第23話 シオンとラオレット、寄り道をする

差し出されたシオンの手をとったラオレットを見たシオンが箒に乗り、自身の前にラオレットを座らせると箒を浮かび上がらせた。


「また言うけど、しっかり掴まっていてね」


「はい、大丈夫です!」


「うん、それじゃあ出発するよ」


ラオレットの返事を聞いたシオンが箒を浮かばせる。

こうして少しずつ前進を始めていき、徐々にスピードを上げていくシオン。

そして呼び方を決めるために降りてきた時と同じスピードになったところでシオンがラオレットに話し掛けた。


「ラオ君、大丈夫かな?」


「……はい、まだ大丈夫です……」


「できることならもう少しスピードを上げたいと思っているのだけど、ラオ君はどう考える?」


「……今以上にスピードを上げるんですか?」


シオンの考えを聞いたラオレットが不安そうな表情でシオンに尋ねると、それにシオンが返答していった。


「私はそう考えているんだけど、ラオ君が嫌ならスピードはこのままにする。さあラオ君、どうする?」


「……僕は今のままのスピードで良いと思っています……」


「なるほど、わかったわ。それじゃあスピードはこのままにしておくわね」


「ありがとうございます……」


ラオレットから感謝の言葉を伝えられたシオンがラオレットに次の考えを伝えていった。


「ふふ、どういたしまして。でも私はいつかラオ君を乗せたまま今以上のスピードで飛びたいなって思ってる」


「……ええ⁉️」


「だから今のうちにこのスピードに慣れてもらって、少しずつでもスピードを上げることができたら良いなぁって思ってるよ」


「……そ、そうなんですね……わかりました、努力します、シオン様……じゃない、シオンさん」


シオンの発言に狼狽えながらも、努力していくと答えたラオレットに背後から穏やかに微笑み掛けるシオン。

そんなシオンは時折地上の様子を確認しながら空を飛んでいたが、ある地点を目撃したところでラオレットに声を掛けた。


「ラオ君、ちょっと良いかな?」


「え? はい、良いですけど、どうしたんですか?」


「飛び始めた時からたまに下の様子を見ながら、なにか事件が起きていないかを確認していたんだけど、すぐそこの村でなにか騒ぎが起きているみたいなの」


「騒ぎ、ですか?」


「ええ。だからちょっとその村に行ってみたいと思ったんだけど、ラオ君もそれで良いかなって聞いてみるんだけど、どう?」


シオンからこう尋ねられたラオレットは、考えることなく返事をした。


「わかりました! 行きましょうシオンさん!」

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