青春を走って!!

関ケ原 しらす

第1話 体育祭が匂いだす

4月19日

桜は全て散ってしまい、代わりに緑の葉っぱが生い茂っていた。

気温は暑くもなり寒くもなると、情緒不安定だった。

そんな中、ここ南高校では5月16日に開催される体育祭の話題が入ってきた。

新しいクラスに入り、前のクラスの恋しさから、孤独になってしまった自分に、体育祭なんか楽しめるのか。


◇◇◇◇


「体育祭目前だけど、俺さ公立の教師してから、優勝してないんだよな〜」教卓で大柄な男性教師が話している。

そんな教師に、アリーナ席で苦笑を浮かべている女子がいた。

彼女は、五峠 華夜 ごとうげ かやだ。

目の前で話しているのは、3年D組の担任の小沢 大輔おざわ だいすけ先生だ。

ノリが良い教師だが、男バスの顧問であり、男バスの面白いパワハラがあるのだ。

「今年は、優勝しましょう!!」そう声を上げたのは、男バスの室井 翔貴むろい しょうきだ。

「それな!!絶対勝てる!!」また声を上げたのは佐山 蒼弥さやま そうやだ。

みんなからは「さっちゃん」と呼ばれている。

彼もまた、男バスで翔貴と同じ明るくクラス中心の人だ。

「マジで勝てる気しかしない!!」また、男バスの裕也ゆうやも盛り上がり出した。


◇◇◇◇


「ただいま〜」華夜はドアを開けた。

華夜は一人暮らしだ。声をかけても帰ってくるはずがない。

ワンルームの安いアパートを借りたのは、高校生になってからだ。

一人暮らしには慣れていた。

華夜はベッドに寝転んだ。

『D組絶対優勝!!』大輔と男バスなど明るい人達が言った言葉を思い出した。

華夜はため息を吐いた。

こんなに、前のクラスが恋しい自分にあのクラスに入る自覚は無いような気がしていた。

華夜はクッションに顔を当て、肩をふるわせた。

どうしたら良いのだろうか。体育祭これで、楽しめるのだろうか。次の日は土曜日。華夜は更にため息が出た。

土曜日は華夜にとって地獄となってしまっていた。


◇◇◇◇


土曜日になり、華夜はバイト先に向かった。

華夜はカフェでバイトをしている。

比較的、忙しくもなく程よくバイトができるのだ。

華夜は緑のエプロンに着替えた。

すると「おはよう。華夜ちゃん」と女の人が声をかけてくれた。

彼女は、大学生の先輩月野 夏鈴つきの かりんだ。

華夜が新人の時に、色々と教えてくれた優しい姉みたいな先輩だ。

「おはようございます。月野先輩」華夜は軽く微笑み返した。

店長も先輩も優しかったこのバイトだったが、4月に入ってから、地獄になっていた。

「おはよう。華夜さん」華夜の肩に手が置かれた。華夜はドキッとし後ろを振り向いた。夏鈴と同じ歳の先輩、鈴山すずやまだ。華夜はまだ苗字しか知らない。

「お、おはようございます」華夜は少し、離れ挨拶をした。

地獄化した理由はこの人にあるのだ。

鈴山は、華夜の腕や肩太ももなどをわざと触ってくる。

気のせいだと思いたかったが、頻度が高く、もう気のせいでは無いことがわかった。

華夜は身を震わせていると、鈴山は通りすがりに、華夜の太ももを触った。

「ひっ」華夜は恐怖でなにも考えられなかった。

鈴山はなにも無かったかのように、その場を離れた。


◇◇◇◇


「みんな〜注目〜出る競技と8の字飛び大縄の縄回す人、全員リレー走順決めるぞ〜」と大輔が声を上げた。

「今年は、縄跳び走、エトセトラリレー、綱引き、玉入れ、台風の目、スウェーデンリレーな。とりあえず、翔貴、お前綱引き行けるなら行け。龍太郎りゅうたろうスウェーデン行けるなら行け。さっちゃんも同じだ」大輔は指示を出して行った。

そして、みんなで出る種目を決めた。

ちなみに華夜は台風の目だ。

次は、大縄の回す人を決めるはずだったが、華夜を合わせ4人被ってしまった。

華夜は大縄には怖くて全く入れない。

去年は、回す人になり、事なき得ていた。しかも、今年は担任の大輔が『大縄ちゃんと飛べる人が回した方がいい。』と言っていた。

華夜はどん底に落とされた。






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