第15話

 1週間が経過した頃。

 「ごめんよー。」

 「あら?安達さん。どうしたの?」

 1階から母の話声が聞こえてきた。

 「いや、ちょっと朱音ちゃんに用があってな。朱音ちゃんは居てるかい?」

 「朱音なら上に居ますよ。」

 「そうかい。ちょっとごめんよ。朱音ちゃーん。ちょっといいか?」

 「なーにー?」

 階段の上から下を覗きこむ。

 「ちょっと突然ですまないが明日な、警察とか海洋生物の研究者とかが話を聞きに漁協に来るらしいんだ。朱音ちゃんも同席して欲しいって言ってるんだよ。」

 「いいよ。何時くらい?」

 「向こうが言うには10時頃に来るって言ってたからそれ位に来てくれたら助かる。」

 「分かった。ならそれ位に漁協に行くようにするよ。」

 「すまねえな。」

 「構わないよ。あの生き物の調査、進んでたらいいね。」

 「そうだな。早く対策ができて漁が解禁にならないと漁師が皆辞めちまうわ。」

 「そうだよね。早く対策して漁に行けるようになれば良いね。」

 「本当にそうだよ。もう全然仕事にならないからな。ま、それじゃよろしく頼むわ。」

 安達さんはそれだけを言って帰って行った。

 「あなたに何を聞くのかしらね?前に話した事で全部でしょうに。」

 横で話を聞いていた母が疑問に思う。

 「さあ、何だろうね。まあどうせまた見つけた時の状況を聞きたいとかそんなのでしょ?たぶん。今回は海洋生物のなんちゃらが来るって言ってたから、何か根掘り葉掘り聞いて来るのかもね。そうだとしたら嫌だなあ。」

 「まったく無意味だろうに、」

 「仕方ないよ。向こうも仕事だしね。聞きたい事じゃなくて報告だったら良いのにな。」

 「そうね。さっき聞きたい事があるって言ってたから結果の報告とかではないでしょうね。さ、あなたもぼんやりしてないでシロの散歩にでも行って来たら?」

 「そうね。そうしようか。」

 気付くとシロがリードを咥えて待っていた。

 「あんたは察しがいいね。」

 「分かっているとは思うけど、海の方とか人がいないような場所には行かないでよ?」

 「分かってるよ。ね、シロ。」

 「ワン。」

 「ほら、シロも任せてと言っているよ。」

 「シロ、朱音が変な所に行かないように見張っててね。」

 「ワン!」

 「何よそれ。信用無いな。」

 「あなたには前科がありますからね。」

 「それを言われると何も返せません。」

 「ふふっ、気を付けてね。」

 「はーい。分かりました。」

 シロにリードを取り付け家を出た。その日は何事もなく平穏な1日を過ごしたのだった。





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