第39話 イリアスの知謀

「ところでイリアスよ。

お前はなんで呼ばれたか分かるな?」


第三王女は悪ぶれもせず王の問いに


「あらバレました?さすがはお父様。」


というと、国王は呆れ


「あのようなことが出来るのはお前しかいるまい?」


と言った。


「なんの話しでしょうか?父上」


とユーリ王子が尋ねると、国王は


「勇者候補生と子供達が消えた原因だ。

勇者候補生にあのような真似はできまい。」


そう説明した。


イリアス王女は、


「いいえ、あの消えた...というより瞬間移動したのは間違いなくあの者、織田くんの力です。

私は彼に少し力を貸しただけ。」


ととぼけていた。


「この間からずいぶんと彼に御執心だな。

嫁に行き来になったか?」


国王がそういうと、イリアスは頬を染めて


「いやですわお父様。」


とまんざらでも無かった。


「あのイリアスが婚礼を嫌がらないとは...

それに引き換え何故ユーリが嫌そうな顔をするのだ?」



国王は切り替えて話を続けた。


「大学でスクロールの研究をしているのは知っていたが瞬間移動だと?軍事利用もできる危険なものだぞ、これ以上問題を増やすな。

ところで、お前は彼らをどこに飛ばしたんだ?」


「あれは術者が行ったことがある場所にしかいけない様に作ってあります。

 突然上空とか壁の中とかに移動したら危険でしょ?

 彼は、この世界に来てから、この城下より外には行ったことはないって聞いてます。

 それではいったい彼はどこに行ったのでしょう?」


「とぼけおって。

いいだろう、お前のおかげで助けられたのも事実だ。

 殺すわけにいかない、捕虜の子供たちの扱いを誤れば、次の戦乱の火種になりかねん。

 彼らにはなんとか生き延びてほしいものだ。」


「きっと大丈夫です。

今頃子供達を連れて魔王領に行きついているかもしてませんね。」


 王には分かっていた。

 イリアスのこの顔は自身の婚約者候補を罠に嵌めて陥れたときと同じ顔だ。

 自分の手のひらで世の中を動かしているという自身に満ちている。


「はぁ...お前の手のひらに乗ってやる。

 イリアスに下命する。彼らを探し出して助けろ。人の手を使っていい。」


「かしこまりました。

 でも今は私一人でじゅうぶん。

 私が全力をあげて探し出して見せます。」


と言って会議室を出て行った。


 私は、お父様からの下命を受け、すぐに自室に戻り出発の準備を始めた。


「私の計算では、そろそろ彼に呼ばれるころね。」


 さて、父上からの許可も得ましたし、ちょっと里帰りでもしますか。

 




=魔王城王の間=


 俺は王の間にある玉座に座り、一人考え事をしていた。

 「さてこれからどうするべきか?」

 まあ、一人で考えるにも限界があるし、何よりも情報が足りない。


 俺は早々考えるのを諦め、魔法陣による儀式にとりかかった。


『眷族召喚』


 俺が魔力を注ぐと王の間の中央に描かれた魔法陣が虹色に輝いた。

 そして、その光が収まると、そこには上品なドレスを着た美しいお姫様が立っていた。


「ただいま帰りました魔王さま」


「おかえり、ラーズ。また会えて嬉しいよ。」


やはり、こうなるかと思った...


そこには第三王女イリアスが立っていた。









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