第4節 放浪詩人と謎の詩人

『旅は続くどこまでも。それは大地が繋がっていれば。それは海が繋がっていれば。そこに世界がある限り。そこに進むべき道がなくとも進んでいく。それが旅人であり放浪する詩人である。』


――――――――――――


「すまない。そこのお方。この街で何か仕事を教えてくれるような人は居ないか?丁度、少々の金が必要になっていてな。」

 僕はあの少年アーシュと少女シュバールと別れてから水神域オケアーノス火神域ヘファイストスティの狭間で貿易で有名な街に来ていた。このまま東に進み火神域ヘファイストスティの辺りまで向かおう。っと考えていた。けれども残念な事に詩で稼いだ金も底を着き真っ当に働こうと考えたのだ。


「ほぉ?……そうだなぁ……。じゃあ、俺から丁度仕事がある。火神域ヘファイストスティに入って1つ目の集落に居るヒゲートって言う奴に届けて欲しい物があるんだ。……あぁ!勿論中身を見るのは禁物だ。それどころか開けたりもすんなよ?どうかい?金貨21枚で手を打ってやろう。どうだい?やらないかい?」

 僕はこの場合、何が入っているかは大抵知っている。やばい薬だとか危ない薬品だとか兎に角、碌でも無い物だ。僕には一切の興味の無い物だ。それに、金貨が21枚もあれば宿を1週間程連泊出来るしその上で市場で売っている物の大抵が手に入る。なんと幸運な依頼なんだ!


「あぁ、構わない。その仕事を引き受けよう。」


 そう言い前払い分の金貨13枚を受け取りなんだか不穏そうな箱を受け取りその火神域ヘファイストスティに入って1つ目の集落へ向かう。道中確か盗賊とかが居る峠があった気がするが流れで行けばなんとかなるだろう。


「いや〜気分は上々!」


 早速、金貨を用いて上等な葡萄酒ワイン仕込みのパンを購入し街を出る。ここは随分と盛んな貿易都市の為か街を出ても寂しい景色になる事もなく絶えず商人の荷馬車やらが行き交い、吟遊詩人が詩を口ずさんで居る。本当に賑やかで面白い場所だ。まぁ、商人はケチくさい倹約家なので投げ銭は、びた一文としてくれない訳だが……

 とにかく、初日は賑やかな場所を通って歩けた。しかし、2日目から山に入った為に人の行き来はどんどんと少なくなって行く。本来であれば海岸沿いを歩くのが一般的な道なのだが、そのヒゲートが居る。と言う集落は山側にあるが故にこちらの方へ回ってくるしか無かったのだ。



「おい!そこの貴様。有り金全部置いて行ってここから去りな!そうしたら命だけは助けてやる!」


 山深い事が起因してか山賊が異様なまでに多い。こちらの彼らもこの峠を煤で3組目だ。そこまで来ると恐れ慄く。と言う感情はすっかりと消えさえり、またか。もういい。面倒臭い。と言う感情のみだ。


「なんだぁ?黙り込んで!!俺たちの事が怖いのか!?あぁ!?まっ、貴様のような奴にとっちゃぁ!俺たちの事は怖いだろうな!!」


 そう言って小物っぽい口調リーダー格の男は武器と筋肉を見せつけて行く。


「僕はこの先の火神域ヘファイストスティにある集落に用があるんだ。お前達のような小物には特に興味が無い。さっさと退いてくれないかい?」


 そう言うと小物っぽい口調リーダー格は憤怒し血管を浮かび上がらせて真っ赤な顔で武器を構える。

「お前!!俺たちをコケにしやがって!!お前ら!あいつにかかれ!!」


 そう言うとリーダー格よりも随分と貧相な子分と見られる男達(2人)が僕に向けて剣を掲げ走ってくる。それを僕が避ける。するとどう言う訳か彼ら同士でぶつかりどう言う訳か気絶した。


「……盗賊やるには……貧弱すぎないかい……?」

「ふっ、そんな貧相な見た目の癖してお前……やるなぁ!ここで俺たちは解散だ!!おい!!お前らバカ!!起きろ!!」


 そう言い子分達を回収して男は去った。一体何をしたかったのかがよく分からなかったが、まぁ、そんなもんなんだろう。ここの峠で活動している彼らは大抵皆同じようなレベル感だし……


 そう言った一連の流れが4回ほどあって1日が終わる。なんだか迷惑を通り越して愉快だ。けれども、これは僕がちょっとした箱を運んでいるからなだけであり、商人達のように荷馬車を引いているのであれば面倒くさい事この上無いのだろう。だからこそ、この峠道は人通りが少ないのだ。



 木の根元で少々の昼寝を取る。この時間がとても心地良くて旅をしている中で一番好きな時間だ。風は爽やかに僕の間を通り抜けて大抵の事を忘れさせてくれる……。あの面倒な盗賊達も投げ銭をくれない商人達も。なんて素晴らしい時間なんだ!

 

「やぁ。詩人さん。いい夢見てるかい?」

 

 少年のような少女のようなどちらにも取れる子供の声が聞こえた。目を開くとまさに声と印象が同じような容姿だった。先程まで気配さえ感じ取れなかった子だ。いくら寝ていたとは言え、盗賊達が居る峠の脇。人の気配を察知する事を怠る訳が無い。なのに……何故だ?


「見たところボクの突如の登場に驚いているみたいだね?ところで夢は?」


 兎に角夢について聞きたいようだが、生憎なんの夢も見ていない。


「夢なんか見てないけれども……。君は一体どこの誰なんだい?」

「夢を見ていないのか……まさに大人って感じだね。夢を見るのは子供の特権だって言うけども、大人に成ったら夢は見なくなるのかい?……ボクについては質問の後さ!」


 全力で話を逸らされた。けれども……まぁ、夢らしい夢。と言うのは見ていない気がする。例えば、嫌に現実味のある夢だったりとか予言じみた嫌な夢だとかはよく見る。けれども子供時代のようななんでもありで優しい夢はもう見ていない気がする。


「もしかしたら……大人に成ったら夢は見なくなるのかも知れないね。けれども、人間。寝ている時だけ子供っていう人も居ると思うんだ。だからそう怖がる必要は無いと思うよ。」

「そうかい?なら良かった。」


 そう言うと僕の隣に座って来た。その子供の匂いはどこかで嗅いだ匂いだった気がする。


「ねぇ?あの鳥はどこまで飛んでいくか知っているかい?」


 子供が指差した先を見る。そこには確かに鳥が群れを成して飛んでいた。


「確か……あれは……ナツカゲ鳥だね。暑さに弱いから暑くなる前に寒い場所へ行く鳥なんだ。火神域ここからなら……そうだね。北上した山脈の方へ行くか、もしくは氷女神域ザミェルザーチティカの手前まで行くかも知れないね」

「詩人さん。とっても詳しいんだね!!ねぇ!もっと色々と教えてよ!!」


 そう言うと子供はあちらこちらから植物を手折って持って来て僕に名前を尋ねて来た。僕はその植物の解説をする。どうして僕自身こんなに詳しいのか心当たりは特に無かった。ただ、子供はとても楽しそうだったし、それを見た自分はとても満たされた気持ちになった。もしかしたら僕自身こう言った事を本当はやりたかったのかも知れない……


 そうしていつの間にか夕方になっていた。



「ボク、もう行かなきゃ。怖い人が来るから……じゃあね!」


 そう言うと鬱蒼とした暗闇の森の中へ入って行った。明らかにおかしな事なのに僕はそれを止めずに居た。少ししてからその違和感に気がついた。僕はあの子供を知っているような気がした。いや、でも気のせいだ。僕は旅をして来たがあんな子供と会った事は無い。多分。


「分からない……それに、余計な事に首を突っ込まない方がいい……」


 その後、木の根の下、眠る。そうして夜を越えまた朝がやってくる


「さてと……今日も張り切って進もうかな。」

 そう意気込み僕はまた峠道へと戻る。峠道はいい加減、山賊も少なくなってきて集落が近いことを察せられた。

 

 そろそろ、道からも火神域ヘファイストスティが見えてきた。そして、少しだけ顔を出している集落。あそこが僕が目指している集落なのだろう。


 

「ねぇ?詩人さん。」

「わぁ!?」


 いきなり隣から声をかけられて大人気なく驚き腰を抜かし地面に倒れ込む。箱を落としかけたがギリギリでキャッチする事に成功した。


「わぁ……ごめんよ詩人さん。ボク、そんなに詩人さんを驚かすつもりは無かったんだよ……。」

「いや、いいんだよ。僕がいちいち驚きすぎなだけなんだ……。」


 そう言うと子供は一気に切り替わり僕の周囲を走り始めた。


「詩人さん!ボクはさ!いつか自由に世界中を旅してみたいんだ!正に詩人さんのように!!」

 子供は空をとても純粋な瞳で見ていた。その瞳はとても無垢でとても尊いものだった。


「君は……今は旅は出来ないのかい?」

「ボクはさ……自由じゃ無いんだよ……。ボクは狭〜い鳥籠の中に閉じ込められている鳥のようなんだよ……。もしくは羽を縛られた鳥なんだよ……。だからボクは何処にも行けない。何処にも行く事は許されていない……。」

「そう……なのか……」


 とても悲しい瞳だった。この名前も知らない子供がとても可哀想に思えて来た……


「なら、僕がその鳥籠の扉を開ける……もしくはその羽の鎖を解き放とう!……そうだよ。人は皆自由に生きるべきなんだ。誰にも縛られず生きるべきなんだ!!」


 なんで僕がここまで熱くなっているのはよく分からない。僕は少しおかしくなっていたのかも知れない。


「……そう……なの……?じゃあさ……」




「その箱を開けてみて」




――――――――――――――――――――――――――――


 その後、僕はどうなったのかは正確には覚えていない。けれども誰かの家のベッドで目覚めた。

「!?……あの……子供は!?」


 周囲を見渡すとそこは水神域オケアーノス火神域ヘファイストスティの狭間の街で泊まって居た宿だった。


「僕は……一体……?」


 宿の部屋を出て外へ出る。それは街を出る前の景色だった。自分の腰にある筈の仕事代の金貨はすっかり無くなって居た。


「どう言う事だ……」

「お前は罪を犯したんだよ」


 声が突然と後ろから聞こえる。後ろに振り向くとそこに僕を話しかけたような人は居らずたまたま歩いて居た人が不可解そうに僕を見つめた。


「お前の罪は世界に《不条理運命の糸》を張り巡らした事だ」


 今度はまた前の方から声が聞こえる。また振り返ると純粋な白髪を靡かせる少女が浮かんでいた。少女のその瞳は冷たい緋色。そう。あの謎の詩人・コスモスが居た。今度は地に足を着けて居た。


「まぁ、ここで立ち話も心地が悪い。我に着いてくるんだ。」


 そう言うと路地裏へと歩みを進めた。少しすると怪しい店に辿り着く。


「箱庭骨董品店……?」

「我の友人となった者が経営する店だ。ただ、友人は品物の卸しに行ってしまったが故、今現在は不在だ。」

「そう……なのか……」


 店内を見ると見慣れない物が大半で僕にはどう使えばいいのかさえ想像出来なかった。


「ここは全ての時代、全ての場所の重要な品々が陳列されている。お前には理解出来ぬ物ばかりだろうな。」


 そう言うとどこからか木で作られた古めかしい椅子を二脚出して来た。


「座るが良い。罪人よ」

 言われるがまま座ると手に鎖をかけられ一気に自由が無くなった。


「こっ……これは!?」

「お前は罪人なのだ。罪人は鎖で縛られるものだろ?少なくとも我と話す時はそのままで耐えろ。」


 僕は抵抗することも諦めてコスモスの怖い瞳と目を合わせる。コスモスは見たことの無い透明の入れ物に葡萄酒ワインのような物を注ぎ少し愉快そうに飲んだ。


「まぁ、罪人とは言ってもお前は哀れにも嵌められたのだ。お前に仕事を頼んできた男は深淵アビスに由縁を持つ者だ。それに、火神域ヘファイストスティに入って1つ目の集落に住まうヒゲートとやらも存在しない。お前はあの男に箱を開けるように仕組まれて居たんだ」

「けど、あの男は箱を絶対に開けるなって言って居たぞ?」


 そう言うとまた、葡萄酒ワインを一口飲んだ。


「人と言うには『絶対に開けるな』と言われると開けたくなってしまう物なのだよ。まぁ、お前はあの子供に唆された。と言うのが正しいか……。」

「あの子供はなんなんだい?」

「……あの子供は……不条理……運命の落とし子だ……。誰にも望まれず誰にも育てられず深淵アビスの奥の奥に追いやられた可哀想な子供だ。」


 そう言われるとあの子供は何処か世界を望んでいた。世界を自由に生きる事を望んでいた事を思い出した。


「あの子供は箱の中に居たがそこに存在するだけでこの世界に大きな爪痕を残した。お前の故郷にもきっとあの箱が何処かに転がって居た筈だ。でなければこの世界であんな事は起きる訳が無い。」

「……あの子供は……諸悪の原因。と言う事なのかい?」

 コスモスは無言で頷く


「けれどもあの子供はただ純粋な子供だ。自分自身が無自覚に持っている力を無自覚に放出しているだけであって悪意があってこんな事をしている訳では無い。寧ろお前に仕事を頼んだあの男があの子供を存分に利用して居ただけだ。だから、こそお前の行動はあの男にとって予想内でありながらも予想外なのだ。」

「そうなのか……」


 あの子供の持つ性質は確かに憎らしいモノだ。けれども、あの子供には罪は無い。大人達に罪があるだけだ……。


「けれども、深淵アビスは残酷なモノで悪意を持った不条理、運命の落とし子が居る。其れはもう不条理そのものとなった。あのモノをこの世界に解き放てば世界はもっと酷く残酷な運命を歩まされるのだろうな。」

「其れは深淵アビスに居るんだよね?」


 そう聞くとコスモスは何も答えなかった。しかし壁に掛かっている円盤のような物を見つめる。その冷たい緋色の瞳は少々憐んでいるようにも見えた。


 

 

「……そろそろ刻が来る。この世界を恨んだ者がこの世界を呪いその足取りで深淵アビスの門が開かれ不条理な運命の糸がこの世界に張り巡らされる刻が……。深淵アビスの民達が地上へ向かって登っていき救世主によってこの世界に解き放たれる刻が……。この《神話の時代》が終わる時が……」


「刻……?」

「もう時期冬がやってくる。冬というのは死の影が足跡残さずやって来る季節だ……。まぁ、せいぜい、お前はお前の信念を貫いて死ぬが良い」


 そうコスモスが言うと僕の手にかけられて居た鎖はいつの間にか消え去った。


「そう言えば……ここの骨董品の中で欲しい物はあるか?」

「えっ……っと。なんか触ったら大変そうな物ばかりだから僕は……いいよ。」

「そうかい?時代を飛び越えた品々。店主はいい眼を持っている。」


 そう言いながらコスモスは何かを図る事の出来そうな物を少し触って弄って居た。

「うん。これもいいじゃないか?」

 次にコスモスが触れたのは瓶の中に詰められた禍々しい何かだ。その隣にはやたらと反射する小さな刃物のような物も置いてあって僕はそれを見るたび理解の出来ない物だと悟る。



「いくら、あなたのような《神秘の魔法使い》のコスモス様であっても……それらを勝手に触られるのは……困りますよ?」

「ふん。別にいいだろう。」

 

 後ろから声がいきなりかかった。やたらと胡散臭い声で若干滑舌が悪かった。そして、話しかけられたコスモスの方は拗ねた子供のような表情をして居た。この人、表情筋あったのか……。


「どうも。初めまして。《井戸の底に沈んだ神話》……いえ、今はそんな呼び方ではありませんね。《放浪詩人》ティーヘェーア様。」

「どっ……どうも……えっと……貴方は……ここの店主さん……?」


  ようやく声をかけてきた本人の方を見る。年齢は僕より少し年上そうだった。顔には片目だけ何かを付けて居た。全身をマントで包みそのマントの下には見た事の無い服を着て居た。それになんといっても怪しい。放つ空気が胡散臭さそのものだった。なんなんだ。この人は。まぁ、優しそうではあるけども……


「ええ、私はこの《箱庭骨董品店》店長のカリトンと申します。」


 そう言うと礼儀正しく仰々しくゆっくりと礼をして来た。なんだかとても居心地が悪かった。


「そう警戒されなくとも大丈夫ですよ。何一つティーヘェーア様に危害は加えませんから……」

「あっ……ああ……うん……」


 それを言われると余計警戒したくなるのが人間の性。と言うものでは無いのか……?


「そう言えば、あの錬金術師と門番はどうしたんだ?」

「あの2人でしたら今はこの街の酒場で朝も夜も関係なく酒を飲んでいるでしょうね」

「ふ〜ん……」


 まだ、この骨董品店にはメンバーが居るのか……それに門番は酒を飲んじゃダメなんじゃ……

 

「ティーヘェーア様少々いいでしょうか?」

「えっ……なんで……しょうか……?」

 カリトンは僕の楽器をマジマジと見つめた。

 

「ティーヘェーア様のお持ちのその楽器。少々弦が劣化してしまっているようですが、私の方で修理致しましょうか?お代は結構ですから。」

「えっ……ええ……じゃあ……お願いします……?」


 お代は結構。と言った時の表情とても怖い気がしたけれどもきっと何かの見間違いだろう。けれども、このカリトンと言う店長は僕のだいぶ古びた弦を手際良く取り出して張り替えた。随分と慣れているように思えた。


「これで大丈夫そうですね」

「えっと……本当にお代は大丈夫……なのでしょうか……?」


 そう言うと先程コスモスが見て居た壁にかかっている円盤を見つめた。


「そろそろ刻が来ます……。まぁ、お代は貴方の遺した詩から取った。と言う事にしますよ。さぁ、そろそろ進み出さなければなりません。時は……運命は立ち止まる事を許してくれないのですから……」

 

 その言葉を聞いて僕の自分で立てた信念を思い出した。


「そうだ。僕は放浪詩人……。旅をし続けなければ……」


 そう呟く頃には自然と体が動き店の外に出てあの路地裏に突っ立って居た。振り返ってもあの店は無く建物の壁があるだけだった。張り替えられた楽器の弦のみが僕があの店にいた事を物語っていた。


『本日はご来店ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております』


 あの店主のそんな声が嫌に耳に張り付いている気がした。それが嫌で僕は直ぐに街の喧騒の方へ足を向けた。



――――――――――――――――――――――――――


「あなたのお陰でまた新しい商品を入荷出来ましたよ。コスモス様」

「まさか、そんな物まで欲しがるとはね……まぁ、勝手に店に並べて置けばいい。手に取る誰かが居るとすれば深淵アビスの民だけだ。それにそれは絶対にあり得ないだろう。」

「そうですか?意外と直ぐに此れの引き取り手は現れるかも知れませんよ?」

 店主カリトンの手には運命の落とし子が封印されて居た箱があった。店主カリトンはその箱を見つめながら微笑を浮かべて居た。


「お前のその笑顔。どうにかならんのか?気味が悪い。我は帰らせてもらう。」

「ええ、本日はご来店ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 神秘の魔法使いコスモス店主カリトンの見送りになど一切目もくれずにさっさと店を立ち去った。




「お代は……貴方の人生最期に紡ぐ詩……ですよ?放浪詩人ティーヘェーア様……」

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