第12話

あれから3年が経った。

ガリガリだった体も年相応の身長と体重になった。

もちろん体に痣の一つもない。

有難いことにスティアート公爵家から着いてきてくれたマヤがしっかり体調管理と世話をしてくれているから。


私と父様との関係は⋯⋯非常に上手くいっている。

この3年間は父様からの愛情は減ることなく増すばかり。

まるで12年間も離れていたことが嘘みたいにお互いが掛け替えの無い存在になっている。

初めて知った父の温もりと、疑うことなく愛されているという自信が今の私にはある。



助けられた時は21歳だったローレンス叔父様の呼び名がロー兄様に変わった。

相変わらず時間さえあれば我がランベル家に顔を見せに来てくれる。

未だに結婚どころか婚約者もいない⋯⋯あんなにカッコ良くて優しいのにな。理想が高いのかな?


「ルナ支度は出来たか?」


「はい!どう?似合っている?」


「ああ⋯⋯父様が母様に出会った頃にそっくりだ」


父様はお母様を今も愛していると言って結婚をする気はないと言っている。

まだ33歳の父様はとても15歳の娘がいるとは思えないほど私から見ても若々しくて、カッコよくて、魅力的だ。


「こんなに可愛いルナを俺の目の届かない場所に行かせるのは不安だ」


「もう、心配性なんだから!学園に入学するだけだよ」


そう、今日から私は貴族学園に通う。

楽しみでもあり、不安でもあり、憂鬱でもある。


でも学園には体が弱いとか、留学しているとか余程の理由がない限り15歳から三年間は貴族は学園に通うことが義務付けられているんだよね。


知っているのはエリザベスと、あの日ずっと俯いていたから顔も知らない第三王子だけ。

知り合いなんて一人もいない。

そうそう、エリザベスと第三王子との婚約は死んだことにされている私の喪が明けた二年前に結ばれたそうだ。


フォネス伯爵家にいた時は外に出してもらえなかったし、父様と一緒に暮らし始めても、隣にあるロー兄様の邸にしか行ったことがないんだよね。

それが不満に思うことが無いくらい、我が家の居心地がよくて、ずっとこのまま父様とここで暮らせたらいいなと思っている。


外出もせず三年間も一体何をしていたかと言えば、10歳から疎かになっていた礼儀作法やマナーに勉学を学んでいた。

それも全く苦にならなかった。だって父様が何か出来るようになる度に、これでもかってくらい褒めてくれたから。

こう言うのを親バカって言うのですよとマヤがこっそり教えてくれた。それには私も同意してマヤと一緒に笑っちゃった。


「ルナ、困ったことがあれば必ず相談しなさい」


「分かっているわ」


「誰かに嫌味を言われたり、意地悪をされてもだぞ」


「は~い」


「それと一番気を付けなければいけないのは男だ」


「?」


「分かってないな。ルナは王弟の娘で、公爵令嬢で、世界一可愛いから気を抜けば間違いなく男が寄り付いてくる」


「そのへんは大丈夫だよ。だって私の理想は父様だよ?強くて、頭が良くて、カッコよくて、包容力もある父様が大好きだもの。そんな素敵な人はどこを探してもいないと思うの。だから私はずっと父様といるの」


「ルナ⋯⋯そうだな。ずっと父様と一緒にいればいい」


「旦那様とルナお嬢様がとても仲がいいことは存じ上げておりますが、そろそろ出ませんと入学式に遅れてしまいますよ」


「わかった」


「行きましょう父様!マヤありがとう」


「「「行ってらっしゃいませ」」」


「行ってきます!」






う~ん疲れた⋯⋯心配なのは分かるんだけど馬車の中でもずっと父様から"注意するべきこと"を学園に着くまで延々と聞かされて、既にヘトヘトだよ。





うっわ~ここが学園なのね。


入学式会場に父様と向かいながら全てが目新しくてキョロキョロしちゃう。

会場に入ると同じ制服を着た生徒たちは用意された椅子に座り。ご家族の方は二階席と分かれるようだ。


私に心配そうな眼差しを向ける父様に大丈夫だよ、っと笑顔を見せていったんはここで別れる。




この中にエリザベスとあの夫婦も居るのか⋯⋯

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