あの日の君はもういない
名無し
プロローグ
「ソフィアちゃん!また明日遊ぼうね!」
「うん!また遊ぼう!」
「絶対だよ!」
雪の積もった公園で幼い二人の子供が作った雪だるまを間にして交わした何気ない約束。
しかし、次の日いつもの公園には雪だるまもソフィアの姿もなかった。
☆
「ふぁ~」俺は大きなあくびをしながら日課のSNSの更新を見る。
「それにしてもずいぶん懐かしい夢を見たな......」
「ソフィアちゃんか......」
俺がまだ保育園に通っていた頃、確か12月の少しの間だけ近所の公園で遊んだ女の子。今となっては声も顔も覚えていない俺の初恋の相手。
俺はSNSの更新を確認し終えると顔を洗いに下へと降りるがそこには誰もいない。今日も母は朝から仕事のようだった。
俺は洗面所へ向かい顔を洗い寝癖を直すとリビングへと向かう。そこには俺の弁当とその弁当おかずの残りが朝食として置いてあった。
俺、
俺は朝食を食べ終わると部屋に戻り掛けてある制服に着替えカバンを持ち学校へと向かった。
俺の通っている月城高校までは俺の住んでるアパートから徒歩で約20分ほどでつく位置にあり、通ってる身からすれば遅刻の可能性が相当少ないのでとても助かっている。
まあ俺が遅刻することは99%ないと言い切れるが。俺は学校につくと職員室に行き教室のカギを借り、教室へと向かう。
ガラガラガラ、教室のカギを開け扉を開けるとそこには机と椅子が並び静けさだけが広がっている教室が現れる。
時刻は7時20分を示している。この学校では8時15分からホームルームが始まるので約1時間前に俺はいつも登校している。
何か理由があるわけではないが、もし理由をつけるとしたらこの普段とは違い何一つ音のしない静けさだけが残る教室を見るためだろう。
俺は教室に入り窓際の一番後ろにある自分の席に座ると顔を机に伏せ目をつむる。別に寝るわけではなくこの静かな環境で頭の中で物語をイメージするためだ。絵を描くわけどもない、何か文章を書くわけでもない、ただ頭の中でひたすら物語を想像する。ただそれだけ。俺はこれをもう5年近くやっている。
俺は外から階段を上がってくる音が聞こえ顔を上げ時計へ目を向ける。時刻は7時40分このくらいの時間になると俺以外にも生徒が登校してくる。
「昨日のテレビでさ~」
「あ~見た見た!あのシーンよかったよね」
「今日更新の漫画みた?めちゃくちゃ熱かったから早く見た方がいいぞ」
「まじ?見てないから今すぐ見るわ!」
などなど廊下や階段の方から聞こえてくる。そうなると俺は机から本を出し読み始める。これが俺の朝のルーティーンになっている。
そして俺が本の物語に集中していると時刻はホームルーム開始時刻の直前を示していた。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴ると扉を開けて担任の先生が入ってくる。
吉田先生はいつも通り欠席確認だけ済ませホームルームを終えるかと思っていたがどうやら今日は違うらしい。
「お前ら、今日からうちのクラスに一人転校生が入るから仲良くしてやってくれ」
先生がそう言い扉を開けると新品の制服に包まれたまるで日本人形のような髪と圧倒的なプロポーションを持った一人の女の子が入ってきた。
「今日からこの学校に通うことになった
宮薗さんの自己紹介が終わると拍手が起き皆が宮薗さんをクラスの一員として迎えた。
「そうだな、宮薗の席だが後ろの入口の近くに席を作るからその間職員室に教材を受け取りにいてくれ」
「はい、分かりました」と言い宮薗さんは教室を出ていった。
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