魔王の俺が勇者召喚に巻き込まれたんだが...
海野百合香
第1話 魔王巻き込まれる
「成功です」
豪勢な神官服を着た男そう言った。
ここは神殿の地下に隠された秘密の部屋
祭壇の上には白装束を着たい女性が倒れている。ひでぇことしやがる...
40代半ばくらいの精悍な顔つきの男が周囲にいる男たちに指示を出す。
「あとは神殿長に指揮に従え。直ちに聖女さまを介抱して死なせるなよ。」
男は担架に乗せた女性を騎士たちが運び出すのを見届けると部屋を出ていく。
「あとはおまかせ下さい陛下」
部屋の中央にある巨大な魔法陣の中に俺たち倒れていた。
周りには俺と同じ制服を着た男女20人と担任の楠田先生。
どうやら俺たちは勇者召喚の転移に巻き込まれたようだ...
神殿長は威厳のあるご老人であったが、謝罪会見のようになんとも言いにくいそうに説明を始めた。
「君たちには勇者召喚の儀式によりこの地に来てもらった。今、この世界に危機が迫っている。勇者にはこの地を救ってほしい。」
と神殿長いうとバスケ部でクラスのリーダー的存在の斉田が声をあげた。
「えっ!俺たちが勇者ってこと?」
神殿長は申し訳なさそうな声で
「いや、この中で勇者はただ一人だ。ただ今の段階で誰が勇者なのかは判断できない。」
と言った。
楠田先生は神殿長に問いかけた。
「どういうことか説明していただけますか?」
「勇者は戦いを通じて目覚めるのだ。だから君たちには我々と共に戦ってもらいたい。
巻き込まれた君たちには申し訳ないと思うが、戦わねば君たちも我々も遠くない未来に滅びてしまうだろう。」
女生徒「嘘でしょ、私にできる訳ないじゃん...」
女生徒は不安に震えながら泣き出してしまい、友達の女生徒になぐさめられていた。
「他の国との戦争に我々に戦えと言うのですか?」
と斉田が声を荒げると、神殿長は苦しそうに
「そうではない。我々が戦うのは魔族だ。まもなく魔王が復活するのだよ。」
「家に帰れないの?お母さんにはもう会えないの?」
クラスのみんなは絶望しており、女の子達の多くが震えながら泣いていた。いや男もか...
神殿長は心から申し訳なさそうに
「帰れるとは約束できない。が、出来る限りの待遇はさせてもらう。望むなら貴族に取り立て一生楽に暮らせるだけの面倒をみることを約束しよう。全てが終わったらならだが...」
とみんなに告げた。
嘘でも帰れると約束しないところからして、この神殿長は誠実な人柄なのだろう。
帰れる手段なんてほぼ無い。
俺にはこの神殿長の気持ちが理解できた。
100年ほど前までこの地は魔族に支配されていた。
勇者を召喚し、多くの犠牲を払いながらも魔王を撃退し平和を手に入れたのだ。
そして魔王復活の兆しから、魔王に対抗するため再び勇者召喚の儀式を行ったのだろう。
勇者召喚の儀式は100年前に時の賢者が編み出した秘法で、魔力の強い者の全ての魔力を対価に、異世界の勇者を召喚する儀式だ。
儀式で魔力を注いだものは魔法使いとしての生命を絶たれただろう。
希少な魔法使いを犠牲にすることからも魔王の脅威の深刻さが伺えられる。
俺はクラスに溶け込むように、目立たぬようにしながらも、内心では誰よりも冷や汗をかいていた。バレたら殺されるかな...
俺にもクラスの誰が勇者かは分からない。
勇者の力は突然目覚めるものであり目覚めなければただの人と変わらないのだ。
でも俺が勇者じゃないことは知っている。
俺が魔王だからだ...
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