第3話  大地の魔法使いの姫

「カタリナ・アシス……来なさい」


 ラルフォンは、小さな声でテラスから手招きをして呼んだ。

 普通では聞こえない距離だ。

 でもカタリナには、十分に聞こえる。


「は~~い」


 カタリナは、ドレスの泥をはたいて大きくジャンプして、二回の兄と姉のいるテラスまでいった。


「今度は何をしようとしていたの?」


「ソフィーが言ってたのですわ。中庭の花壇に虫が大量発生したと……だから、あたくしは害虫駆除のために虫を脅かそうと思いましたの」


 レジーナは笑って、カタリナの頭に手を乗せながら言った。


「それで? 花壇も吹き飛ばしたわけ? あなたの魔法の力には毎度、毎度驚かされるわね」


「笑い事ではないぞ、レジーナ。まだ13歳のヤンチャ姫で通っているが姫の美しさは我らの父上にそっくりではないか。今に求婚者が列を作るだろう。お前ではないがカタリナの結婚でも、わたしは悩むだろうな」


 ラルフォンは今日一番の大きな溜息をついた。「は~~」


 長身で細身で、女だてらに騎士の格好をしているレジーナは、好きでこの格好をしていた。

 訳はあるのだが、本人は誰にも打ち明けていない。世話役のシグリット夫人にさえもだ。見事なはちみつ色の金髪を頭の上部で一つに括っていた。


 13歳のカタリナは、美しい顔立ちの上、まだ小柄だが、出るところは出て、締まるところは締まっているという身体つきで、将来が今から楽しみなのだ。

 だが、ラルフォンを悩ませていることに、どうやら父譲りの魔法の使い手なのだ。しかも何故か大地にだけ特化している。


 カタリナの母親は、ラルフォンやレジーナと違っていた。

 ゼフラード王が晩年にリーフス王国の王女と結婚したのだ。

 だが、カタリナを生んで亡くなった。

 それで余計に、レジーナやラルフォンが目をかけて愛してきたが、幼い頃から不思議な子であった。


 いつの頃か『ポポロン』というものと話していた。

 それは誰かと尋ねると、「ポポロンはね、あたくしを祝福してくれる大地の精霊ですわ。心臓にいるの。ずっと一緒に大きくなったのですよ」


 だそうだ。

 大地の使い手だから、花を綺麗に咲かせられることが出来た。

 カタリナの作る薬草は、薬効が効きすぎる。

 身体の中に精霊が宿っているので、身体能力もすごい。

 声にも魔力があった。

 カタリナがを歌うと、井戸が枯れる、草木の異常成長など、とんでもないことが起きてしまうので、王宮内では歌うことは禁止とされていた。

 


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