創作昔話 著作:稲妻饗
夏川
桃太郎じゃないからね 第1話 何者だい?
鬼とか呼ばれる山賊崩れの卯羽一族がいた。彼らは近隣の村を襲っては財を成していた。特に生活に困っているわけでもなく、血が騒ぐからという傍迷惑な動機で襲っていた。
根城は卯春梨城であり、人々からは鬼ヶ島と呼ばれている。正確には島ではないが、この地域ではそう呼ぶのが伝統だそうだ。
ある日、海に釣りに行っていたお爺さんは川と海の境目で少年が溺れかけているのを発見した。彼は自分が誰なのかも何故ここに辿り着いたのかも覚えていないようだ。
お爺さんは少年を家に連れて帰り、お婆さんにことの願末を伝えた。老夫婦には子供がいなかったので記憶を失った彼の面倒を見ることにした。名前はお爺さんの本名とお婆さんの本名から1文字ずつ取って田悟子となった。と思われたが少年自身が納得いかなかったようなので考え直すこととなった。
お爺さんとお婆さん、田悟子(仮)、老夫婦が近所で拾った小汚い名前をつけてもらったおじさん-ぼち-の4人で名前の案をいくつか出し合い、それらを紙に書いて箱に入れ、くじ引きで決めた。田悟子(仮)はくじを引いた。結果は変わらなかった。哀れに思ったぼちが自分の名前を譲ると言ったが田悟子(仮)は断った。田悟子(仮)は正式に田悟子となった。
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