第4話


誰も助けてはくれなかったけれど、ここから解放されたのは王都にいる父親から呼び出されたのがきっかけだった。

それは誰にも祝われない私の12歳の誕生日を迎えてからすぐだった。




「この子まで呼び戻すなんて何がありましたの?」


「腹立たしいことに王家から第三王子の婚約者候補にとコイツに打診があった」


王家から?

一度だけお母様に連れられて王妃様に会ったことがある。もう顔も覚えてないけれどキラキラしていて、とっても綺麗で感動したのを覚えている。


「そんなのおかしい!わたくしの方が王子様に相応しいわ!お姫様になるのはわたくしよ!」


ですよね~

この異母姉が黙っている訳がないものね。


「お父様も可愛いエリザベスこそが相応しいと思っているよ」


「貴方何とかなりませんの?」


「ああ、我が家には娘が二人いると、コイツよりも姉の方が出来がいいとエリザベスを推した」


「まあ!それでそれでどうなったの?お父様!」


「選ぶのは第三王子だが、エリザベスも一緒に呼ばれることになった」


「キャーお父様素敵!ありがとう!大好き!」


「ふふふっ、エリザベスの引き立て役に丁度いいですわね」


「ああ、エリザベスなら第三王子も気に入るだろう。⋯⋯エリザベスとコイツをあまり差をつけると印象が悪くなる。コイツもある程度は着飾らせろ」


「ええ、分かりましたわ」


何か企んでいることは顔を見ればわかる。

二年前から私は一枚もドレスを買い与えてもらってない。

どんなドレスを用意するのか分からないけれど⋯⋯


「それよりもコイツの頬の腫れはどうするつもりなんだ?」


「心配なさらなくても大丈夫ですわ。化粧を濃くすれば上手く誤魔化せますわ」


やっぱりこの人は馬鹿だ。

この腫れを隠せるほど子供の私が化粧をすればそれを見た相手は違和感を感じると分からないのだろうか?


「おい!お前は『はい』と『いいえ』しか口を開くなよ!分かったか!」


「はい」


「お母様~明日着ていくドレスを一緒に選んでください!飛びっきり可愛くしなきゃ!」


「まあ!安心しなさい。エリザベスはそのままでも十分可愛いわよ」


「そんなこと分かっているわ!それでももっと可愛くなりたいの!」


確かにエリザベスは義母に似て人目を引く綺麗な顔立ちをしている。

比べて今の私は頬も痩けてガリガリ。目だけが大きくギョロギョロとしている。こんな私なんて誰が見ても不気味だよね。


それに私は王子様になんか興味がない。

有り得ないけれど、もし私が選ばれたりしたら今までの比じゃないくらい暴力を振るわれるかもしれない。それこそ命を奪われるほどの⋯⋯


王子様に気に入られるよう是非ともエリザベスには頑張ってもらいたいわね。








「うふふっお異母姉様ってば、何を着ても地味ね~」


ホントにね。

まさか、王家の方とお会いするのにこんな格好をさせるなんてね。

あの義母は分かっているのかしら?

王族を馬鹿にしているって顰蹙を買わなければいいけれどね。


それにしてももっとマシなドレスはなかったのかしら?

コレって去年エリザベスが着ていた時はパステルイエローだったと記憶していたけれど、保管方法が悪かったのか薄い茶色に変色していて、所々に元のパステルイエローが見えて斑になっているのよね。これは使用人のレベルが低い証拠。

装飾品も着けていないし、ドレスはぶかぶかだし、私をエリザベスの引き立て役にしたつもりなのでしょうね。

それに、如何にも化粧の下を隠しています的な厚い化粧。

コレで誤魔化せると思っているのなら本当に馬鹿な人。



王妃様が私のことを覚えてくれていたら⋯⋯なんて考えが甘すぎるわよね。

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