その花が月に咲いたなら

安心院 才花

プロローグ

ただ広くて寂しいだけの場所に咲く一輪の花のようである。

そうあなたが言ったそれは私の生きた灯の帰結、その形である。

あなたはただ一人それの前に立ちすくむ。風になびいた長い髪を耳にかけ、少し唇をかみ「寂しくなどないよ」そうあなたは言った。

言い放った言葉とは裏腹にその背中は酷く悲しいものに見えた。


砂漠に花が咲いたならそれは私が生まれてきたことの意味につながる、私がここにいていいことの、そのことの証明になるんだ。

いつかあなたが言ったこと、私は砂漠に咲く花があることを知っていた。

だから私はいつか、いつの日か月に咲く花があるとあなたに言いたい。

あなたがその手に持った花をいつか月に咲かせて見せよう。

でもそんなことを伝えたら月に咲く花などないよ、ときっとあなたはそう言ってほほえむのだろう。

そのほほえみだけは砂漠にも月にも咲かないものであると私だけが知っているのであった。

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その花が月に咲いたなら 安心院 才花 @ajimu_7

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