072 体育祭の終わりと始まり
最後の種目であるクラス別対抗リレーは手に汗握る接戦が繰り広げられ、イスカたち1-Bは惜しくも二位という結果になった。
ただ、セキレイの大活躍は大いに生徒を沸かせた。
接戦の中で前の走者が転んでしまい、一気に最下位まで落ちた順位を、無駄のないバトンパスと足の速さですぐさま元に戻したのである。
衝撃のあまり実況が一時止まったほどで、イスカが聞いた話によれば、競技終了後に陸上部の顧問が直々に勧誘に来たのだとか。セキレイは断ったそうだ。
「――いやー、勝った勝った!」
閉会式が終わった後の教室で、エナが手を叩く。
全体としての結果は白チームの勝利で終わり、クラスには疲れと達成感の入り混じった空気が流れていた。
「どの競技でも意外といい順位だったもんな。四重がめちゃくちゃ速かったのは驚いた」
「――まぁ、皆に見てもらう機会なんてそうそうないですからね。上手く走れてよかったです」
「……カラと言えば、借り人競争で真っ先に校長を連れてきたのも面白かったわね。お題は尊敬する人だったかしら」
「四重さんらしいよね」
「校長めっちゃ走るの遅かったけどな!」
ティトがかははと笑う。
――そういえばセッキーのお題、あれ実況が言ってた意味じゃないでしょ? とエナが尋ねた。
どうかしらね? と、セキレイは微笑む。
「……ああなるほど。助けられているのはセキレイの方――というミスリードですか」
ぽん、とカラは手を叩き。
有馬と話してさ、すぐに気づいたよー! と得意げに胸を張るエナに、一瞬だけ硬い視線を留めた。
「――おぉ、お前らまだいたのか」
がらっと扉を開けて、担任が顔を覗かせる。
先生なんかないのー、うちら勝ったよ! と声が上がって、担任は太い手をぱちぱちと叩いた。
「よくやったよくやった。だがそろそろ下校時間だ、疲れてるだろうから気を付けて帰れよ!」
はいはーい、と椅子を引く皆に頷いて、担任は廊下を歩いていった。
じゃあ帰るか、とティトが立ち上がって、イスカたちもそれに続く。
五人が教室を出たのは最後のほうだったが、大間シコたち女子数名がまだ残っていた。
「…………?」
「――イスカ、どうかしたか?」
「……いや。何でもないよ」
なんとなく視線を感じたが、気のせいだろう。
イスカは首を振って、歩き始めた。
「――あっ、忘れ物しちゃった」
「あら、セキレイにしては珍しいですね。教室ですか?」
「ええ、ちょっと取ってくるわ。先に行っていて!」
そう言うが早いか、セキレイは白髪を翻してぱたぱたと走っていった。
口を開きかけたイスカに、ティトがささやく。
(……惜しかったな。ついて行ってやればよかったのに)
イスカは無言でティトを小突いた。
――そしてこの日を境に、セキレイはおかしくなった。
――――――――(章の始めと終わりに入るCM)
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