問一、今すぐに回答をやめよ。

緑 よいち

問一、今すぐに回答をやめよ。

問題文には「それ」しか書いていなかった。


だから、私は自分の名前を書いた。


試験時間は一〇〇秒。


問題用紙の表面は至って普通で、入試さながらの注意事項や試験時間、年度などが書いてある。しかし、教科名だけは書かれていない。


本来ならばその空白に「国語」とか「数学」の文字が入っているはずである。なら、なぜ書かれていないのか。答えは至って簡単で、裏面を見て瞬時に理解した。


<問一、今すぐに回答をやめよ。>


そう書いてあった。


不気味だと感じただろうか?

それとも楽な試験だと喜ぶだろうか?


ああ、そうか。


君の成績もずいぶんと下がったものだな。


なぜそう思うのか、と?それを私に聞くのか?


それは、不気味な試験など存在しないと君自身が理解しているからだ。だが同時に、楽な試験なんてものも存在しない。


言っておくがこれは非常に難しい試験だ。正解できるかどうかは全て君次第。


しかし、それでも君の成績は下がる一方にある。それは絶対に止められない。


の私が言うのだから絶対だ。


ちなみにだが、この数秒の間に私の成績も下がっている。もう残り四〇秒…といったところか。残り時間をよく見て試験に取り組んでくれ


―僕の時計ではまだ八五秒余っていますよ


そうか。どうだ、答えは思いついたか?


―はい。


言ってみろ。


―こんな問題、習ってないです


…大正解だ。

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問一、今すぐに回答をやめよ。 緑 よいち @midori_yoichi

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