第17話 お泊り特訓 1
初日の特訓が終わり、次の日も同じように特訓して、同じように四日間はすぐに過ぎ去った。
ただ、問題点は変わっていなかった。
ダンスに集中すれば歌が、歌に集中すればダンスがうまくがうまくいかない箇所がいくつかあった。
といっても、最初のころとは違ってぎこちなさというものがなくなっているので、一般の人が見てもわからない程度のうまくいってなさしか感じてはないけれど、それでも今回のステージというのは、事務所の先輩であるクローバーを見に来るお客さんたちの前座を盛り上げるためのもので、場所というのも音楽ショップで行うものだったりする。
それもあって、来るであろうお客様たちが、シノたちの音楽を当たり前のように知っている人が多い。
だからこそ、そこで下手なことができない。
ということを、この四日間の間に天音から聞いていた。
私は、そこまで求めなくてもと思ってしまうが、天音の考えはそうではないらしく、絶対にいいものにしたいと考えている。
ただ、気になったこともあった。
それは、オーディションのときはどうだったのかというもの。
オーディションも同じ調子でやっていたのであれば、今と同じようになっていた可能性は高く、そこを見ても何も言われなかったのかというものだった。
天音はそのときのことを聞いても、顔を赤くしてうまく答えてはくれなかった。
理由はよくわからないけれど、そのときはなんとかなったのだから、今も必死に練習して、そのときと同じようになれば、うまくいくのではないのかとなんとなく思ってしまう。
でも、天音はそれで満足するはずもなく、私は相談を受けた。
「それにしても、お泊りか…私が、そんなことをする日が来るなんてね」
無意識に胸のあたりに手を当てながらそう言葉にする。
ただ、一つ問題点があるくらいのことで、私はそれを解消するべく家に帰ると、お姉ちゃんの部屋をノックする。
「いいかな?」
「
「ちょっと、相談というか、お願いがあってね」
「相談?入ってきて話してくれたらいいよ」
「う、うん」
私は緊張しながらも、姉の部屋に入る。
お風呂上りなので、いつもよりも少し赤い顔を見せながら、いつものようにストレッチをする姉は言う。
「相談はなんなの?」
「えっと、明日から、少しお泊りがしたくて…」
「お泊り…」
「うん、ちゃんと友達の家だからね」
「大丈夫。それについては、あたしだって、幸來のことを信頼してるもの…でも、そんな急に?」
「少し前から、考えてはいたんだけど、お姉ちゃんが忙しそうだったから…」
「た、確かに…ここ最近ちょっといろいろあったけど。それでも急でしょ?連絡をいれてくれればよかったのに」
「ご、ごめんなさい」
私は素直に謝っておく。
こういうときは、何も言わずに謝ることがいいということは、私もわかっていた。
だから、頭を下げる。
お姉ちゃんは、そんな私の姿を見ながらも、首をなかなか縦には振らない。
理由はわかってはいる。
でも、私にだって諦められない理由というのがあった。
私が必死に頭を下げていると、お姉ちゃんはため息をつく。
「はあ…わかりました」
「本当に?」
「可愛い妹が言ってるんだから、許さないのは姉としても、ダメなことでしょ?それと、何かあったら、すぐに連絡をすること。わかった?」
「うん」
「そしたら、お母さんたちにも連絡をするように」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
「別に悪いことをしようとしてるわけじゃないんだから、その言葉はいらない」
お姉ちゃんはそんなことを、淡々と言う。
私は、再度お姉ちゃんに向かってお辞儀をすると、部屋から出ていく。
明日は忙しくなるかな。
そんな期待を胸にのせて…
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