マジシャンズブルーム シオンの諸国探訪記

篠原2

第1話 シオン、自由の身にさせられる

この日、サンドルシア王城の謁見の間は大変な騒ぎになっていた。

それというのも国王が王国最強の魔術師、魔女シオンに大至急の出頭を命じ、それを受けたシオンが今日にも王城に戻ってくると報告があったからである。


「……遅いのう」


「いえ、陛下、シオン殿が戻ってくるのが今日というだけですから、今少しお待ちいただかないと……」


「ふむぅ……それにしても今日は騒がしいのう」


「それはもう……シオン殿が数ヶ月ぶりに王城に帰ってくると城の者達にも知れ渡っておりますから……」


「シオンと話したいという者が大勢いるということか、なるほどな」


側近の言葉に王が納得し、再度シオンの到着を待っていった。

そうして皆が謁見の間でシオンの到着を待つこと一時間、ひとりの兵士が謁見の間に飛び込んでくる。


「……まだか?」


「いえ、陛下……」


「失礼いたします!」


「む、どうしたのだ?」


「ただいまシオン殿が到着されました! 間もなく謁見の間に見えられます!」


こうして謁見の間にいる者全員にシオンの到着を伝えた兵士に、国王が言葉を掛けていく。


「おお、そうか! よく伝えてくれた! それでその方はどうする?」


「……え? どうする、とはどういうことでしょうか……?」


「そなたもシオンと話したいのではないのか?」


「……それはそうでございますが……よろしいのですか? 自分のような者がこの場に留まってしまって……」


「構わん。この機会を逃せば次はいつシオンと話せるかわからんからな」


「……わかりました。それでは自分もこの場に居させていただきます」


「うむ」


兵士の言葉に短く返答した国王が謁見の間の扉に目を向けたその時、扉が開きついにシオンが謁見の間に姿を現す。


「遅くなりました。シオン・エルコンティ、お召しによりただいま参上いたしました」


「おお、やっときたか。ずいぶん待たされたぞ?」


「申し訳ありません、先日の任務の報告書を書いていたら思いのほか遅くなってしまいまして……」


国王の発言を聞いてばつが悪そうに答えたシオンに国王はこの話を置いておき、本題に移っていく。


「……そうか……まあよかろう。それよりもシオンよ、呼び出した時の言葉を覚えておるか?」


「はい、火急の用件があるからすぐに王城に帰還するように、こう言われましたが……?」


「うむ、火急の用件がある」


「そうですか……それで火急の用件とは、なんでございましょうか?」


「うむ、シオンよ、そなたに休暇を与える。大人しく受け入れよ。良いな?」


「……え? 休暇?」


国王の言葉にシオンは頭が真っ白になり、呆然としながらこの場に立ち尽くした。。

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