第18話 飼い主、警戒される
僕達が町の近くに来たら、男は手を横に出して静止させた。
急な行動に僕達は足を止めた。
ケルベロスゥは走るのも速かったけど、止まるのも速かった。
すぐにピタッと立ち止まって、僕が落ちないようにしてくれる。
「町の様子がおかしいぞ」
どうやら普段と町が変わっていることが、気になっているようだ。
いつも乗り合い馬車で移動しているから、町の異変にもすぐに気づくのだろう。
ひょっとしたら僕がいるからかな?
『ココロ大丈夫?』
そんな僕を見てベロは心配そうな顔をしていた。
ここでも僕は悪魔やいらない子と言われるのかな……。
「ぼくはいらない?」
『おおお、俺がいるからな?』
『何言ってるの? 僕はココロが必要だよ』
『そうよ! 私達がいるじゃない!』
ケルベロスゥの言葉にどこか安心してきた。
後ろでもおててさんがビッグベアーを振り回して、励まそうとしてくれている。
ただ、その度に町の方から悲鳴のような声が聞こえてくる。
「とりあえずゆっくり近づこうか」
「うん」
僕達は警戒しながら町に近づく。
――カンカンカン!
町の方から鐘を叩く音が聞こえてくる。
本当に何かあったのかな?
「あの鐘は警報を知らせている」
「けーほう?」
「ああ、何か問題がある時に町に知らせるやつだ」
やっぱり何かあったのだろう。
僕が嫌われ者だからって理由じゃなければいいな。
シュバルツと男が先頭に立って町に近づいていく。
「止まれ!」
何か町から声が聞こえてくる。
「俺は乗り合い馬車のマービンだ!」
今になって男の名前がマービンだと知った。
そういえば自己紹介をしていなかったね。
「マービンだと!? ならそこのダークホースは……」
「ダークホース? こいつは馬のシュバルツだぞ」
町の中がザワザワとしていた。
「もう大丈夫だ」
マービンから声をかけられ、僕達は近づいていく。
「おい、お前は止まれ!」
ひょっとして僕達は町に入ったらいけないのだろうか。
黒髪の僕はどこの町でも嫌われている。
「うっ……」
『うわああああ!』
『ココロ大丈夫だよ!』
『あんたらタマを噛み切るわよ!』
ケルベロスゥが僕を慰めようとペロペロと舐めてくる。
「おい、子どもをいじめるなよ」
「いやいや、別にミツクビウルフを警戒しているわけじゃない。そこのビッグベアーが問題なんだ」
ビッグベアー?
ビッグベアーって今おててさんが持っているやつだよね?
おててさんもわからないのか、ビッグベアーを傾ける。
「うおおおおおおい!?」
「ヒイイィィィ!?」
町の中から悲鳴のような声が聞こえてくる。
おててさんが持っているビッグベアーに何か問題があるのだろうか。
「おててさん、ビッグベアーを置けるか?」
マービンに言われて僕はおててさんに伝える。
すぐに気づいたのかビッグベアーを地面に置いた。
「ふぅー!」
安堵のため息が町の近くにいるおじさんから聞こえてくる。
短い髪の毛に髭を生やした大きなおじさん。
きっとパパより大きいだろう。
それに鎧と大きな斧を持っている。
「ビッグベアーは魔獣の中でもBランク相当だ」
「ああ、すまない。あれは俺達が倒したやつだからな」
「お前と子どもが?」
「ああ」
おじさんは僕達をジーッと見つめてくる。
『おい、俺達に用があるのか?』
『ココロに何かしたら許さないからね!』
『今すぐにタマを食いちぎるわよ!』
「ああ、物騒なミツクビウルフだな……」
「ごめんなさい」
また僕のせいで怒られたのかな。
『てめぇー! ココロを悲しませやがって!』
『今すぐにタマを出しなさいよ! ほらほら!』
ケルとスゥはおじさんを威嚇する。
ただ、ベロは何かを考えていた。
『悪いのはココロじゃないよ? 僕達に何かあるんだよね?』
「ああ、ミツクビウルフって話すのか?」
「へっ……?」
「いや……話す魔物は少ないからな」
どうやら僕のせいではなく、ケルベロスゥが話していることが気になっていたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます