手痛い停滞

小狸

短編

 誹謗中傷してきた者を開示請求してから、2週間が過ぎた。


 私は、小説を書くことができなくなっていた。


 いや、正確に言うのなら――納得のいく小説を、擱筆することができなくなったというべきか。


 原因は瞭然はっきりしている。


 くだんの誹謗中傷である。


 また私が陰鬱な私小説を書けば、世の中の醜い部分を凝縮したような小説を書けば、あらぬ方向から誹謗中傷が飛んで来るのではないか――と、危惧してしまうのである。


 しかも無意識の中で、だ。


 いくら気にしないとは言っても、嫌なことを言われた記憶、嫌なことを見た記憶というのは、頭の中に残り続けている。


 その結果、私は限界まで追い詰められたのだ。


 そりゃあ、小説に対しての認識が変わって、当然である。


 そして――今まで通り書けなくなったからといって、別段作風が前向きになるかといえば、そうではないのが、私である。


 相変わらず陰鬱な私小説を書いている。否、より陰鬱さに磨きが掛かっていると、知人に言われたような覚えがある。


 いや、私だって本当は、楽しい物語を書きたい。


 そういう気持ちだってあるのだ。


 しかし、私の人生の上での「辛い」記憶が、「楽しい」記憶を圧倒的に凌駕しているのである。


 だから、人生は苦しいもので、辛いもので、痛いものだと――私は自覚している。


 前回だって、ただ趣味で書いていた小説に粘着されて、開示請求にまで発展してしまった。


 何をやるにつけても、まず「上手く行く」ということがないのである。


 そういう星の下に、私は生まれているのだ、と。


 今は、そう理解することにしている。


 所謂いわゆる諦めであるが、そうでもしなければ、この令和れいわの世を生きてはいけない。


 書きたいのに、書けない。


 そんな状況が、私を苦しめる。


 私の小説を楽しみにしてくださっている読者の方――果たしてそんな方がいればの話だが――には申し訳ないが、しばらくは、小説を投稿しようとも、なかなかどうして、「ぎこちない」ものになってしまうと思う。


 無意識を意識的に変えようとするのだから、当たり前なのだが――それは、読んで下さる読者の皆さまには、関係の無いことである。


 私も最大と最高を尽くす。


 こんな私ではあるけれど、今まで通り小説を読んでいただけると。


 とても嬉しい。




《Stringent stagnation》 is the END.

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手痛い停滞 小狸 @segen_gen

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