幸福
金木犀
幸福
静まり返った夜空の下、着信音が鳴り響く。
「…あ、もしもし?久しぶり、元気してた?」
少し口角を上げながら、私は5年ほど前から連絡を取っていなかった友人と電話をする。
「うん…うん、そう、今はデザイナーしてて…そっちはどう?音楽やってるんだ…そっかぁ、いいね」
他愛も無い世間話をしながら、昔の思い出に浸る。
「そう…だね、また会いたいね。そっか、5年前なんてまだ未成年だったもんね…お酒ね…」
とても嬉しいお誘いのはずが、何故か私は言い淀む。
「あっ…ううん、嫌なんじゃなくて…」
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「今、足動かなくてさ」
私は、割れたフロントガラスから見える煙を見ながらそう呟く。
「漏れたガソリンがちょっと離れたとこから燃えててさ…そろそろ車にも引火しちゃうかな〜って」
私は半笑いでそう言うと、少し間を置いてため息をこぼす。
「助け…?助けかぁ…なんかさ、もういいかなって…やれることやったかなって…そうだ、私の親とかに伝えといてよ。もう十分、幸せになれたよって」
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「██!?██!!!」
一瞬の爆発音と共に、電話が途絶えた。
--- 終 ---
幸福 金木犀 @kinmokusei_GL
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