第2話 不親切極まりない
気が付くと俺は静かな夜の森の中に佇んでいた。
自分の体を触ってみるが…うん、透けているな。どうやら実体はないらしい。
とりあえず神様が着ているあの白いやつは纏っているので全裸ではない。
試しに近くにある葉や石を触ろうとするが触ることができない。
次にまっすぐ進んでみる。実体はないので好きなように動けるようだ。
暫くすると見えない壁のようなものにぶつかった。
触ってみると固く、横を蝶のようなものがすり抜けて飛んでいくのを見ると、これは自分に対する結界のようだと考えられる。
今度はそれを触りながら進み始める。暫くすると元の場所に戻ってきた。
次は壁を触りながら浮いてみる。こちらも見えない天井に当たった。
なるほど、壁は筒状で、直径・高さ100mほどの距離らしい。
ここで大問題が発覚する。
領域内を散々探し回っても『人間』の気配がない。
へ?これって信仰を集めなきゃいけないんだよね?こんな人もいない森の中に説明もなく放置って…
半日以上放置され、怒りのピークに達した俺は、空に向かって叫ぶ。
「おい!佐藤!説明もなく放り出した挙句、こんな誰もいない森の中に落としやがって!信者集めたくてもここから出られないじゃないか!どうするんだよこれ?」
そのまま怒りを露にしながら空を見つめていると、紙をまとめた物が降ってきた。
拾い上げてみると、ホッチキスで止めた3枚の紙で、表紙に走り書きで「マニュアル1」とだけ書いてある。
裏は何かの広告なのか、管理者の世界の言葉で特売みたいなことが3枚とも書いてある。
要は裏紙ってことだ。
佐藤の奴、何処までもふざけてやがる!
2枚目を見ると要点が3つだけ書いてある。
①神になって自分の信者を増やし、信仰心を集める
②信仰心が増えると『ポイント』がたまり、信者の能力向上や『奇跡』が使える
③世界で信者が増えれば『神』の精神力も復活し、現世で復活できる
3枚目には操作方法が手書きで書いてある
「まずは『メニュー』と言ってみてください。目の前にいろいろな表記が出てきます」
試しにメニューと唱えてみると目の前の空間にいくつかのコマンド類が表記された。
(まるでゲームみたいだ…)
このハイテクなシステムに驚愕しながら調べ始める。
表記されているものは、『憑依』『アイテム』『次へ』のコマンド。
コマンドに関しては、表記名を呼ぶとそれが実行できるらしい。
ちなみに『憑依』を唱えてみたが【今は使用できません】、『次へ』は【条件達成後にアンロック】と、それぞれアナウンスされる。
唯一開く『アイテム』を選択すると、別の表記が広がり、先ほど拾った「マニュアル1」を何度か唱えると、先ほどもらった紙切れが、手元で出たり消えたりする、これは便利だ!。
ただ、アイテムボックスには『マニュアル1』しかなく、ゲームでよくある初心者特典等は一切ない模様。
その中にある『スキル屋さん』を見てみるといろいろな商品?がある。
『領域拡大10m/100P(1日)』『各種族1言語/1500P』『憑依持続時間増加1時間/1000P~』などなど…。
そして右側にある数字だが、これがポイントであり、スキルを習得するたびに自分のポイントから支払われるようだ。
ちなみに今、視界左上に『36500/100』の数字が表示されている。
36500が自身のポイントで、右側の100が1日ごとに消費するポイントになる。
つまり、何もしなければ365日後に魂が消滅しちゃうってことだね。
最後に
「尚、表記の表示は言葉をイメージすれば出てきますので、いちいち声に出す必要はありません(笑)」
で、締めくくられていた。
最後の1文を読み終えた後、俺はさわやかな笑顔で呟いた。
そうだな…いつの日か佐藤に会えたら、絶対に1発殴ろう、と。
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