第7話 約束と告白
ここに二枚の映画チケットがある。企画部の
「これを俺にっすか?」
「部長のお
「そっすか」
「それで……できれば次の休日、一緒に観に行かないか……?」
*
当日まで悩んだ挙げ句、服装はニットとテーパードパンツ、足元はローファーでシンプルに決めた。浮かれていると思われるのも
待ち合わせに現れた
「うわー、何かすげーシャレオツっすね」
「こないだ着てたのと一緒じゃないかーッ!」
「サーセン。たまたまローテ
それにしたって、少しはバリエーションを持たせるとかして来てもいいだろうに。僕はお洒落をしてもらう価値もない男なのか……?
「こうなったら、お望み通りコーディネートさせてもうからなっ!」
僕は
最終的に
「色々参考になりました。あざっす」
「初歩としては上出来だな。欲を言えばカジュアルにも合わせやすいジャケットなんかがあるといいが」
「んじゃ、それはまた今度っすね」
「あ、ああ……」
この誘い上手め! 僕の方から約束を取り付けようと思っていたのに、先手を取られてしまったではないか。
「どうかしましたか? 課長」
「いや……そうだ。その『課長』というのをやめてもらえないか? 今日はプライベートなのだし」
「
「ほぁああっ!?」何たる不意討ちか!「し、下の名前は……いきなり距離を詰めすぎだろう!」
「サーセン。じゃ、
「そ、それでいい」
この男と
「では、次に行こうか。
「ハハッ、何か親戚のおじさんみたいっすね」
「お、おじさんんん!?」
コインロッカーに荷物を預け、そのまま駅ビル内のドラッグストアに立ち寄る。
「服はいいとして、問題は髪だな。美容院など行っている余裕はないから、手短に済ますぞ」
ヘアバームを購入し、化粧室に移る。要領を得ない
「適量を
「え? どんな感じっすか?」
「だからなぁ……」
「
何ッ!? 僕がやっていいのか!?
「わ、分かった……こう、こんな感じで……」
「あー、いいっすねー」
「…………。そ、そろそろ映画の時間だし、移動しようか……」
指先に残るふんわりとした感触が、ほのかな
僕たちが到着する頃には、映画館は多数の客で賑わい始めていた。
「配信まで待とうかと思ってたんすけど、すげーラッキーでした!」
珍しくハイテンションな
部下に紹介してもらった居酒屋で、鶏料理に
「君もノンアルで構わないのか?」
「上司が車で来てるのに、俺だけ飲むわけにもいきませんし」
この男、意外と常識があるなと感心しつつ、やはり僕としても頼りになるところは見せておきたい。
「帰りは送って行こう。この間のコンビニの前でいいな?」
「あざっす」
コンビニの駐車場で車を停める。時間は夜七時を回っていた。
「それじゃ……僕はついでに買い物をしてから帰るよ」
「いちごプリンっすか?」
「なっ!? 何故それを……いや、今さらだな。
助手席でぽかんとした面持ちを浮かべる
何故だろう、打ち明けるタイミングは今しかないと思い込んでしまった。
「君の……えくす☆でーもん先生の漫画を読ませてもらった」
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