第9話 朱雀、先輩に懐かれる
「あんた……美波って言ったっけ?」
ミルクは質問してきた。神邏は軽く頷く。
「はい」
「名字はなんて言うの?まあまあ見所ありそうだし、アドバイスしたげる」
「ありがとうございます。……あと美波が名字です。美波神邏っていいます」
「しんら?それって本名?」
「はい」
「もっとアイドルらしいかわいい名前に変えればいいのに」
かわいい名前?女子アイドルならともかく、男の自分にそんなもの必要ないだろうと神邏は思う。
まあ男の娘アイドルならありだろうが。
「悔しいけどさ、あんたかなり美少女だし……」
美少女……?首をかしげる神邏。自分を女と思ってるのか?と、気づく神邏。
だから安野の名前を出したとき彼氏かと聞かれたのだ。
そんな女の子に見える容姿か?……なんて思ったら今さらになって気づいた。
社長にさせられた女装の姿のままだったことに!
ウィッグを外し、神邏は自らの性別を明かす。
「すいません。俺男です」
……一瞬の間があく。
ミルクは突然顔が沸騰するように赤くなっていく。
「お、男!?な、なら最初から、ライバルとかになるわけじゃないじゃない!け、警戒して、そ、損したわ!」
視線がグルグルまわった様子で、しどろもどろに軽く怒るミルク。いや、あまり怒ってるようにも見えない。
だが神邏は怒ってると判断したようで軽く頭を下げる。
「すいません。勘違いさせて……」
女装をやめた彼の顔は良すぎた。キラキラと星が周りで煌めくほどまばゆい。
その輝きに彼女は……堕ちた。
「あ、あんたさ……う、うちの事務所こない?」
「いや、というか俺は……」
「じゃ、じゃあさ、アイドルのイロハおしえるからさ、お、お茶しない?」
「……お茶ですか」
まあそれくらいは……と、おもったが、相手は一流アイドル。スキャンダルになるのではと懸念。
「ダメに決まってんでしょ」
社長が割って入ってきた。
「これから売り出すこの子をあんたとのスキャンダルに巻き込まないで」
「そうです!女アイドルは近寄るな!です!」
自称マネージャーのルミアも同調しだした。
すると意外にもミルクは頷いて……
「確かに、スキャンダルはダメね。トップアイドルの風上にもおけない」
さすが人気アイドル。その辺の事はわかっていると二人はホッとする……が、
「だから外では会わないから!取材現場のここでお茶するのはいいでしょ!マネージャー!なにか飲み物を!さて!何から話す?私の武勇伝聞く?しんらの事も聞かせてよ!まずね……」
バラエティーで培った早口で神邏をもてなそうとする。そしてミルクはあろうことか神邏に引っ付いて来た。
「「ダメ~!!」」
ルミアと社長が必死で引き剥がす。
神邏、先輩になつかれました。
――つづく。
神邏のファンのコーナー。
雑誌効果で瞬く間に人気が出た神邏。そのせいか、他の編集部からも、取材やらなにやらの仕事が次々と舞い降りる。
というか女の編集者にもファンができていた。
今仕事できてる編集者がまさにそれだ。
取材や、神邏の写真取るのを誰がやるかで殴り合いに発展したとかしないとか。
本来のカメラマンは吹っ飛ばされてました。
「神邏様の美貌を取材するのはわたし!」「ダメ!それはうちが……」「どけメスブタ!」
阿鼻叫喚……。あらゆる女子を虜にする神邏。そのファン達が暴走し始める未来が見えてくる……
コーナー終わり。
「わ、私のコーナーが……」
「次回 朱雀、オーディションに行く」
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