32話、出発
第二王子、イグニス様に、ロスを紹介する。
一応、魔族であることと、私の奴隷であることを伝える。
「そうか。魔族というのははじめて見たけど、人間と余り変わらないんだね。よろしく」
「よ、よろしく、おねがい、します」
あっけらかんと言うが、周りの騎士がちょっと驚いている。
一応、国教では魔族と人間は全くの別物だと教えられるらしいから…… 王子の発言としては異常だろう。大丈夫かな。
馬車に乗り込み、目的地へ向かう。
王都を出る前に、イグニス様に気になってた事をきいてみる。
「ドラゴスライムは、本当にドラゴンを食べて生まれたと思いますか?」
「可能性は大いにあるんだよね。水辺にはウォータースライム、火山にはマグマスライム、炭鉱にはガススライムやロックスライムが多く生息している。けど、ドラゴスライムや、ヴァンプスライムなんかは生息地が固定されていないんだ。じゃあどこで見られるかというと、ドラゴスライムならドラゴンの生息地の近くの目撃例が多くてね。まあ、ドラゴンを食べるといっても、鱗とか老廃物とか、そういうのを食べている、と思うんだけどね」
お、おお、なるほどね。
落ちた鱗なんかでも、ドラゴンの魔力が宿っている。スライムは弱いので、強い魔力からめちゃくちゃ影響を受ける。
だがドラゴンの鱗を得られるような運のいいスライムは少ない。スライムは分裂で数を増やすが、増えたところでそもそもが少ない。
それに、ドラゴンの魔力は他の魔物も欲しがるから、ドラゴンより弱いのにドラゴンの魔力を持つドラゴスライムは他の魔物に狙われやすいだろう、とのことだ。
「今回の目撃情報があったのは、アースドラゴンの生息地だった渓谷だね。当のドラゴンは五十年ほど前に討伐されたらしいんだけど、最近まではドラゴンの魔力の影響で魔物が少なかったから魔石の採掘場があったんだ。今もまだ強い魔物は近寄らないけど、魔石は取り尽くしたから採掘場はもう無くて。採掘場跡で宝石を狙っていた冒険者によって、ドラゴスライムが目撃されたんだ」
めちゃくちゃ喋るね、第二王子様。
ラピスに聞いたところによると、第二王子様はクールで爽やか、頭脳派のイケメンってのがメイド間での評判らしいけど。
スライムの事になると饒舌。これは…… 重度のオタクだ。
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