第27話 混世魔王

会議が終わり、外に出るとすっかり夜になっていた。


ピットはふと思い出し、捕らえた狼の檻に向かう。


檻の中では少しだけ目を開けた狼が、またそっぽを向いて寝てしまう。


それをピットが見つめているとき、林冲がやってくる。


「頭領、これが捕らえた狼でございますか?」


そう言って覗き込んだ林冲が驚きの声を上げる。


「お前は…混世魔王ではないのか?」


その懐かしい声に狼も立ち上がる。


「その声は…豹子頭なのか?お前もこっちに来ていたのか!」


「名は…だめだ、どうしても思い出せぬ」


「俺の名は林冲だ!そしてお前の名は樊瑞!混世魔王・樊瑞だ!」


興奮して話す林冲に、樊瑞は涙を流しながら答える。


「ああ、そうだった、その名は俺の名だった気がする…」


「林冲殿がいるのであれば、あの二人も、もしかしたら生きておるかもしれんな…」


「八臂哪吒と飛天大聖だな?俺たちが生き返っているし、きっとどこかで生きているさ!」


「そうか…師匠や神機軍師とも会いたいな…」


林冲は振り返り、ピットに膝をついて願い出る。


「この者は混世魔王・樊瑞。必ずやお役に立ちますので仲間に加えてください」


「だめだ豹子頭、俺は知らなかったとはいえお前の頭の親を食っちまった!」


「俺は死して罪を償わねばならんのだ」


泣きながらうずくまる狼に、林冲は再度願い出る。


「頭領!確かに彼は大変な罪を犯しました!」


「それでも何卒…」


それを聞きつけてきた孔明。


「で、この者の処遇はどのように致しましょう?」


ピットにすました顔で問いかけた。


「私は最初から許しているだろ?」


「混世魔王、今度は受けてくれるね?」


狼の体は光だし、鎧姿の男が現れた。


「混世魔王・樊瑞でございます。雷系の妖術が使えます」


「過去の償いをさせて頂くため、蹇蹇匪躬(けんけんひきゅう)の言葉を胸にお仕えさせて頂きます」


こうして混世魔王・樊瑞は仲間になった。


後日、このことをボウイとツキノに報告する。


「なんじゃと?では今度筋トレに付きあってもらおう!」


「えー、じゃあ今度電気針でもやってもらおっと!」


思った以上に斜め上の回答が返ってきた。

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