ざまぁ確定の悪役貴族に転生した俺が、最推しのラスボスヒロインと結婚することになったので原作知識をフル活用して幸せになります~なお、嫁を馬鹿にした勇者は俺の敵じゃありません~
東田 悠里
1章
第1話 推しとの出会い……と同時に結婚
「アイク様……私をお助け頂けないでしょうか……?」
目の前には眼鏡をかけたボロボロの姿の美少女が目の前に立っている。
身に纏う白いドレスの素材は明らかに良い素材を使っているのに、ドレスの裾や袖には汚れが目立ち、スカートから覗かせる細い足首には青あざができていた。一見するとみっともないと嫌悪する人もいるだろう。
だが、美少女はそんなみっともなさが打ち消されてしまうくらいの美形をしている。
ボブヘアーの銀髪に宝石のような赤い瞳。顔の1パーツ1パーツが整いすぎて驚きを隠せない。しかも俺の性癖にぶち当たりすぎてもいて、正直に申し上げるならドがつくほどのタイプな見た目。
そうまるで……さっきまでやっていたゲームの敵ヒロイン――ルナ・オルハインのような。
「たった3年で構わないのです。私を愛してほしいなんてワガママも言いません。アイク・ハンバルク公爵様と改めて婚約関係を結んでほしいのです。それが偽りのものでもか構いません。もう私はあなた以外に頼れる方がいないのです」
「え?」
俺はこの展開に見覚えがあった。
俺がさっきまで恋愛シュミレーションゲーム、フォーチュンラバーの過去回想シーン。ラスボスであるルナ・オルハインがどうして闇堕ちしたのか語られている一幕。全攻略ルートで必ず出てくるエピソードだから嫌でも記憶に残っている。なんなら、さっきまでやっていた。
この悲劇の令嬢は本編終盤で魔王の力を手に入れたことにより、あらゆる人から見捨てられ、最終的には人類と敵対してしまう。その結果はどんなヒロインのルートを辿ったとしても、最終的に勇者である主人公と攻略中ヒロインとの愛の力(笑)で倒されてしまう。
「今、アイク・ハンバルクと婚約関係を結んでほしいって言った?」
「は、はい。私、ルナ・オルハインは・ハンバルク公爵様と婚約関係と結びたいのです……!」
なんてこった……! 生ルナとの出会いに興奮する前に訪れる絶望。
俺は大嫌いなアイク・ハンバルクに転生したってこと? たしかに誰しも異世界転生は夢を見たことがあるけど、それは聞いてない。
だってアイク・ハンバルクって、主人公にどんなルートでもざまぁされて処刑されるフォーチュンラバーで1.2位を争うクズで有名なキャラクターだよ?
女癖がとにかく悪い。加えて権力を振りかざしては傲慢な性格。おまけに体型はしっかりとデブでだらしない。
そして本編では、
『メスは黙っておっぱい捧げればいいんだよぉ……!』
どのヒロインにでも関係なくこのセリフを言い放つ。
全ルートのCGをフルコンプした俺でさえ、一番嫌いなキャラクターなのに……。
「その対価も……い、今は払えないですが、いずれ将来、必ず対価をお支払い致します。ルナ・オルハインの名に誓います。ですので……私をお助け頂けないでしょうか……? どうかお願い致します。アイク・ハンバルク公爵様」
ルナは拒否されることに怯えているようだった。
正直、ルナのビジュアルはめちゃくちゃ好きだ。たまにあるだろう? なんでこいつが攻略キャラじゃないんだ!! と思うことが。
俺にとってルナがそうだった。どれだけ望もうと本編では決して攻略ルートに入ることはない。だってルナはフォーチュンラバーのラスボスだから。
そのルナが俺に対して求婚をしている。勝ち確定だろ、こんな展開。
「あぁ、もちろん。構わないさ」
「そうですか……ダメですよね。申し訳ありません……え?」
「正式に結婚しよう。ルナ。今まで大変だったね」
「本当ですか……? 私、アイク様は昔と違って冷たく接していて……私のことを嫌いだと思っていたのに。それなのに、こんな私を受けて入れて頂けるなんて……! 本当は私、アイク様のことをお慕いしていたんです……!」
「構わない。好きなだけ一緒にいてくれ」
とはいえ、俺もうかつに時間を過ごせない。今がいつかは分からないが、俺がフォーチュンラバーの主人公に処刑される時間も刻一刻と迫ってきているのだ。
「俺が必ず、ルナのことを守るから」
「アイク様……! 私、アイク様を愛しております……! あぁ、やっぱり私にはアイク様しかいなかったんですね……!」
ルナは子供のように、俺の胸の中で泣いている。
何度でも言うが、ルナのビジュアルはめちゃくちゃ好きだ。だけど誰しも経験があるはずだ。なんでこいつが攻略キャラじゃないんだ!! と思うことが。俺にとってルナがそうだった。どれだけ渇望しようと本編では決して攻略ルートに入ることはない。
だけど、今なら?
「俺が絶対に幸せなルートを歩ませてやる」
ここがフォーチュンラバーの世界なら、俺の原作知識は必ず活きてくる。
もう
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