なんかの話

みかづき椛

  序章 ウニ神殿

    一話 海・爽・颯・凪・潮

 ある日の朝、とあるマンションの一室にベッドで寝相良く寝ている者が一人いた。その者は目覚め、ベッドから降りた。


 男は高校生が着るような制服を身に付けた。その後無言のまま誰とも話さずに部屋から外に出た。海は一人暮らしをしていた。


 何人もの制服を着た高校生が桜が咲き誇る並木を通って高等学校の敷地内に入って来ている。その中で一人、身長171cmで髪色が白の特徴を持つ男が無感情な顔立ちで歩いていた。


「おはよう海」


 無感情な顔立ちの男と同じ制服を着ている男が、無感情な顔立ちの男に向かって朝の挨拶と共にかいと呼んだ。


「……なんだ。結局卒業の日までコミュニケーションを取る気が無かったな」


 海に話しかけた男子高校生は海から離れた。


 何時間か経過した頃、海が通う高等学校のこの日行われた学校の行事が全て終わり、クラスの者達はそれぞれ教室で友人と話していた。その間海は学校内で思い出話や今後のことについて担任以外話すことは一切しなかった。海が仲がいい者は一人もいなかった。


 数分後、海は高等学校の門の所にいた。海は学校から離れようと一歩踏み出すと海のクラスの担任が海の元へ駆け寄った。


「海も元気でな!」


 海は立ち止まって担任の先生に向けてお辞儀した。そして海は学校を後にした。


 数分後、海が歩いていると同じ制服を着た女子が右手で手紙を持ちながら海の目と鼻の先まで近付いた。


「あのこれ!」


 海は女子高校生に手紙を渡された。


「家に帰ったら読んで!」


 海は自宅のマンションの部屋に帰り、貰った手紙を読み始めた。その手紙の冒頭部分は――


『最後まで無言を貫き続けるそのクール差が好きになりました! 住所書いてあるのでこんど家に来てください!』


 海は手紙の内容に対して何のリアクションもせず、手紙をクシャクシャにしてゴミ箱に投げ捨てた。


 それから十日が過ぎた日の朝、リュックを背負って出かける準備をし終えている様子の海は玄関から外に出た。



 日本のどこかのある日の朝、何人もの制服を着た高校生が桜が咲き誇る並木を通って高等学校の敷地内に入って来ている。その中にいる身長170cmで髪色が黒の特徴を持つ男が落ち込んだ様子で歩いていた。


「なぁそう、お前はガチで卒業まで彼女出来なかったな」


 落ち込んだ様子の男は近くにいた男からそうと呼ばれた。


「いや! まだ卒業ブーストがある!」


「なんだよそれ」


「卒業ってドキドキするだろ? そのドキドキにつられて俺に告白する女子が現れるかもしれないよな!」


「無いと思うけどなぁ〜」


「じゃあやっぱ俺から告白するしかねぇか……!」


「玉砕だと思うぜ!」


 数分後、爽は自身のクラスの教室に入った。


「おはよう女の子達!」


 挨拶の言葉を放った爽に向けて女子数名が睨んだ。


「話しかけないで!」


 爽を睨む一名が爽にそう言い放った。


「ううっ……」


 暗い表情の爽は席に座った。


「おはよう爽! 今日も辛辣だな!」


 爽は右隣に座る男にそう話しかけられた。


「おはよう……あぁぁ……卒業まで嫌われ続けてしまったぁぁ……」


「お前は女子をイヤらしい目で見すぎだったな。露骨に」


「あぁ〜……高校でも無理かもなぁ〜……」


「就職したら彼女出来るよ! 多分!」


「社内恋愛か……そっからでも絶対に彼女作って見せる……!!」


 その後、爽は卒業式が終わった後も女子と会話することはなかった。マンションの一室に帰宅した爽はベッドで仰向けなり、天井を見ていた。


「やっぱり接し方が悪かったのかなぁ……胸見てたりとか普通にしてたし……」


 それから十三日が過ぎた日の朝、リュックを背負っている爽はマンションの一室の玄関から外に出た。


「俺は絶対に彼女作るぞーー!!」


 爽は空に向かって人生の目標と思われる言葉を響かせた。



 日本のどこかのある日の朝、誰もいない桜が咲き誇る並木を高等学校の敷地内に身長168cmで髪色が鼠色の特徴を持つ男が全速力で入った。


「もう少しで遅刻だ!! ハァ……ハァ……」


 数分後、一つだけ席が埋まっていない教室に息切れている髪色が鼠色の男が入って来た。


「みんなおはよう!」


はやておはよう!」


 多くの学生にはやてと呼ばれた髪が鼠色の男は一つだけ空いている席に座った。


「颯……卒業式がある今日も登校前にお年寄りを助けていたのか?」


 颯は右隣の席に座る男にそう問われた。


「おばあさんの荷物を運んでいたんだ!」


「ははっ! ずっと偉すぎだな颯は!」


 颯が通う高校の学校行事が全て終わった後、颯はお世話になった先生全員へ挨拶や友人全員と話をして回っていった。


 それから九日が過ぎた日の朝、リュックを背負っている颯はアパートの一室の玄関から外に出た。


「絶対……! 私は人を助ける人になるんだ!」


 颯は心の中でそう決意した。



 日本のどこかのある日の朝、何人もの制服を着た高校生が桜が咲き誇る並木を通って高等学校の敷地内に入って来ている。


「えぇ!?」


 車を運転していた男が、高校生と同じ制服を身に付けている髪色が焦げ茶で身長が140cm程の男を二度見した。


「今の運転手二度見してきたな……最近この町に来たばかりの者か……? われが学校を間違えていると思っただろうな……二度見してきた者は……」


「卒業まで小さいままだったなうしおは……」


 高校生が着る制服を着ている身長が140cm程の男を見ながら近くにいた同じ制服を来ている身長が170cm程の男が心の中でうしおと名前を言った。


 数時間後、潮が通う高校の卒業式が始まっていた。その最中、潮は何名かが自身を凝視していることに気付いてイライラしている様子だった。


 その後、潮は高校の行事が全て終わって学校を出て一人で下校していた。


「きゃー!! 潮こっち向いてー!! かわいいよーー!!」


 数人の高校の制服を着た女子の集団が潮に向かってそう叫んだ。


「うるさい黙れ!!」


 潮は自身のファンと思われる女子に怒鳴って走り始めた。


 それから十五日が過ぎた日の朝、リュックを背負っている潮はアパートの一室の玄関から外に出た。


「心配だ……我を雇ってくれる者がいるのかどうか……」



 日本のどこかのある日の朝、何人もの制服を着た高校生が桜が咲き誇る並木を通って高等学校の敷地内に入って来ている。その中で一人、身長167cmで髪の色は紺色で顔が美しい女の様な特徴を持つ男子がガラの悪い男子二人に挟まれた。


「おいなぎ! 高校卒業したらどうすんだ」


 美しい顔立ちの女の様な特徴の男は真左にいる男になぎと呼ばれた。


「今日でパシリ生活終わるのかと思ったが……卒業後も絡まれるな……」


 凪が通う高校の卒業式を終えてから数時間後、下校中の凪は数人のガラの悪い男十名に囲まれていた。


「一体いつになったら僕はこの人達から解放されるんだろう……」


 それから十二日が過ぎた日の朝、リュックを背負っている凪はマンションの一室の玄関から外に出た。


「ようやく家にあの人達がいくなった……これで静かに活動出来る……」



 数時間後、周り全体が真っ白な空間に海・爽・颯・潮・凪の五人は床に寝っ転がって並んでいた。


「おきるんじゃあ〜」


 真っ白い空間全体に年食ったおじいさんの声が響いた。


「うっ……う〜ん……」


 潮は意識を取り戻して起き上がると、周りを見渡し始めた。


「何だここは!」


 潮は叫ぶと、海が意識を取り戻して立ち上がった。


「……どこだ?」


「我も目覚めたばかりで分からん……誘拐されたのか……?」


 突然颯が目を開いて勢い良く立ち上がった。


「誘拐事件!? 誰かが攫われたのか!?」


「お前がそうだ。我もだが……」


「な……なんだって!? 助けを呼ばなければー!!」


 颯は慌てた様子で履いているズボンのポケットを探り始めた。


「携帯電話が無い……!?」


「荷物取られているのだろう……我も無いしな……」


 潮は颯と同じくポケットを探りながらそう言うと、凪は立ち上がった。


「うるさい……ってなんだここ……」


「お前も起きたか……恐らく我達われたちは誘拐されたんだ……」


「誘拐……!? バスに乗っている間に何が……!?」


「う〜ん……女の子ぉ〜……」


 そう爽は寝言を言った。


「女の子〜って言っている場合ではない! お前も起きろ!」


 潮は爽の背中を右足で踏んだ。


「おい! 寝ている人を踏むな!」


 颯は潮にそう注意すると、目が開いた爽が立ち上がった。


「え!? 真っ白だ……」


「ふぉーふぉっふぉっふぉー!」


 おじいさんの笑い声が部屋全体に響き、3m程の白髪で白いの髭を生やしたおじいさんの姿をした者がパッとその場に瞬間移動で現れた。


「わしはこの世界の神ワタツミじゃ。バスにリードしてくれる人がいなくてすまなかったのう。不安じゃったろう!」


「えぇ!? 神様!? ははー!!」


 颯はワタツミと名乗った3mのおじいさんに向けて土下座した。


「神様おっさんかよ……」


「異世界ってことはここは天国か?」


「惜しいのぅ! ここは“うみ„と言う名の世界じゃ。地球ではないぞ!」


 ワタツミは潮の質問のそう答えた。


「地球じゃないだと……? とにかく死んだのか俺は……彼女出来ずに……」


「いや、死んではおらん」


「どう言うことだ?」


「簡単に言えば……ここは天国と地獄のあいだみたいな世界じゃな」


 ワタツミは再び潮の質問に答えた。


「え……? つまり我は微妙な存在だったのか……?」


「それは気にすること無いぞい」


「まぁ俺は大丈夫っすよ……この世界に女の人いるなら」


「他に気になることないのか……」


 潮は爽を見ながらそう思った。


「とにかく話は後でするからついて来るのじゃ」


 ワタツミはそう言って歩き始めた。


「おい神! 急に歩くな!」


 潮はワタツミに指差してそう指摘した。


「神様に対して言葉使いが悪いぞ!」


「女子は……?」


「女子なんてついてくればいるかもしれないだろ」


「確かにな! おんなのこぉーー!!」


 そう叫んだ爽はワタツミを追いかけていった。海・爽・颯・潮・凪の五人はワタツミと共に歩いて移動し始めた。


 ワタツミと海・爽・颯・潮・凪の五人は、床・壁・天井が黄色の通路を歩いていた。


「急に周り黄色だな……」


 凪は周りの壁や床を見ながらそう思った。


「あぁ、この世界は名字と言う概念は無いので捨てるのじゃ」


 爽・凪・潮の三人は一瞬驚きの顔になった。


「分かりました!」


 颯は元気良くワタツミに返事をした。


「え? お前それで良いのか?」


「苗字がなくとも誰が誰だか魔法で分かることが出来るのじゃよ」


「え!? 魔法!? この世界には魔法があるのか!?」


 若干興奮気味になった爽がワタツミにそう聞いた。


「魔法あるぞい!」


「色々変なことがあったから魔法が存在するんだろうね……」


 心の中で凪はそう呟いた。


「いよっしゃ!! 超楽しみだぜ!!」


 ワタツミと五人は色んな種類の武器が置いてあったり飾ってあったりしている部屋に入った。


「なんか色々豪華な武器が飾ってあるな……」


 潮は部屋全体を見回してそう呟いた。


「この世界ではバトルに勝ち続ければお金がたくさん貰えるというイベントがあるのじゃ」


「へ〜それは面白そうだな〜!」


 そう言った爽はワクワクの顔をしていた。


「それで急な話になるのじゃが、一人ずつ試しにわしと戦ってもらうぞい」


「え?」


「今から隣の部屋でやるからのう。順番は構わないからそれぞれ武器を持って来るのじゃぞ」


「神様と戦うんですか!? 神様の体に傷を……!?」


 そう発言した颯は戸惑いの顔付きだった。


「わしのことは心配しなくて良いぞい。わしは神様なのじゃから」


「神の心配はしてないが、我達が勝てるわけが無いぞ……」


「安心せい! 試してみるだけじゃ!」


「へぇ〜……なら俺から行くぜ!」


 何も武器を手にしていない爽はワタツミに近付きながら右手の掌を上げてそう宣言した。


「お主……武器を持っておらぬようじゃが?」


「ふっ……俺は素手で十分なんだ」


 そう自慢した爽は自慢げな顔付きだった。


「分かった……ではお主から試すとするかのう」


「いや、俺が先だ」


 突然海がそう主張した。海は見た目が豪華な剣を刃を出した状態で右手で握って左手で挙手していた。


「あいつようやく喋ったな……」


「お前……手を挙げていたのか……?」


 潮は海にそう質問した。


「俺は挙げていた」


「すまぬのう……どっちがあれか困惑するのう……」


「神のくせに困惑するな!」


 爽がワタツミにそうツッコんだ。


「先に手を挙げていたとしても神から当てられたのは俺だぞ!」


「俺は譲らない」


「くっ……なら競走だ! 早く隣の部屋に着いた方から先に戦うってことにしようぜ!」


「分かった」


 海は爽の提案に乗る発言をすると、海と爽は同時に走り始めて部屋を出てT字を右に曲がった。


「海! 爽! 曲がる方向が逆じゃ! 戻って来ーい!」


「逆なのか……」


 潮は心の中で静かにそうツッコんだ。

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