第74話 咸陽の攻防(1)

崖を駆け下りる武者達と僧兵。


彼らは半獣化し、バッタのような足爪で崖を飛び跳ねるように降りていく。


麓に近づくと弁慶があることに気づく。


「あれはワイバーン!」


弁慶の言葉に義経は舌打ちする。


「チッ!やはり援軍が来ていたか!」


「でしょうな」

「官兵衛殿の話では、ワイバーンの姿はなく地上戦になるであろうとの事でした」


弁慶の説明に義経がぼやく。


「うちの軍師も、すべてお見通しってわけにはいかないわけね」

「いや、ここまで俺たちが来ると読んだ敵方の軍師を褒めるべきかな?」


実際のところ、亜父は誰かがピットと繋がっていると読み、古参の熊武将にだけ援軍の事を話していた。


地上に降り立った義経はすぐさま全員に指示を出す。


「弁慶・亀井六郎は門の敵部隊を制圧!」

「佐藤兄弟・次郎三郎は予てより決めていた編成で、左右より展開!」

「常陸坊は今一度崖を登り、与一と蝉丸を護衛!」


「蝉丸、聞こえるか?」

「与一にワイバーンの騎手を狙撃するよう伝えてくれ!」


「俺はワイバーンが飛び立つ前に出来る限り叩き落す!」


「散開!」


義経の号令で一斉に散る家臣たち。


義経自身も一気にワイバーン駐屯地に突撃する。


城内の右中央にやや広い場所があり、ワイバーン達もここに待機していた。


熊武将の号令により、急いでワイバーンに乗り込む魔族たち。


その中へ弾丸のように一人の武将が飛び込むと、魔族兵は次々と倒れていった。


「てっ敵襲だ!」


「そいつに構うな!」

「飛べる奴は早く上がれ!」


熊武将は冷静に指揮を執る。


こいつ、場慣れしているな…


義経は舌打ちしながらも、両手に持った2刀で次々と騎手たちを切り倒していく。


それでも数が多いため、400以上は飛び立ってしまう。


「貴様の相手は俺がしてやる!」


その言葉と同時に、熊武将は義経の前に立ちはだかる。


くそっ!400以上上げちまったか!

皆、しばらく耐えてくれ!


心の中で呟いた義経は、目の前にいる熊武将と対峙する。

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