第36話 魔王城にて

だだっ広い部屋で斉藤さんとワーウルフの子供達は倒れていた。

まあ、膨大な魔法量に酔っただけで命に別状はないだろう。


『スクロールでの瞬間移動は知っている場所にしか行くことが出来ない。』


俺は騎士学校の外は、楠田先生とデートした城下町しか知らない。

その他で知っている場所としてはここ以外思い浮かばなかった。


そうここ魔王城王の間、俺の居城だ。

100年以上前に使っていた場所だが、埃一つ落ちておらず昔のままだ。




私、斉藤胡蝶は目覚めた。

私ってばなぜここに?

これは夢?


ここはよく知っている場所だった。


ひどい魔力酔いで記憶が混乱していた。

確か先ほどまで訓練場にいたはず。

そこでこのワーウルフの子供達が兵士に殺されかけていて...


私は見兼ねて助けに入った...


子供達に火をかけようとした兵士の腕を火種ごと切り飛ばした...


そして騎士団長や兵士たちに取り囲まれた...


そこには織田くんが割って入ってくれたんだ。


織田くんが私に何か言った、確か...


「ちょっとやめろ、お前にそんな怖い顔は似合わないよ。な、スクルド!」


なぜ織田くんが?

織田くんって誰? 織田真桜くん?

まおうくん...


「魔王くん?!」


「久しいなスクルド!」


私が振り向くと、そこには魔王くんが立っていた。


「ええぇ!!まおうくんがまおうくんでまおうくん?」


「おお、まおうくんがまおうくんでまおうくんだ」


「えええええーーー」


...私は直ちに土下座した。




...なぜかスクルドが土下座した。


「知らなかったとはいえ、無礼の数々、

平にご容赦をーー」


「なんだよ無礼って、お前心の中で無礼を働いていたのか?

まあいいや、許す!顔上げろよ。」


スクルドは土下座を続けている...


「そのー、

私はアラン王子のことは別になんとも思っていなくってー、

ちょっとだけ悪くないなーとか思っただけで、でもそういうんじゃなくて、

浮気とかNTRとか全然興味はなくて...

私は、

私は魔王さま一筋で.......」


「あーわかったわかった、

もー全部許す。これでいいか?」


「私、さみしくって。

もう会えないって思っていたのに、

でも

魔王さま復活するっていうから...」


「また会えて嬉しいよ。スクルド」


スクルドは半泣きの顔をあげると目にいっぱいの涙を溜めながら飛びついてきた。


「えーーーーん、会いたかったですーーー」


斉藤さんことスクルドは、涙と鼻水を垂れ流し。俺の胸の中で泣きづつけた。


















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