第2話 パンのみにて生きるにあらず

  第2話 パンのみにて生きるにあらず


  人間は飯だけ食えれば生きている・存在している、というわけではありません。人それぞれの個性・文化というものがあってこそ、一人の人間として本当に存在しているといえるのではないでしょうか。


  大学(や高校)とは、勉強やスポーツばかりする場ではありません。文化力を涵養する全人教育の一環として、各種文化クラブや同好会があり、文化祭という催しも大々的に行われるのです。

  大学日本拳法にしても、毎日、殴り合いをすることばかり(が楽しいということ)ではありません。

  みんなで集まって、ワイワイガヤガヤ、ああでもないこうでもないと、くだらない話をして騒いでいるのも、大学日本拳法(部としての活動)の一部です。そして、そんな日常を通じて各大学日本拳法部独自の文化というものがあってこそ、確かに(部として・部員として)存在しているといえるのです。


  50年前の関東では、ピラニア軍団の日大、貴公子の○○大、等々、企業文化ならぬ、各大学日本拳法部独特の文化が感じられたものでした。個人においても、拳法以外で強烈な存在感を地味に放つ人というはたくさんいました(今後、警視庁や自衛隊、文部科学省の天下りが入り込んでくるにつれ、本来の文化力は薄まっていくでしょう。上からのお仕着せ、見かけだけの「健全な」武道化していく)。

  

  私の大学時代ですが、新人戦で一回試合に出た以外、4年間、選手として試合に出たことがない後輩がいましたが、彼は2年生・3年生になっても1年生と一緒に練習の前後にタオルやバンデージを干したり、畳んだりという雑用をしたりといった彼なりの活動の仕方によって、その柔和な笑顔と共に彼独自の存在感がありました。

  彼が彼である、という証左・存在意義・存在証明があったのですが、広義でいえば彼独自の文化力といえるものがある、ということなのです。

<単なる拳法バカではない>


毎度のことですが;


  ○ YouTube「2017全日本学生拳法個人選手権大会 女子の部準決勝戦 岡崎VS谷」      

     https://www.youtube.com/watch?v=O7kumnslLns

  ○ 2018 Kempo 第31回全日本拳法女子個人決勝戦 坂本佳乃子(立命館大学)vs谷南奈実(同志社大学) https://www.youtube.com/watch?v=DI-HxBtlxxg


  彼女たち(の戦いぶり)には、単に拳法が強いということにプラス、その人間性・人間力・人間としての匂い → 個性・文化力が強く感じられます。ただの殴り合い人間ではないのです。


  確かにこれは、大学から日本拳法をやり始めた人間にはマネできないというか、追いつけないことではあります。

  しかし、試合での勝ち負けは別にして、その存在感を示すのは、なんといってもその人の集中力です。拳法をやる時の集中力もありますし、私の後輩のように、朝早くから部室に来て雑用をするといった生活習慣の中での集中力というものも又、その人の文化(力)の涵養に大いに寄与するのではないでしょうか。

  そして、警視庁や自衛隊の、技術や道具としての日本拳法・自分たちの飯の種としての日本拳法ではなく、文化としての日本拳法を追求する私たち大学日本拳法人は、人にでも事象であっても、形而上的世界や文化という側面を見逃してはいけないのではないでしょうか。


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