第17話 一国一城の主

静かな執務室にノックが鳴り、文官のイタチは入ってきた。


白いイタチは静かに何かを書いているようだった。


「手紙ですか?イワイ様」


ふと、手を止めたイワイはその男に話しかける。


「やあ、留侯。何か急ぎの用かい?」


イワイは楽しそうに話しかける。


「ふふ、まぁ大したことではないのですが、ナインテールの領土で色々あったようでしてね」


留侯の言葉に、イワイは驚いたそぶりをしてみせる。


「これは驚いた!私の丞相は2000ものゴブリン兵団を一瞬で消した者たちの存在を、大したことがないの一言で言ってのけられる!」


イワイのいたずらっぽい言葉に、留侯はやれやれと肩をすくめる。


「そこまでわかっておられるのなら、もう手を打っておられるのでしょう?」


いたずらっぽく微笑むイワイは書いてあるものを留候に渡す。


「ちょうど今書き終わったところですよ。ラビット村の王に対して、友好の使節団を送りますってね」


「なるほど、しかし今回の件で他の勢力も一気に動くでしょう。距離がある我々としては後手に回りそうです」


「まぁ、それはレッドキャップのところも同じでしょう。彼にさえ付かなければ何とかなるでしょうし…」


イワイは腕を組んで天井を見上げる。


「しかし、ナインテールはどう動くのでしょうかね?自分の領地に突然現れた謎の軍団。敵にすることはないと思うのですけど…」


「彼の心は全く読めませんからな…」


イワイと留候は腕を組んで考える。


「とりあえず、この手紙を先生に持っていっていただきます。例の村の現状偵察もお願いしたいので。」


「それが宜しいでしょう、早速呼んで参ります」


留候は頭を下げ、部屋から出て行った。


一人残ったイワイは呟く。


「私はあの時、もう一人の先生の言うことを聞かずに滅んでしまった。同じ過ちは繰り返すわけにはいかない…」


「あの時?」


いま自分が言った言葉の意味は何だったのだろう?イワイは考え込むのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る