第8話 魔王城にて

魔王城にて


「ご報告致します。

王国の砦がバンパイアどもの襲撃にあい落とされたとの報告が入りました。」


「分かったレギンレイブ、引き続き監視を頼む」


「了解しました魔王さま。」


レギンレイブは、四天王の第3席で諜報を担当する。

吸血鬼族とダークエルフの混血であるが、ダークエルフの血が色濃く残る美貌の女性だ。

その為、吸血鬼族の王であるバンパイアロードからの支配を受けにくく、むしろ生い立ちからバンパイアロードを毛嫌いしている。


「さて困ったことになった...」


俺の横に控える、四天王筆頭であるスクルドは、うなづきながら


「さすが魔王さま、魔王さまが予想していたとおりですね。」


困った事になったというのに、スクルドは嬉しそうだ。


「スクルド、これはまずい事って分かってる?

人族はバンパイア族が魔王の手先だと思っている。

バンパイアどもはそれを否定するどことか、そう思わせるように吹聴している。

ということは、人族は魔王軍の侵攻と考えるだろ。」


なぜバンパイアがそのようなことをするかと言うと、俺にも責任がある。

バンパイアはその種族の能力から、人族に対してはめっぽう強い。

自分の血を送り込むことで、人を自分の眷属に変える力があるのだ。

しかし、そんなバンパイアにも致命的な弱点があり、太陽の光と俺だ。

俺には太陽の光を再現する魔法があり、バンパイアを一瞬で消し炭にすることができる。

人族に強いバンパイア、バンパイアに強い俺、そして人族に敵対できない俺は三竦み状態なのだ。


「それでも魔王さまなら、その力で人族を従えることは容易にできるのではありませんか?」


スクルドはさも当たり前の様に首を傾げた。


「あのなスクルド、俺、いやお前もだがこの身が滅んだ後のことを考えたことがあるか?

もしもだ。

次の転生先が魔王軍に支配された人族だったらどうする?

俺や四天王の指揮下いない魔王軍の支配下なんて悲惨なんてもんじゃないぞ。」


「それでも魔王さま、そうしたらまた魔王さまのお力で魔王軍を従えたら良いじゃないですか?」


「・・・あのな。生まれ変わって育ててくれた両親を裏切れるか?

そんな家族を裏切っていては信用を無くすぞ。

俺たち不死族は、人族、魔族のどちらの陣営に生を受けるかもしてない、そういう意味で特別な種族だ。

だから俺は同じ種族のお前は絶対的に信用してるし、裏切らない。

それと同じで人族も魔族も敵対する気はないんだよ。」


「私は魔王さまのことをお慕いしおります。

この愛は今世に限らず永遠と誓いましょう!

だからこそ魔王さまに敵対する者は絶対に許しませんよ!」


スクルドが俺の話を理解できたかは分からない。

まあ不死族としては若いスクルドも何世代か重ねれば理解することだろう。

今はそれでいい。

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