第67話魔力を再認識しました・・・

 ルスカ・カリーナ討伐から早数ヶ月、定期的に帝都から出て北東・・・大山脈手前の小森地帯(特に地図での名称無し)を散策。

 小規模な狩場で、総合学院生の実地訓練にも使われてるようなのです。

 カッパー~シルバーランク帯の活動区域ならとミリー達も素直に向かわせてくれたのですが、心配性なのは相変わらずなのです。

(お主が心配ばかりさせることを何かしたのではないかの?)

(そんなことはないのです、大型のゴーレムやらムカデに鮫頭のイカは私が原因では・・・・・・最後のが少し怪しいだけで、リアは今日もフレイアにいるです?)

 リアにそう聞きつつディオールの杖を転送し、触媒結晶に魔力を流し術式を思い浮かべながら・・・

「えーと・・・炎・・・槍・・・穿て、フレア・ラ・・・」

(しかしながら、お主が魔導術を正攻法で使えるようになるのは果たしていつ頃になるのじゃろうな?)

 宙に浮かんでいた魔導陣が霧散し、魔導術が不発してしまったのです・・・魔力が使えるようになるのと魔導術を発動させるのはまた違うのです。

(お主も諦めてパンケーキでも共に食そうぞ、わざわざ魔力操作で発動させる意味があるのかのう・・・今更じゃろうて)

「あったら使ってみたいものなのですー」

 声を発したと同時に鳥型の魔物が木々をかき分け、鉤爪で襲いかかってくる・・・騒がしくしたのは謝りますが、正当防衛を行使するのです。

 ブォォォンッ

(結局いつもの方法で攻撃しおったな・・・)

(ダメです・・・咄嗟の状況だと無意識でこっちが出るのです、ミリーはこれを3つ4つ同時に思考処理とか、正気の沙汰ではないのです)

(多分、向こうもそう思っておるぞ・・・今日もパンケーキがうまいのじゃ)

(アイリに毎日、ステーキ食べれるだけの報奨金を出したあの皇帝も認めてあげてもいいのだわ!)

 レイちゃんが肉を食べてるのなら姉様もいるみたいなのです、魔力の供給で食べる必要はないと聞いたのですが。

(契約者の魔力がなければ存在維持もできないのと一緒にされても困るのだわ!アイリの魔力も共有できるだけで、使わなくても外気魔力程度で十分なのだわ!)

(聞こえているのである、我も魔力回路が使えてた頃は維持できてたのである・・・)

 旧魔王に利用され抵抗できてたところを過剰に魔力を使われ暴走、からのリアによる次元断裂で完全に逝った・・・不憫な古龍なのです。

「聖属性の魔槍とかなかなかのロマンなのです・・・一旦休憩なのです」


 それはそれとして、身体の動作に違和感は感じなくなったのはいいのですが・・・反面、記憶に関しては随所薄弱な気がしなくもないのです。

(その違和感も転生の宿命じゃな、お主の場合は別の影響もあるがの)

(なるほど・・・?転生すると違和感はあるものなのです?)

(肉体による体感と魂の記憶のズレで生じる・・・性別も違えば当然ではあるのじゃが、アストラルクオリアで波長が肉体側に引っ張られないのが要因だったのじゃろう)

 クオリアの概念は記憶にあるのですが、付け足されているアストラル部分が謎なのです・・・

(リアは以前コーザルクオリアに移行したと言ってたですね、じゃあ今は肉体と波長が合っている・・・という認識でいいのです?)

(うむ、本来なら転生した時点で肉体側の波長に寄っていき、同調していく事で違和感は自然に無くなるが・・・・・・お主はその期間が長かっただけなのじゃろう」

 串焼きをいつも通り齧りながら話を聞き、私が魔導術をうまく使えないのはやはり魔力との相性が悪いのかと考え・・・・・・

(意思の問題じゃな、生来、お主の肉体の持つ魔力と性質自体はミリーが発動させた国級レベルの魔導術も容易であろうて・・・複雑な思考への拒否反応といった深層意識なのじゃろう)

(本音は難しい事をしたくないと思っていた・・・ということです?)

(自身では気付けない本性という事じゃ、ここぞという時にレーザーブレードが出てるのがいい例じゃろう)

(あの鳥型も群衆体系列のように感じたのですが、何故単体で攻撃仕掛けてくるのです・・・)

(ふむ、群れに馴染まずはぐれたボッチ・・・その状態で生き抜いたのが強靭体になるということじゃろう)



 リア達と念話し続けるのと練習を共々切り上げ、帝都へと戻り通行人がいないのを確認しつつ、光学迷彩を解除するのです。

 宿横の通りを歩きフレイアに向かおうとした所、配達帰りであろうフィアさんを見かけ声を掛けてみるのです。

「こんにちわです、今帰りなのです?」

「フィオナちゃんか、お出掛けかな・・・いや、その様子は今帰りかい?」

「これからフレイアにお邪魔しようかと、少々フィアさんにお聞きしたいのですが・・・魔力での身体強化ってどうやればいいです?」

 魔導術を発動させるのに何が必要か、当然ながら魔力なのです・・・まず私が魔力の使い方に慣れる、という単純な所から見直してみるのです。

「アイギスで魔力を遮断されてる僕にわざわざ聞かなくても、身体強化の部分は一応可能とはいえ・・・友人やお姉さんには聞いてみないのかい?」

「今更何を言っておりますの・・・というミリーの反応が目に見えすぎてですね、よかったらでいいのですが」

 もちろん近接組に聞くのが一番なので姉様でもいいのですが、明らかに直感タイプ・・・・・・返ってくる答えはきっと、こうやってこうだよ!と予知能力がなくても分かる未来なのです。

「身体を動かす感覚に魔力を流す・・・と、主観的にはこんな説明になるんだけれど、伝わるかな?」

「ふんふん・・・いわゆる体性神経に魔力を乗せると、姉様達の視力がいいのもそれを無意識でやってるのですかね・・・」

「たいせいしんけい・・・そういう言い方もあるのか、剣士が強いと言われる所以だね・・・ただ、色んな武器を持ってる冒険者達を見てると、純粋な剣士が少なくなっている気もするかな」

 身体表面にざっくりと流すのではなく、意識的に動かす感覚で魔力を流す・・・これなら私でも簡単なので・・・・・・!?

「うっ!?・・・い・・・痛い・・・!?」

 全身に激痛が走っていくのです・・・これは流石に予定外なのです!

「ちょっ・・・だ、大丈夫かい?魔力が通り過ぎたのか・・・?」

(今までにない危機感がお主から発せられたと思ったら・・・何をしておるのじゃお主は?)

(ううぅ・・・身体の神経に魔力を通して強化を試みたのですが・・・・・・激痛が凄い痛いのです!)

(頭痛が痛いみたいになっておるぞ、それこそ単純な事じゃ・・・その身体は本来どうなってしまうはずだったのか?)

 魔力の性質や龍族の血で・・・そうだったのです、だとしたら魔力が使えるようになっても生きているのはどういう・・・

(十数年である程度耐性が付いたといったところかの、生まれた直後から最小限で抑えてたのが幸いしたとはいえ・・・魔力をより深く体内で集中させるには肉体の許容範囲を超えるのじゃろう)

「魔導師と剣士の魔力の使い方の違いを・・・こんな形で体感するとは思わなかったのです」

「自分の魔力で痛がってる人は初めて見たけどね、そんなこともあるのか」

 痛みによるショックでしばらくの間、魔力恐怖症気味になる私なのでした。

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