第76話 咸陽の攻防(3)
上空に上がったワイバーン隊は、隊列を組み直し攻撃目標を定める。
その時飛行隊長が、雲の上に乗る道士を発見した。
恐らくあれが、魔法を阻害していると判断した隊長は、全軍に攻撃支持を出す。
「今からあのグッ!…」
ここまで叫んだ隊長は、それ以上の言葉を発することもなく、ワイバーンから落ちていく。
何事かと思った次の瞬間、次々とワイバーンの騎手が落ちていく。
騎手を失くしたワイバーンは空中で暴れ始め、一緒に乗っていた射手を次々と振り落とす。
「おい!あいつが狙撃しているぞ!」
全員が300m程離れた崖の上を見ると、与一が弓を構え黙々と狙撃を行っている。
弓から5本の矢が同時に繰り出され、ホーミングしながら次々と騎手を打ち落としているのだ。
「全軍、あの狙撃手を先に潰すぞ!」
ワイバーン部隊が一斉に与一のいる崖へと向かってきた。
「与一殿、敵が一斉に向かってきます」
「その数350余」
蝉丸の的確な状況報告に与一は苦笑いする。
「わかっていますよ、数までは分かんなかったけどいっぱい見えますから…」
口ではそう言いつつも、手は休まず速射を続けている。
「やれやれ、弓矢全部撃ってもあと200以上は残るな」
「その時は蝉丸さんも一緒に逃げようね」
蝉丸はにっこりして言葉を返す。
「まぁ私は戦闘員ではありませんし、与一様も矢がなくなれば役立たずですからな」
そうこう言っているうちに、先頭のワイバーン達との距離は100を切った。
「あーだめだ」
「もう後ろの森に逃げ込む時間もないや」
与一があきらめかけたときに、男がワイバーンに飛び乗り騎手を切り倒した。
「与一殿、お待たせした!」
麓から崖を登って助けに来てくれた常陸坊だ。
「常陸坊さん助かったよ!」
「あとは矢が尽きるまで撃ち込むので護衛宜しくです!」
与一達のワイバーン戦は続く。
一方、義経と熊武将の一騎打ちは白熱していた。
斧槍を自在に操る熊武将に、義経は躱しながら攻撃を入れるが、表面に傷が入るだけでダメージにつながらない。
「お前の攻撃は素早いだけで、重さが足りない!」
えらそうに解説する熊武将に、あーどうも、と軽い返事をする義経。
やがて義経は脇差しを鞘に納め、刀を両手で握りなおす。
ふっと息を切った瞬間、義経は熊武将に向かって突進する。
「ハッハッハッ!全体重を乗せて捨て身の攻撃か!」
熊武将は目にもとまらぬ速さで義経を突く。
次の瞬間、義経は宙を舞い、斧槍に片足を乗せて、熊武将の頭に回し蹴りを炸裂させる。
「なん…だと…」
そう言った瞬間、熊武将は気を失ってしまった。
義経は付近の民家から縄を頂戴し、熊武将を締め上げる。
「別に、やろう思えばいつでも殺せたのだが」
「お前さんを殺すわけにはいかなかったのでね」
熊を締め上げた後、上空の敵ワイバーン部隊を見上げる。
「あれが本領を発揮する前に何とかしないと…」
そう呟く義経に何者かが語り掛ける。
「お前たちの戦争に巻き込まれて、俺たちは迷惑しているんだよ…」
声に気づいた義経は周りを見渡すが、誰もいない。
「俺の言葉がわかるのか?」
慌ててその声の方を振り向くと、ワイバーンが寝そべっていた。
なぜワイバーンの言葉がわかる?それよりも先に義経はワイバーンに尋ねた。
「じゃあなぜ魔族に加担しているのだ?」
義経の言葉にワイバーンは驚き答える。
「驚いた、言葉が通じるみたいだな」
「俺の背中に契約の札が張ってあるだろ?」
「それがあると、俺たちは自由に動くことができないのさ」
よく見ると背中に何か呪符のようなものが張ってある。
「わかった、これを剝がせば自由になれるんだな?」
義経の言葉にワイバーンはお願いをする。
「あぁ、そうしてもらうと助かる」
「じゃあ、取引しないか?」
義経の言葉に、ワイバーンは耳を傾ける。
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