第15話 夢の記憶
早朝 騎士学校宿舎
鳥の囀りが聞こえる中、
懐かしい夢を見て俺は目覚めたーー
いや、これは夢ではなく、前世の記憶が呼び起こされたものだ
「俺が炎の中で意識を手放す直前に、あいつ飛び込んでこなかったか?...」
不死族は新たな生を受けた後に、全部の記憶を呼び起こすと脳がパンクしてします。
その防御本能として、夢という形で徐々に昔の記憶が呼び起こされる。
忘れていた記憶を思い出すというより、前世の記憶がインプットされるという方が正しいだろう。
俺は目覚めると、いつもの通り食堂に集まり朝食をとりながら今朝の夢のことを考えていた。
今回の記憶想起で、いくつか重要なヒントを得た。
「そういえば、ラーズの実家がユグドラシルだったなぁ。
ってことは、今のこの王国の王様ってラーズの身内の家系ってことか。
あと、ラーズは俺の眷族だから、俺と一緒に転生しているはずだし、最後に飛び込んできたのがスクルドだとすると、転生の炎の力で同じ時間軸に転生しているってことか…」
「織田くん?どうかしたか?
さっきから思い詰めたようにぶつぶつ考え事してるようだけど。
悩みがあるなら先生に相談するんだよ。」
隣で朝食をとっていた楠田夕乃先生が、心配そうにこちらを見ていた。
歳は聞けないけど20代後半?
一見するとクールビューティーで冷たそうなイメージを持たれるが内面では熱い女性だ。
4組担任で、担当教科は英語。
数か国語を話せて、その上で剣道全国大会優勝経験あるって噂で聞いた。
剣道部顧問で、学校の道場で斉藤胡蝶さんと立ち会うのを見たことあるが、ものすごいハイレベルで素人には何をやってるか分からんかった。
こんな状況にも落ち着いていて、騎士たちが気を使って特別扱いしてくれるところを、時間が開けば自ら生徒と一緒に訓練に参加している。
生徒のケアなどに仕事でユーリ副団長と連絡取り合い抜けることも多いが、ここ状況で仕事と訓練を両立するとは関心する。
「いや、楠田先生がユーリ副団長との仲が気になりまして...」
と話を誤魔化した。
すると、楠田先生はジト目でこっちを見て
「君は私の何を見てるの?
はっきり言いいます。
副団長は私のタイプではありません。」
楠田先生はピシャリと言った。
やっぱ見た目どおりクールだ!
でも容赦ないなこの人…
俺は苦笑いしながら、引き続き今朝の夢のことを考えていた。
俺たちの種族は、お互い魂が引かれ合い近しいところで生まれ変わることが多い。
というのは、子孫を残すメカニズムとして、絶滅危惧種である俺たちが出会いやすい様に自然の摂理として出来てるようだ。
だからスクルドもラーズも実は近所に暮らしていたって可能性は十分ある。
でもなぁ。
俺が並行世界を転移するなんて想定外だよな。
二人は現実世界で元気にやっているだろうか?
・・ハッ、クション!!
離れた席で可愛いくしゃみが聞こえた。
「大丈夫胡蝶っち、風邪でもひいた?」
「大丈夫よリエちゃん。
きっと誰かが私の悪口でも言ってるんだわ。」
「ハッハッ!!みんなのアイドル胡蝶っちの悪口いう人なんて居ないって!ww
...いや、ちょっと待って!
胡蝶っちに彼氏を取られた女の子かも?!」
「やめてよーリエちゃん!私、他人の彼氏をとったことないわよ?」
「いや、告白した中には彼女振って胡蝶ちゃんに告白したって噂聞いたことあるよ。
一方的に彼女さんに恨まれてたりー?」
「それこそ勘弁して欲しいわ...」
ここで私は私をからかう親友リエちゃんに
仕返しにイタズラを思いついた。フフw
(小声)「親友のリエちゃんにだけ私の秘密を教えるけどー、私好きな人いるのw」
(小声)「えっ、誰誰?クラスの男子?」
(小声)「絶対内緒ね? まおうさま!」
「絶対内緒よ!」
私、斉藤胡蝶の親友である式森リエは親友胡蝶っちの秘密を知ってしまった...
誰にも言えないアイドルの初めてのスキャンダルを
『斉藤胡蝶熱愛発覚!密かに思うお相手は
3組の織田真桜くん!!』ですと!!!
私、斉藤胡蝶は親友の式森リエちゃんに秘密を打ち明けてしまった...
っと言ってもー!?w
魂のダーリン魔王さまを好きって言ったところで〜リエちゃんには『誰それ美味いの?』状態でしょうけど〜!
フフッw
女友達に好きな人の秘密を打ち明けるって快感よね〜
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