第四話 昼寝を終えた後『旦那様』と共にゲームを楽しんだ。

 

 第四話



「あぁ……良く寝たな……」


 たっぷりと昼寝を満喫した俺は、ベッドの上でゆっくりと身体を伸ばしていった。

 ふと外を見ると夕焼けが見えた。

 そのまま時計を確認すると、 十六時だったので、三時間ほど昼寝をしていたことになる。


 なかなか良い睡眠が取れたと思うよな。


 そして、夕飯まではまだ時間があったから、俺は『オンラインゲーム』をやろうと思い、パソコンのスイッチを押して起動させた。


『ライジン・オンライン』


 俺がやってるMMORPGで、利用者は百万人を超える。

 オンラインゲームとしては日本で一番利用者の居るゲームだ。

 ガチャの無いゲーム性が特徴で、基本的な課金要素は、アイテムなんかを買っていく感じだ。

 月の初めにセールがあるので、3000円分のアイテムを買うのがいつものスタイルだ。


 そして、ゲームの中にログインすると、可愛い女の子のアバターが現れる。

 これが俺が操作するキャラクター『ミナミ』だ。


 女性型のアバターを利用しているが、別に『ネカマ』をしてる訳じゃない。

 これは俺が所属してるクランにも話してる事だし、男なのに女のアバターを使うのは別に珍しくも何ともない。


 むっさい男のアバターなんか見ていたくなかったから。

 やっぱり男だから、可愛い女の子が好きだ。

 自分好みの女の子にするのがとても楽しい。

『彼女』の装備にはかなり金がかかってるからな。

 女には金がかかる。なんてのはよく言ったもんだよな。


 そんなことを考えていると、俺の『伴侶』からメッセージが飛んできた。


『やっほーミナミ。ようやくログインしたんだね!!今日は終業式だから、学校が終わったら直ぐにログインすると思ってたよ!!』


 そんなメッセージを送ってきたのは『サトル』と言う名前の男型のアバターだった。

 ライジンには『結婚』と言うシステムがある。

 男型のアバターと女形のアバターが結婚することで、共にクエストに向かった時の性能が飛躍的に上がる。

 と言うシステムだ。


 サトルは俺の結婚相手……伴侶だ。

 まぁ中身は二つ下の男だって話だし。俺も男だ。

 男と男がゲームのために結婚したって話だな。


『さっきまで昼寝してたんだよな。サトルも今日は終業式だったんだろ?じゃあずっとやってた感じか?』

『いや、実を言うと僕もさっきログインしたところだよ。友達にちょっと相談事をしててね』


 友達かぁ……俺には一人もいないから無縁だよな。


『そうなのか。まぁあまりプライベートには踏み込むつもりは無いかな、詳しくは聞かないよ』

『あはは。ありがとうミナミ。まぁ夏休みが家族の手伝いで潰れそうになったのを、ギリギリで回避出来そうだって話だね』


 家族の手伝い。そう言えばサトルの家は喫茶店を経営してるって話しだったな。

 たまに手伝いでホールに立ったりすることもあるらしい。


『あぁ、そう言えばサトルの家は喫茶店だって話だったな』

『そうそう。いきなりアルバイトが二人も辞めちゃってさ。大変だったんだよ。でも何とか人材確保が出来そうでね』


 夏休み前にアルバイトが二人も辞めたら大変だよな。

 学生だったら夏休みなんて遊びたいし、家庭の手伝いでそれが潰れるとか最悪だからな。

 サトルとしても助かっただろうな。


『ふーん。そうか……てか、ガッツリプライベートに踏み込んでたな』

『あはは。まぁ別に構わないよ。僕とミナミの仲じゃないか』


 そんなメッセージと共に、サトルのアバターからハートマークが飛んできた。


『そうだな。ゲームの中では結婚相手だからな!!』

『そうだよ!!じゃあ奥さん。僕と一緒にクエストに行ってくれませんか?』


 そう言うサトルに、俺は先日のアップデートで新しいクエストが出てきたのを思い出した。


 確か『夫婦限定』で挑める最難関クエストだ。


『良いですよ旦那様。それでは先日配信された最難関クエストに行きますか』

『やったね!!じゃあちょっと属性装備を変えてくるね』

『おっけー。じゃあ俺もちょっと装備弄ってくるわ。5分後にまたここで!!』


 そして、装備の属性をクエストに合わせた俺とサトルは、移動ポータルを使ってダンジョンの前に到着した。


『よし。じゃあミナミ、クエストを始めようか』

『おっけー。じゃあいつもみたいにサトルがタゲ取って、俺が魔法で狩る感じで』


 タンク役のサトルがモンスターのヘイトを稼いでタゲを取り、その間に俺が魔法攻撃で敵を倒していくのが俺たちのスタイルだ。


 ちなみに、ライジンの魔法攻撃は詠唱時間が設定されていて、強力な魔法ほどその時間が長い。

 だが『ある裏技』を使うと詠唱時間を短縮出来る方法がある。


 クエストを進めていくと、中ボスのステージに到着した。

 BOSSの弱点属性は『炎』なので、俺は炎の最上級魔法を発動させる。


『よし。ヘイトを稼いだから後はよろしく!!』


 タンク役のサトルからのメッセージを受けた俺は、

『スキル・詠唱短縮』を発動させる。


 すると俺の目の前に『大量のローマ字』が現れた。

 そう。これが『詠唱短縮方法』だ。


 この目の前にあるローマ字を全て打ち込むと魔法が発動する。

 通常だと一分かかる最上級魔法攻撃の詠唱も、十五秒ほどで文字を打ち込んで発動していく。


 魔法攻撃の合間に、サトルには回復魔法も飛ばしていきながら、十分ほどで中ボスを撃破することが出来た。



 最終ボスに向けて、雑魚狩りをしながらダンジョンを進めていると、サトルからメッセージが飛んできた。


『やっぱりミナミとクエストをやると安定するよ。あそこまで早く最上級魔法を打てるのは君だけだからね』

『いやーそれを言うならこっちもだよ。サトルがきっちりヘイト稼いでタゲ取ってくれるから、安心して打ち込みが出来るんだよ』


 俺がそう答えると、サトルは嬉しそうなアイコンを飛ばしながら答えてきた。


『あはは。じゃあ僕らは良い夫婦ってことだね!!』

『そうだな!!夫婦円満で頑張ろうぜ!!』


 そして、遂に俺たちは最終ボスの部屋まで辿り着いた。

 各種アイテムを使って、体力と魔力を回復させる。

 能力値向上のバフのかかるアイテムも並行して使っておいた。


『よし。準備OKだね』

『あぁ。それじゃあ……狩りの始まりだ』


 最終ボスは『古代(エンシェント)の龍(ドラゴン)』

 弱点属性は『時』『空』『幻』になる。

 通常属性の魔法攻撃はすべて半減。

『古代魔法』と呼ばれる魔法攻撃が出来ないと『ほぼ詰み』の難敵だ。


 ちなみに俺は全ての古代魔法を習得している。

 さらに上位の『終焉しゅうえん魔法』も習得している。

 終焉魔法には特殊な方法で発動させる必要があるけど、サトルがタゲを取ってくれるなら安心して撃てるだろう。


 そして、俺がサトルにヒールを飛ばしながら、古代魔法でボスの体力を削っていく。

 すると、サトルから

『今から三分なら大丈夫だよ!!』

 とメッセージが来た。


 なので俺は『終焉魔法を使うからな!!』とメッセージを飛ばして『スキル・終焉魔法』を発動させた。


 するとパソコンの画面が全て大量のローマ字で埋め尽くされた。

『スキル・詠唱短縮』はローマ字を打ち込めば詠唱時間が短縮された。

 だが、終焉魔法は全てのローマ字を正しく打ち込んだ瞬間に発動する。

 打ち込みをミスるとその戦闘では使えなくなる。

 諸刃過ぎる魔法だ。


 だが、俺はミスらずに確実にそのコマンドを打ち込んでいく。

 そして、二分ほどで全てのコマンドを打ち込んで、

『終焉魔法』を発動させた。

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