第2話 僕はもう心の底までジャンキーかもしれない

2024年5月21日午前1時頃。


連日の寝不足が祟り仕事中に過呼吸を引き起こしたため、休憩することにした。充電が25%しかないスマホを持って布団の上に寝転がり、毎晩一緒に寝ているバカデカぬいぐるみを抱きかかえる。


少し目を閉じただけのつもりが、寝ていたらしい。


ものすごく解像度の高い悪夢を見た。


父親に無遠慮に死んだ姉さんのことを踏み込まれ、侮辱され、傷つけられる。これは、割といつものことだ。僕は僕で心のファイティングポーズを取ってしまい、冷静に諭すように「そういうことは言っちゃいけない」ということを噛んで含めるように言って聞かせる。


それでも彼は止まらないから諦めて離れようとすると、包丁による一撃が飛んできて、すんでのところでかわす。ここは、現実では起きたことがないけれど、可能性が無くはないと思っている。


ここで僕は爆発して、子供の頃からずっと恨んでいた、憎んでいたと告げた。


その後、彼は僕の部屋に駆け込み、PCから全テキストデータを削除した。今僕のPCには、姉さんが生きていた頃の日記をコピペしたものが入っている。当時書いていた詳細な日記の原本は全て処分してしまったから、PCに入っているものだけだ。


これは、彼女が生きていたこと、彼女と共に生きたことを示す唯一の証拠のようなもの。想い出の証だ。彼女は写真も何も残さず、徹底的に身辺を整理したうえで計画的に自殺をしたから、こんなのしか残らなかった。


遺書は内容がショッキングだったため、当時感情に身を任せて捨ててしまったし。まあ、内容結構覚えてるんだけど。


そのうちクラウドにも保存しておくかと思っていた唯一の思い出の証拠を消され、泣きわめく僕を冷たい目で見る父親。母親も「いつか痛い目みるようにお祈りしてる」と僕に言い放つ。それから「あ、もうあってるんだっけ」と。


僕の過去を全て嘲笑うかのように言ってのけた。


妙に解像度が高い悪夢だ。


べっちょりと汗をかきながら目が覚めて、寝落ちしていたことに気がつく。何時だろうとスマホを見ると、既に4時だった。


すぐにパソコンに向かって、手を付けていた仕事だけ終わらせる。それでも、嫌な気持ちが拭えない。


「あ! この嫌な気持ちのままロストエンブリオの続きを書けば、うまく書けるかも!」


そう思って執筆原稿を立ち上げ、書き始めたとき、僕はもうダメかもしれないと思った。


心の底までジャンキーになっとるやないかい。


だけど、悪いことじゃない。


むしろ、創作をする人間としては良いことなのかもしれない。


それでも、何かがダメな気がした。


しかし、実際、止まっていたのが嘘だったかのように筆が乗った。

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