第8話「サイボーグ・ハヤカワ その①」
「あ、あの顔は……」
襲撃してきたその人物を見て、ブラザーは目を見開いた。
それもそのはずだ。数日前、お兄さんは彼にあっていた。
「っしゃ〜す」
彼はお兄さんに気だるげな挨拶をしてきた。
「あ、ああおはよう。 君は新人の……」
「ハヤカワっす」
実験体の名は"ハヤカワ"。身長は170cmほど、見た目は高校生くらいに見える。
髪は少しチリヂリの単発。タレ目でそれが余計彼を気だるそうに見せる。
そしてワタナベは彼を実験に使い、強靭なパワーを強制的に彼につけさせた。
彼の寝ている間に、身体を改造したのだ。
「店長…! ついに成功です…! 人型機動兵器…"サイボーグハヤカワ"…!!」
「ほう…、見せてみろ…」
ハヤカワは自身が改造されていることに気づいていなかった。
実験の際は意識を奪われ、ついには実験中では無い時でさえ、動きをコントロールされていた。
数日前まで普通の人間だった彼は、ディグが残したユニフォームから彼の居場所をつきとめ、それを捕獲する兵器に成り果てたのだ。
「まずいな……! とんでもねぇパワーだ…」
サイボーグハヤカワは、あたりの家に銃を乱射しながら近づいてくる。
「このフライパンじゃ厳しいですよね…」
「ああ…。それはあくまで対能力用だからな」
こうなってしまうと、ディグはお兄さんに頼る他ない。
しかし、ミスターブラザーが放つ氷さえも、マシンガンで打ち砕いてしまう。
「うっ!!」
1発の銃弾がミスターブラザーへ当たる。
「お兄さんッ!!」
「構うな!! おめェ、拳銃もあっただろ、取ってこい!」
ハヤカワの足音は、確実に人間のソレではなかった。
1歩1歩轟音を響きわたらせ、顔に感情は一切ない。
ただ冷静に、こちらを見ていた。
「気づかれたか……、ありゃサイボーグだな……」
「サイボーグ……。空想の話かと思っていました…。なぜそんなことができるんですか?」
「007…、その上層"MSホールディングス"は世界最高峰の科学技術を誇る…。1年間でラボに費やす資金は8000億円だと言われている…」
1万以上の数字を理解できないディグには、8000億など夢のまた夢であった。
「す、すごいんですね…! じゃあ、あれはどうやって倒せば…」
「目標 コボリ 発見 捕捉。 タダチニ 攻撃 シマス」
突如小型ミサイルのようなものをソウダが発射してきた。
「アブねぇッ小堀!!」
ブラザーが咄嗟に氷壁でバリアをはる。
ミサイルが氷壁へ直撃し、一瞬で氷は砕け散った。
ディグに当たることは防げたものの、生成にかなり体力を使う氷壁は、あっけなく崩壊したのだ。
「まずいな……。お前のフライパンも使えそうにねえ…」
ディグは自分のフライパンを見つめる。
「とりあえず俺のウォーク・インで直接攻撃するしかねぇか…!!」
ブラザーは頭上に大きな氷塊を発生させる。
大きさは直径3mほどだろう。
「お兄さん! 無茶ですよ!」
「関係ない!! 喰らえッ!!」
氷塊は、ガラスが割れるような激しい音をたて、ソウダに直撃した。
氷塊を全身に浴びたソウダだが、機体にダメージは入っていなかった。
「クソ……、ノーダメージか……」
しかし、ディグは偶然目撃した。
一瞬、ソウダの体から電気がバチバチっと見えた。
いわゆる、ショートだろう。
「お兄さん……! ダメージはありますッ!! 続けてください!!」
「本当だろうな!! "ウォーク・イン"ッ!!」
今度は数十個、数十cmの氷塊を生成する。
「お前が思っている数倍体力を使うんだぞ!!」
氷塊が小さい分、先程の攻撃より速いスピードでソウダに当たる。
しかし、彼の見た目に変化は無い。
だが、再び電流が外側に見えた。
「わかったッ!! お兄さんッ!!」
「なにがだ小堀!!」
ディグはソウダとは全然違う、90度はなれた場所を指さす。
「あそこに向かって、大きな氷塊を撃ってください! これで終わらせるッ!!」
ブラザーは一瞬疑いの含んだ眼差しでディグを見たが、彼の真剣な表情を見てすぐな信頼した。
「なんだがわかんねぇが、やってやる! だがこれで最後だ……」
いままでで1番大きい氷塊が出現する。
それをブラザーはソウダがいない、なにもない空間へ撃つ。
いつの間にかそのなにもないはずの空間にディグがいた。
「な、なにやってるディグッ!! 死ぬぞッ!!」
───何故かその時、ハヤカワは思い返していた。
5年前の今日を。
記憶は朧気だが、何かが見える……
見覚えのある顔が、こちらをちらちら見ながら、誰かと話している。
話している相手は…、"ワタナベ"である。
他にもなにか、心に何かが浮かんできた。
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