第4話 オオカミなんてこわくない!

一通りのコマンドを確認し、領域内で詳しく探索を行う。


領域内はほぼ森林で道もなく、領域中心に直径20mの草原がある(花畑もここにある)


領域外を見ると、50mほど離れたところに川が流れている。


ここでステータスを確認。


【氏名:よしだまさよし】

【1/3 17:20:33】

【ランク:地縛霊】

【精神力:32230】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「0/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】


川までの領域を広げると、半径50mは必要なので1000P、これを毎日消費とか現地点では無理だな。


だいたい、【精神力増加】が一度も発生していない。


いや、そもそも自分を崇拝してくれる信者候補の存在がこの領域にいない…。


どうしたものだと空中に胡坐をかいた姿勢で頬杖を突きながら地上を見ていると、林の中で何かが吠える声が聞こえた。


声のするほうを見てみると、小さなウサギが穴の前で狼に威嚇している。


狼の足元にはそのウサギよりひと周り大きいうさぎが絶命していた。


(あれはウサギの親だったのか?かわいそうだがイッヌも生きるため、仕方ないことだしな)


ちなみに、そこにいる子ウサギや狼に憑依を仕掛けたがレジストされる。


どうやら対象の精神が強い状態時には憑依できないようだ。


狼が子ウサギに襲い掛かろうとするが、子ウサギはさっと穴の中に隠れる。


そんなやり取りを何度も繰り返した後、業を煮やした狼が絶命した親ウサギで弄び始めた。

上に放り投げ地面に叩きつける。


振り回した後、木に投げつけ、血塗れになったウサギの頭に前足を乗せ、穴を背に遠吠えした。


そんな亡き親の姿を見た子ウサギは許せなかったのだろう。


穴から飛び出した子ウサギは一直線に狼へ体当たりを敢行する、が、それを読んでいたかのように狼は子ウサギに振り返り、体当たりを回避しつつ、首根っこに嚙みついたと同時に近くの木に叩きつけた。


吐血する子ウサギ。


更に首根っこへ噛みつき、地面に何度も叩きつけ、空に放り投げ、子ウサギはそのまま地面に落ち動かなくなった。


その姿を確認した狼は、再度穴のほうに向き変える。


穴からは2羽の子ウサギが顔だけ出して様子を見ていたが、狼の視線に気づきサッと穴に潜っていった。

狼はその穴に向かい穴を広げ始める。


きっと全てのウサギを捕まえる気なのだろう。


こいつ、ボッチ狼だし親を狩った地点で食料は確保できている。さらに子ウサギを狙うのは狩りを楽しんでいるってことか?


弱者が淘汰されるのは仕方がないことだし、狼の性質なんか知らない俺に回答はないが…。


ふと、子ウサギを見ると、憑依のアイコンが光りだす。


近くで確認すると、虫の息だがまだ生きているようだ。


『うさぎ1時間/1500P』憑依しますか?


いやいや、こんな瀕死のウサギに憑依してもすぐ死ぬだけだろ?


そのまま躊躇してアイコンを見つめていた、が、俺は決断する。


どうせこのままじゃジリ貧…ここはダメもとで試してみるか!


Yesと唱えると周りが光に包まれ、次の瞬間体にとんでもない激痛が走る。


こりゃ…何とかなる状態じゃない…体どころか目すら明かない…


意識が遠のいていくなか、新たなアイコンが表示された。


『体力高速回復/1500P』行いますか?

解説:周りの生物から生気を吸い取り、体の損傷を高速で治癒する(周りに生物が多いほど有効)

注意:病気や毒には効果ありません。


なんだ、ちゃんと解説も付くじゃないか…


朦朧とする意識の中、Yesと唱えた瞬間周りの草木や地面から生気のようなものが流れ込む感じがし、体一気にが回復していった。


目を開けるとウサギ目線で色々見えてくる。


少し先ではでかい狼が子ウサギの逃げ込んだ穴を必死に拡げていた。


自分の体の大きさを考えてもアレ(狼)に勝てる気はしない…


何か方法ないかと考えているうちに、新たなアイコンが表示される。


『リミッター解除/5分1500P』行いますか?

解説:脳にあるブレーキ(リミッター)を解除し、体の限界能力で動ける(15%上昇)

注意:スキル解除後はひどい筋肉痛に襲われる。


待っていました強化スキル!


もちろんyesを選択。


頭の中でカチっと音がし、瞬間、体が一気に軽くなり、起き上がって体を動かしてみると、信じられないほどに動く!動く!


これならうまくいくかも…


早速、俺は近くの枝を齧り切り、口に咥える。


そして、穴掘りに夢中の狼の背後に一瞬で近づき、ゴールデンボールを両足で蹴り上げた。


「ギャン!!!」


悲鳴にも似た狼の叫び声と共に、あわてた顔を出した瞬間、咥えていた枝(尖らせ済)を左目に突き刺す。


「キャイーン!!」


狼は一瞬のたうち回ったが、すぐに体勢を整え領域外に逃げて行った。


狼が去ったあと、俺は穴に隠れた2羽の子ウサギの様子を見に行く。


穴の深さは1.5mほど、狼は1mまで掘り進んでいたので危機的状況だったといえる。


早速穴の中に入り会話をしてみる。


黒いうさぎが


「プウ!プウプウ!プウ?」


白いうさぎも


「プウ!プウ!プウ?」


うん、かわいいけど何を言っているのかわからない。


ここで


『ほ乳類言語セット/1000P』を獲得。


「おとうと、こわかった、おおかみは?」


「おとうと、ぶじだったの?おおかみは?」


と心配そうに話す。


いや俺末っ子だったのかよ!


ここで狼はいなくなったとの、自分たちの母親が亡くなったことを話した。


「おかあさん、わたしたちをまもるため、かくれるあなをほってくれてたたかってくれたんだよね」


「ちくしょう、ぼくがもっとおとなだったら!」


2羽は惜しさと悲しさを滲ませながら話す。


そんな中、別のアイコンが表示された。


【末っ子ウサギとの間に『縁』ができました。背後霊になりますか?】


地縛霊から背後霊に進化?した!…いや、いいのかこれ?


とりあえずyesを選択すると、次に


「末っ子ウサギの名前を決めてください」


の表示がでる。


少し考えた後名前を決定、すると自身の憑依が解け末っ子ウサギの後ろに立っていた。

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