4話ー➃ オフの嫁がコミュ障過ぎる!!?
観光地バルキレフでの一日は、異文化と自然豊かな風土に触れる事ができ、思い出を沢山作ることができた。
「ここが名物の世界樹の滝か。滝というか……霧じゃね?落差がありすぎて滝の始まりが見えないな。」
「......視力強化すれば......見えるかも?」
「はい。この観光地での魔術の使用は緊急時以外禁止です。その魔術は事前に申請してないからダメ。」
「ぅぅ。でも......気になる......」
僕たちは「世界樹の滝」と呼ばれる名所に足を運んでいた。
滝は巨大な樹木の上の方から流れ落ち、その水しぶきが陽光を反射して純白の光が射している。
滝の下には、色とりどりの花が咲き誇り、美しい光景が広がっていた。
一瞬、ここが巨大な樹上にあるということを忘れそうになる。
「綺麗な花......こんな光景、生きている間に見られるなんて……」
「とりあえず映像に残しておこう。ここにしか生息してない花が大量にあるらしいから」
「お願いするわ。でもこんな時にまで知識欲全開なのね......」
僕は魔術で映像を記録し体内に埋め込んであるチップに転送した。
また記念なので滝を背景にツーショット写真を撮った。ルシアの笑顔は、まるで童話の中の一コマのようだった。
「次はどこに行こうか?」
「近くにグリル野菜で有名な、グルメのお店があるらしいわ。」
「肉と植物か!!いいじゃん!!」
「な、なによその独特な言い回しは......」
僕たちは「Pure White Bird Rest」と呼ばれるレストランに向かった。
そこでは、バルキエフの特産品を使用した料理が提供されている。レストランに入ると、森の香りとともに、香ばしい匂いが漂ってきた。
「いらっしゃいませ。今日は何をお召し上がりになりますか?」
「えっ......あっ。はい、おすすめ、お願いしましゅ.....」
「承りました。樹角鹿の包み焼と温野菜をお持ちいたします。」
「あ......ありがとうございます......すぃません。」
何だその返答......
オフモードのルシアのコミュニケーション能力は、お世辞にも高いとはいえない。
ルシアは僕と違い、スイッチのオンオフがはっきりとしている。
プライベートでは、人と話すのが苦手なインドア少女なのだ。
「何が出てくるのかしら......私鹿肉食べたことないわ......」
「えっ?よく分からずに注文したの?」
僕の嫁、プライベートではどうやら予想以上にコミュ症らしい......
「いきなり注文聞かれて咄嗟に......呼び出しボタンがあれば話せたわ。心の準備できるし......」
「ファミレスじゃないんだよ?店内も広くないし当たり前でしょ......」
「ぅ、うるさいわね......」
しばらくすると料理が運ばれてきた。
料理が運ばれてくると、目の前には色とりどりの食材が美しく盛り付けられていた。
味も絶品で、触感はかなり固めだが、筋っぽさがない。
触感的にはタンよりも更に弾力がある。
「美味しい……これ、何の肉?」
「これはバルキレフのミリ・テイア大樹海にしか生息しない野生樹角鹿のもも肉だね。
ちょっとだけど、魔力を増大させる効果が特徴があるんだよ。」
増大と言っても微々たるもので、その効果も一時的だ。
また大量に食べればその分、魔力が増えるなどという都合のいい代物でもない。
「相変わらず博識ね......もしかして初めてじゃないの?」
「人工繁殖のならね。ここまで美味しいのは初めてだよ。」
「......これブロック肉で買って帰れないかしら?」
「いや無理だよ。そもそも下処理するの絶対僕になるじゃん!?」
そんな他愛もない会話をしつつ食事を終えた後、僕たちは再び街を散策した。
あとになって分かった事なのだが......
この時この都市はまさに混沌としていたのだ。
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