超普通の女子中学生が天才トランペッターに選ばれるとか聞いてないのですが

@ring-20111227

第1話 いつもの日々

私は早乙女瑠璃、中学2年生!

吹奏楽部所属で、トランペットパートです!

今日も合奏頑張りまーす!

『はい、第一グループからチューニングお願いします』

低音の低く大きな音が音楽室に響き渡る。

これを聞くと、『ああ、次は自分の番だ』って、すごく実感する。

って言っても私、第三グループだけどね、笑

チューナーの電源をつける。黒いフォルムが使い古されて、傷が見えるようになってきた。

チューナーが『早くしよう』と急かすようにチカチカと緑と赤のライトを点滅させている。

『はいじゃあ第三グループお願いしますー』

高く、儚げな音が流れる。

こちらは第一グループとは対照的に、可憐なメロディーを奏でる。

いわゆる主旋律だ。

もちろん、トランペットが副旋律になる時もあるが、大抵はトランペットがメイン。

だからいつでもトランペットの楽器の枠は埋まっている。

『はーい、オッケーですー』

ふと、気がつくとチューニングが終わっていた。

音を合わせるのは大変だけど、この時間が私は一番好き。

さあて、今日も自主練頑張るかーー!

—————————————————————————

「ねえ、聞いた?」

「ええ?本当に??」

あれ、、なんか一年生の子達が話してる、、

「どうしたの?なんかあった?」

「先輩、聞きました?今日、この学校に有名トランペッターの“狭山稔“さんが来るんですよ!」

狭山稔、、って、あの狭山稔!?

狭山稔、桜坂音楽大学卒業。数々のコンクール大学生時代に制覇し、ついた名前は、“黄金の獅”。

輝くトランペットを持ち、苦しそうな顔一つせずに高難易度の曲を完璧に吹き切り、見事優勝を勝ち取っていく、、

まるで食い物に飢えた、ライオンのように。

「嘘でしょ、、

なんでそんな人がこの学校に、、」

正直ありえなかった。

私たちの学校は特別コンクールで上手いわけでもなかったし、ダメ金なんていつものこと。

なんでそんな学校に狭山先生が??

「あ、、、」

一年生の子が後ろを振り返る。

「どうしたの?」

と、トランペットにオイルをつけながら問いかける。

背を向けていたから分からなかった。

虫が入ったとか、そう、大したことではないと思っていた。

でも、次の瞬間、その安堵は驚きに変わった。

「狭山、先生、、、」

一年生の子が、独り言のようにぽつんと言う。

その一言は、私にとっては、ただの一言ではなかった。

重要で、もっと驚愕するべきこと。

虫が入ったなんてことよりも、もっと、もっとさらに重大なこと。

狭山先生が、本当に来た。

頭の中で、それだけが響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

超普通の女子中学生が天才トランペッターに選ばれるとか聞いてないのですが @ring-20111227

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ