生徒の考えが分からない。
淡々とした口調で、気にしていないと口にする。
「付いていくのは間違っていないし」
ポツリと小さな声で呟かれた言葉を、危うく聞き逃すところだった。
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