八日目

「高田チームと戸田チームの試合を始めます。」

体育の授業は、少しばかり苦手意識がある。

「おかしな失敗しないように頑張りたい。でも、バスケットボールって重いんだよね…… 突き指とか大丈夫かな。」

私たちのチームのジャンプボールは高田くんがやるらしい。

「高田、俺は最初から全力だ。」

戸田さんが高田くんと向き合う。

「高田! 私より身長が高いんだから、失敗した ら馬鹿にしてやるからね!」

橋川さんは盛り上がっているのか、高田くんのことを煽る。

「うるさい!」

好きな人の笑顔は、見ていると癒される。

「高田くん!」

勢いに押され、気づいた時には口が動いていた。

「どうしました?」

私の目を見る高田くんは、笑顔を殺していた。

「頑張って!」

高田くんの甘い苦笑いと、橋川さんの笑い声を微かに感じた。

「が、頑張ります!」

その瞬間、笛がなった。

宙を舞うバスケットボールを目で追う二人。

「もらった!」

先にバスケットボールに手をつけたのは、戸田くんだった。

高田くんの、ジャンプボールへの緊張を増幅させていた人物。

この時はそんなことを考える暇もなく、私の重い足を走らせた。

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