見えない前提
@AOIHOSITOSIRUKU3251
第1話 監禁
少し散らかっている部屋、ベッドに伏せる女性が、リラックスしているとは言えない形相で枕に頭を沈ませる。
黒髪が顔を被さっているのに払おうともしない。
目は少し赤く腫れている。
「人生、終わったのかな。死ぬしかないのかな」
彼女は日々あたりまえにしているはずの呼吸すら忘れ、息を吸ったあとどうすればいいかと身を震わせ何かに怯えている。
「ただいまー!」
明るい声が響く、玄関から袋を持ってドタドタと帰ってきた。
彼女はあるものを顔につけ、ベットルームへ顔を出す。
「やぁ!今日は眠れた?」
「…いえ」
「あーそっかぁ!でもまぁ大丈夫!布団に入ってるんだからつかれてないさ!」
「…は」
「お腹すいてるでしょう?鍋なら食べてくれる?」
「いや…いらない」
「でも、もう2日も食べてないでしょう、流石に食べたほうがいいと思うの」
「いや…」
「でも、本題にうつりたいんだ、何か食べてからの方がいいと思ったんだけど」
「本題って…なんですか」
「あー、それはご飯たべてからのほうがいいと思って」
「本題が何かって聞いてんのよ!!」
ベッドから勢いよく起き上がり激怒しようとするも、ベッドに鎖で繋がれた腕がその勢いを殺す。
腕を拘束された女とひょっとこのお面が向き合う。
「あんたねぇ…人さらってベットにくくってご飯だ鍋だ本題だぁ?監禁されて飯出されて安心して食べるわけ無いでしょう!」
「いやぁーだからお鍋とかどうかなって!一つの鍋で煮たものを一緒にたべるなら抵抗ないかなって!」
「気色悪い!もう本当に気色悪い!さらわれてベットにかけ布団つきで転がされてた時は色目的かと思ったら違った、ご飯食べさせようとするからそれになにかが入っていてそれが目的かと思ったら本題とやらの準備なんでしょう?!私は少食な人間だしこんな環境でもの食ったら余計に体調悪くなるわよ!早く本題にうつりなさいよ!」
目を釣り上げて肩で息をする女をみてひょっとこ面はパタパタと慌てるジェスチャーをする。
「そっか、えっそっか!わかった、じゃあご飯はやめるね!じゃあ、本題始めようか」
女は感情的になったが、本題とはなにかわからない、監禁と言う極限の状況でひょっとこ面が最善のコンディションで挑ませようとする「本題」が何か、その恐怖が今更に彼女を襲う。
「じゃあ、はいこれ」
「…鍵?」
「腕の枷の南京錠の鍵だよ、足の枷はとれない。私準備するから腕を自由にしてて」
彼女を縛る枷は三つ、両腕と、右足。
腕の南京錠とベルトをカチャカチャと外しながらひょっとこ面がなにか大きな物を移動している音を聞かないよう努力した。
音が限りなく近くにきた時、それがシンプルなテーブルと、ひょっとこ用の椅子であることに気づき、拷問器具でないことの安心と余計に得体の知れぬ恐怖が同時に女を襲う。
「はーいベッドに座ってー」
向かい合う。
テーブルの上には、それぞれに水のコップ一つ、テーブル中央、右と左に大きめの錠剤が置かれている。
「どちらかに、毒が入っています」
肘掛けに腕を任せてリラックスしているひょっとこ。
「私とあなたで一つづつ飲みます」
肩を狭めて、両手でズボンを掴む女。
「どうしますか?」
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